JR渋谷駅西口から国道246号に架かる歩道橋を渡った桜丘町。渋谷の喧噪が嘘のようにかき消され、のんびりとした風情が漂う、春には桜並木が彩るエリアだ。ここに、荻野大氏の独立起業1号店「虎うま」が8月24日にオープンした。店主の荻野氏は、惜しまれつつも今年5月27日に閉店した、エイジアキッチンが運営する世田谷区・三軒茶屋の7坪の小さな居酒屋「35番」を7年間ひとりで切り盛りしてきた実績の持ち主。22年前に、吉﨑英司氏(後にエイジアキッチン起業)と恵比寿の沖縄料理「由ら」(2008年9月閉店)で一緒に働き、その後エイジアキッチンに創業メンバーとして入社した同氏。
コンセプトは、荻野氏自身がこよなく愛する“阪神タイガース”と“馬肉料理”を全面に打ち出した「1度来たら印象に残る=トラウマとなる店」。店先には、阪神タイガースカラーの黄色と黒の暖簾に、虎の口の中から馬が顔を出すロゴ。一見、阪神タイガースファンを訴求するかのようなファサードだが、そうではない。「けっして、阪神タイガースファン以外入店お断りの店ではなく、打ち出したことによって、お客様との会話のトリガーになればと思いました」と荻野氏は話す。実際に、客から理由を聞かれることで会話が弾み、反応は上々だという。メニューの半分を占める「馬肉料理」は、35番でも扱っていた“馬肉”の魅力を引き続き伝えて行きたいという思いとともに、楽しく飲んで帰ってもらう“居酒屋の楽しさ”を伝えられるように、今まで自分が培ってきた創作料理で楽しませる。
馬肉は、飼育から精肉までの一貫生産のラインを持つ、熊本の「千興ファーム」から仕入れている。カウンターに並んだ新鮮な野菜は、無農薬・有機栽培で育てられた中伊豆の「中伊豆菜園」から直送される。いずれも、荻野氏が現地を訪問し、生産者の声を聴き、その込められた思いを客に届けたいと思った食材だ。馬肉料理は、必食の馬刺「桜肉盛り」(2人前 1980円)をはじめ、「馬すじ煮込み」(580円)や「桜肉ソーセージ」(800円)など、馬肉を使って試作を繰り返し誕生したオリジナルメニューの数々。中伊豆菜園の手塩にかけられた野菜そのままの味をシンプルに楽しめる「グリーンサラダ」(600円)や「ジャンボにんにく」(700円)は素揚げスタイル。さらに、もうひとつの看板メニュー「ひな鶏(半身)」(900円)は、極上のかつおぶしと昆布でじっくりと煮込まれたポトフの和風アレンジで、馬肉が食べられない外国人にも人気。
おすすめのドリンクは、季節のものからプレミアム銘柄まで、日替わりでラインアップされる日本酒。プレミアム銘柄以外は、全て90ml「500円」とオーダーしやすい価格設定に。なかなか手に入らないプレミアム銘柄においても「鍋島 純米大吟醸 山田錦35%」(1600円)と、お得な価格で提供されている。そのほかに、「生ビール」(540円)、「赤星ラガー・瓶」(600円)、「焼酎」(各種500円)、「サワー」(各種400円~)、「カクテル」(各種580円)、「グラスワイン」(600円)と幅広く揃え、ハレの日向けにスパークリングワインのボトルも用意する。
「何十年先もお客様に愛される居酒屋になることを目指し、まずは誰が来ても楽しく過ごせる店づくりをして行きます。ゆくゆくは、地元の祖師ケ谷大蔵にも出店したいです」と荻野氏。35番をひとりで切り盛りして来た経験は、同氏の自信になるとともに原動力にもなっているという。1軒目にも使い勝手が良く、帰る前にふらっと立ち寄り1杯ひっかけたくなる同店は、“居酒屋の楽しさ”がつまっている以上に荻野氏の人柄が溢れ出ている。
店舗データ
店名 | 虎うま |
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住所 | 東京都渋谷区桜丘町17-10 吉野ビル 1F |
アクセス | JR渋谷駅から徒歩5分 |
電話 | 03-6427-8360 |
営業時間 | 17:30~翌02:00、日祝17:30~24:00 |
定休日 | 無休 |
坪数客数 | 10坪 28席 |
客単価 | 3500~3800円 |
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