秋葉原駅~御徒町駅間の高架下に日本各地の「食」の逸品を集めた商業施設「CHABARA AKI-OKA MARCHE(チャバラ アキオカ マルシェ)」が7月5日開業した。その施設内に、新潟の酒造メーカー菊水酒造(新潟県新発田市、代表取締役:高澤大介氏)が、同社にとって初めてとなる飲食店舗「KURAMOTO STAND(蔵元スタンド)」をオープンした。同店は酒造メーカーの単なる直営店やアンテナショップではなく、“蔵元”だからできる、今までにないフードスタイルを提案するカフェタイプの店舗だ。テーマはズバリ「AMAZING SAKE WORLD」=素晴らしい酒ワールド。蔵元として、もっと多くの人々に日本酒を知ってもらいたい、日本酒に触れてもらえる場を作りたいという想いから、同社内で数年前から飲食店出店企画が持ち上がり、今夏「CHABARA AKI-OKA MARCHE」の開業タイミングで実現に至ったという。
「菊水ブランドのPRより、日本酒に関わる副産物の酒かすや麹の素晴らしさを伝えて、日本酒に対する敷居を低くしたい」と語るのは、店長の宮村伸一氏。店舗の造りにも一切「菊水」ブランドが見当たらない。唯一、入口左側に「ふなぐち菊水一番しぼり」や「菊水の辛口」缶などのディスプレイがあるだけ。あえてブランドは訴求せず、さまざまなことができるよう間口を広げたチャレンジ店舗という位置付けだ。飲食の提供以外にも、“酒育セミナー”と銘打ったワークショップなどを定期的に開催する。メインターゲットは30代~40代の男女。この層に、全方位から「AMAZING SAKE WORLD」をアピールし、日本酒を再発見してもらう。ひいては、20代の男女が、身近な年齢層の先輩たちの日本酒に親しむ姿を見て、日本酒もアリだと思ってもらい、若い世代に浸透していくことを最終的に目指していると宮村氏は熱く話してくれた。若者のアルコール離れが叫ばれて久しいが、この層に直接アピールするのではなく、その上の年代を通しての日本酒の啓蒙活動を兼ねたアプローチだ。時間は要するかもしれないが、世界に誇れる「日本酒」の素晴らしさを次世代に受け入れ、継承してもらうことは、“蔵元”としての使命感に他ならない。
同店のメニューで最もオススメは、新潟県醸造試験場で研究開発された“さかすけ”(高品質な新潟清酒からつくられる栄養・機能性成分が豊富な酒かすを基に開発された乳酸菌醗酵酒かす)を使って作られたパンケーキ「メープルバター&レモン」(950円)。しっとりもちもちした食感と、甘過ぎずほんのりとした酸味が絶妙にマッチしている一品だ。ドリンクの人気メニューはバイタミックスで作られる栄養価満点のスムージー。その中でも「トロピカルグリーン」(700円)は、フルーツ系のオレンジ、パイナップルに、アボカド、ほうれん草のグリーン系を加え、そこに“さかすけ”のサワー感がプラスされた、飲みやすくなめらかな味わいのヘルシードリンク。まさに、カフェでの飲食メニューが揃っている。それでも、ここはやはり蔵元。「日本酒」もしっかり用意されている。特に「飲み比べ3種」(800円)は、辛口・四段仕込・純米が試せるお得なメニューで日本酒ビギナーでもチャレンジしやすい。
店長の宮村氏に今後の展望を聞くと、「新潟本社から各部門の社員たちを店舗スタッフとして、一定の期間常駐させる計画があり、同店舗をお客様とのコミュニケーションの場としていきたい。今までの『酒ありき』の姿勢から、より現場でお客様に寄り添いながら日本酒の新たな方向性を探り、社員の意識を上げていきたい」と語った。蔵元だからこそ、今後の「日本酒」の未来を広げていきたいという熱い想いから企画実現したこの新店舗は、テーマである「AMAZING SAKE WORLD」をさまざまな角度から確実に多くの人々に発信していくに違いない。