東急東横線祐天寺駅を下車。上目黒小学校の裏手を目指し、歩くこと5分。五本木の住宅街の中に突如現われる木造の一軒家が、新星中華「casa nova」だ。同店は、ユニークなコンセプトの店舗展開で知られる、イイコ(東京都目黒区、代表:横山貴子氏)の発酵食堂「豆種菌」(まめたんきん)のリニュアール店舗。近年塩麹ブームなどで注目されている発酵食であるが、昨年8月11日にクローズ。横山氏は、その理由を「発酵食文化は伝承すべき素晴らしいものであるが、発酵食への研究を重ねる一方で外食への追求が深まった。一端リセットした結果、新たな表現のカタチになった」と話す。
看板のない古民家の引き戸を開けると、天井の高い店内にシャンデリアの照明が特別な雰囲気。外観からは想像できない、まるで異国の地のレストランに来たような空間だ。非日常の空間で味わう体験を提供することにこだわる横山氏らしい店に仕上がっている。「casa nova」とは、“casa=城・家” “nova=新星”という意味。同氏は、祐天寺の古民家でこそ味わえる、カタチにこだわらない、これまでの概念を超えた全く新しいスタイルの中華料理を“新星中華”と定義し、コンセプトとしている。「このcasa novaの空間で味わう中華を楽しんでもらいたい。香港やシンガポールのオリエンタルな要素を取り入れて、異国の地で体験するような中華料理にワインを合わせる楽しみ方を提案したい」という。
横山氏は、中国の少数民族料理を研究するなかで、中国の貴州を訪れたときに「ナマズ」と出逢った。「現地のナマズ鍋の専門店で初めて口にしたときに、とても美味しかった。白身魚に似ており、川魚特有の泥臭さが若干あるものの、中華のエッセンスにマッチしていて感動した。日本では体験できないので、なんとかこれを日本に持ち帰りたいと思った」とその思いを語る。取り扱い業者を探しまわった結果、埼玉の淡水魚を養殖している業者から仕入れることができ、同店の要となる食材となった「ナマズ」。高タンパクで低カロリー、コラーゲンとコンドロイチンが豊富に含まれている優秀な食材。利尿作用や肝機能強化があり、癌の予防にも良い、現代人にとってありがたい限りだ。
料理は、ストーリーとともに味わう月替わりの5000円コースのみ。マンダリンオリエンタル出身の五月女シェフが、中華のエッセンスをふんだんに使って腕を振るう。さまざまな調理方法で楽しませてくれる「カサノバ名物ナマズ料理」をはじめ、「本日の漢方入り健康スープ」、「前菜5種盛り合わせ」、「季節の野菜料理」、「本日の肉料理」、「ハムユイ(香港塩漬け魚)+ナマズ入りチャーハン」、「デザート」の全7品。2回目以降の来店客からは、コース内容の変更も承るという。横山氏は、「敢えてアラカルトは置かず、シェフとの対話から料理が生まれることを楽しんでもらえる店づくりを最終的には目標としたい」と話す。ワインは、スペインを中心にアルゼンチン、メキシコなどのニューワールド系をセレクト。「ボディが重くてインパクトのあるモノが中華料理には合う」と、“ワインと中華料理のマリアージュ”を仕掛けて行く。
現在ある5店舗が、中華料理の業態になったことを「スタッフを信じて任せることで流れに逆らわず、関わる人とのご縁から自然に変化して行った」と横山氏は振り返る。1997年に恵比寿「201号室」がオープンして以来「中村昭三」、「中村圭太」、「中村玄」と変化してきた麻辣香鍋的「中村玄」、恵比寿のジンギスカン料理「club 小羊」、渋谷の自家製醤(ジャン)の自然派中華「月世界」、麻布十番の中国少数民族料理「ナポレオンフィッシュ」など、横山氏の探究心が全ての店づくりに現れている。「祐天寺という場所は、目的がないと来ない場所。わざわざここへ来て食べる価値のある“ナマズ”を使った新星中華を体験して欲しい」と横山氏の時代をつくるワクワクした半歩先の食探しはまだまだ続く。
店舗データ
店名 | casa nova(カサノバ) |
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住所 | 東京都目黒区五本木1丁目6-3 |
アクセス | 東急東横線 祐天寺駅から徒歩5分 |
電話 | 03-3710-9804 |
営業時間 | 完全予約制 18:00~22:30(L.O.21:30) |
定休日 | 日曜日 |
坪数客数 | 20坪 30席 |
客単価 | 8000円 |
運営会社 | 株式会社イイコ |
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