「小堀正展牧場の国産低脂肪牛」を食べられる専門店が、赤坂一ツ木通りに4月18日オープンした。昼と夜で顔を変える2業態だ。昼は低脂肪牛×ハンバーグ・ステーキ「俺の牛」。夜は低脂肪牛×フレンチ「Brasserie Mon Bœuf(ブラッスリーモンブッフ)」。運営はソース(代表取締役 桂領佑氏)。桂氏はホテルフレンチ出身。京王、ヒルトン、オークラなど一流店に勤務した後、渡仏し研鑽を積んだ。その後、17年前にフードコンサルティング事業を立ち上げる。牧場主である小堀正展氏とは、共通の友人を通し出会った。牛にかける小堀氏のアツイ思いに共感、意気投合した。10数年前からアグリ事業を展開していた桂氏は、畜産も同じ問題を抱えていると感じ、小堀正展牧場の商品開発を1年半前から受ける。ハンバーグやローストビーフなどの加工食品を開発し、通販事業を始めた。加えて、飲食店への卸しを開拓。最近では渋谷ヒカリエでの総菜・弁当販売など次第に販路を広げている。
「国産低脂肪牛とは何か?」と桂氏に尋ねると、「和牛ではなく、国産牛と呼ばれるカテゴリーに入ります。和牛のA5ランクやA4ランクの霜降り牛肉がもてはやされていますが、小堀牧場の低脂肪牛はホルスタインの国産牛です。群馬県赤城山麓で主にホルスタインを肥育しています。その特徴は『和牛』のようにサシ(脂肪)が入った『霜降り』ではなく、赤身が多いことです。」 「和牛の最高等級「A5」の牛肉と、低脂肪牛を成分検査すると、和牛A5に比べ低脂肪牛は脂肪分が30%低く、カロリーは45%オフ。タンパク質は130%高いという結果がでました。低脂肪・低カロリー・高タンパク。豊富な栄養分に加え、臭みの少ない良質な赤身肉です。また、和牛にくらべ日常利用として購入しやすい価格帯も魅力です。これは世の中にもっと広げなくてはいけないと強く思いました」と当時を振り返る。
「2業態にした理由は?」「低脂肪牛というひとつの素材に対し、最大限の魅力を引き出す業態を考えた結果、昼はお客様へアプローチしやすく、肉本来のうまみを知ってもらうためにハンバーグにしました」「夜はアレンジの幅を広げるためにフレンチを。例えば、“焼く”という調理1つとっても、グリエ、ロティー、ポワレなど多数あります。肉の部位や状態に合わせ最良の調理方法を選択でき、お客様へバラエティーに富んだ提供が出来ます」。昼は「ハンバーグ・ステーキ」(1枚120g/780円)。夜は低脂肪牛を使ったフレンチを手軽な価格で提供。「ローストビーフ」(100g/600円)は、肉の状態で調理温度や提供温度を変えるというこだわりで赤身の旨さが光る一品。網焼き用鉄板で余分なあぶらを落として焼く「リブロースのグリル」(100g/800円)。肉料理を引きたたせるサイドメニュー「本日のサラダ」(650円)。ワインはフランス産にこだわる。グラスシャンパン「モエ・エ・シャンドン、ベル・エポック」(1200円)。グラスワイン赤・白ともに5種類ずつ(600円~)。ボトルは様々なぶどう品種から3000円~6000円代を中心にセレクトする。
「今後の展開について」牧場主である小堀氏に伺った。「現在の畜産市場流通では相場に左右されるため価格の決定権がなく、BSE以降は採算割れが続いているような状況です。そこにきて口蹄疫、地震、原発と予想しなかったようなアクシデントが続き、相場がさらに冷え込みました。このままじゃ日本の畜産は生き残れないと思い6次化を決意しました」「6次化の狙いはなんと言っても収益をあげること。同時に食の安全やホルスタインの牛肉、赤身の美味しさや熟成肉向きのポテンシャル、何よりも頂く命の価値を価格で表現していくことを目標にしています」。また、小堀氏は「低脂肪牛ならではのレシピや、低脂肪牛ならではの美味しさを追求し、FC化していきたい」と話す。国内をはじめアジアに低脂肪牛を広めることや、低脂肪牛専門の飲食店展開も視野にいれているという。「人間が牛から頂く命の価値や重さを伝える。ということを念頭において、お客様にも牛にも恩返しができるようにしたい」とアツク思いを語ってくれた。