JR山手線五反田駅のガード下に、同地区では初となるジビエの専門店「五反田ジビエバル UmaGoya」が10月2日オープンした。店長の三浦司氏は、五反田という立地を選んだことについて、「オフィスワーカーが多いエリアでの物件を探していました。駅から近くて絶えず人の往来がある立地が気に入り、この場所に決めました」と物件に出逢った今年4月を振り返った。五反田駅前西口から西五反田にかけてはビジネス街で、大手企業のオフィスビルが立ち並び、飲食店が広範囲にわたって密集している。手頃な価格のランチを提供する店や、会社帰りの人達に人気のカジュアルなイタリアンやワインバー、気軽に立ち寄れる居酒屋など、ジャンルも豊富。しかし、ジビエ料理の店は皆無だ。そんな五反田地区で初めてとなるジビエ専門店の同店。五反田のオフィスワーカーに高タンパク低カロリーのヘルシーなジビエ料理を体験してもらい、その美味しさを知ってもらうことを目指す。
三浦氏は以前、熟成肉や猪肉などを扱う飲食店に勤務していた経験を持つ。特に猪肉の美味しさを知り新たな感動を覚えたことも、同店のコンセプト決定に大きな影響を与えている。「フレンチ歴が長いシェフの高橋と共に肉をメインにした業態を考えていました。何の肉にするかいろいろ検討した結果、自分のこれまでの経験やシェフの得意分野、年間を通して供給してもらえる仕入れルートが確保できたことからジビエでやることにしました」と話す。同時に、農作物への被害対策で捕獲された野生動物のほとんどが廃棄処理されている昨今の現状を知り、何とか活用したいという想いも強かったという。馬肉は熊本と会津、猪は島根、鹿肉は北海道と信頼のおけるルートから直接仕入れている。
同店が扱うジビエは、馬、猪、鹿、鴨などがメイン。その中でも一押しは、「会津・熊本の馬刺盛」(1350円)だ。産地や部位違いでの食べ比べができる一品で、ランプ(会津)、たてがみ(熊本)、上ロース(熊本)と人気の部位が一皿に盛りつけられている。熊本のにんにく醤油と会津のからし味噌醤油がつけだれとして添えられ、本場の馬肉を本場の調味料で満喫できる。ジビエ版スコッチエッグの「ミートボンバー」(1400円)は、猪と鹿のミンチを使った同店オリジナルのメニュー。仕上げにアルコールを練り込んだバターを乗せ、フランベされ提供されるという炎の演出も客に人気がある。猪肉の持つしっかりとした味わいと食感がクセになる「猪ソーセージ」(850円)や、ワインにぴったりな「蝦夷(えぞ)鹿のパテ」(650円)などは定番メニューとしてオーダー率も高い。その日の仕入れ状況でメニュー内容は替わるが、それぞれの肉の種類、部位の特徴に合った最適な料理法で料理を提供していくという。寒さが本格化してくるこれからの時期は、煮込みもの、パイ包みなど、ジビエの美味しさをより堪能できるメニューを増やしていく予定だ。
アルコールはオセアニアワインを中心に取り揃える。グラスは500円~600円、ボトルも2000円台~と、リーズナブルな価格。レモンと桃の香りはじける旨味が爽やかな「アンゴーヴ スパークリング」や、「UmaGoyaオリジナルシャルドネ」「UmaGoyaオリジナルシラーズ」など、同店こだわりのワインがラインナップされている。他に「NZ産クラフトビール ストークゴールド」(690円)や「旬果実の“ウマハイ”」(500円)、「UmaGoyaロワイヤル(ニュージーランド産 キウイジュース+スパークリング)」(580円)などオリジナリティ溢れるドリンクも揃う。
「加工肉類も、より手の込んだものを提供しジビエの美味しさを多くの方々に知ってもらいたいですね。牛、豚、鳥に飽きた方にぜひ来て欲しい」と話す三浦氏。奇しくも、つい先日、厚生労働省からジビエ料理を安全に食べるための指針が発表された。鳥獣被害の深刻な自治体がジビエ食の普及に力を入れ、現在は流通量も増え供給も安定化してきている。今後は国の後押しもあるため、ヘルシーで栄養価も高い食材として、ジビエがさらに広がっていく傾向にあるだろう。五反田地区で初のジビエ専門店として、同店の存在もますます強固なものになっていくに違いない。