日本酒の新しい時代をリードする熱い日本酒専門店、「地酒屋のぼる~幟~」。店名の「のぼる~幟~」は、日本酒の世界を盛り上げ、次世代へ向けのぼっていくようにとのメッセージが込められている。日本酒を真摯に愛する次男坊こと、山田洋平氏は「日本酒を造る人、さらには酒米を作る農家をはじめ、その人々を支える地域も含めて日本酒を飲む人達を繋げていきたい」と店の意義を話す。大井町には昭和を残す大衆酒場が軒を連ね、古くから知られる飲食街があるので、ファンにはよく知られる街だ。しかし今では、JR京浜東北線、東急大井町線、りんかい線と鉄道3線が通り、駅周辺には大型商業施設も建ち、再開発が進み、新しい街化への勢いを見せている。都心や羽田への近さから、西口にはビジネスホテルも増え、街の流れを変えている。そんな大井町の新しい顔を見せる西口。「ニコン大井製作所」にちなんで名付けられた光学通りに店を構える「のぼる~幟~」は、おしゃれなガラス張りのウィンドーに趣のある鉄錆の扉が際立つ。日本酒を担当し、フロアを仕切る洋平氏は一緒に店を切り盛りするおやじこと、実父の山田達也氏をはじめ、蔵元も認める生粋の日本酒ファンだ。そんな彼を信頼する多くの蔵元が「のぼる~幟~」をオープンするにあたり、バックアップしている。食材では、「伊予賀儀屋ブランド」で知られる愛媛県の成龍酒造が、松山からの新鮮な海鮮や、農家直送の野菜や米を橋渡ししている。「三千櫻ブランド」の三千櫻酒造では、内装に使う多くの資材を提供している。なかでも圧巻なのは、板張りのカウンターで、酒造りの過程にある上槽(醪を酒と酒粕に分ける作業)の時に使用する木組みの容器(槽)の外側の檜板。ほかにもキッチン脇の壁は麹箱、ディスプレイには酒樽が使われ、日本酒のストーリーを実感できる。蔵元との絆が強い洋平氏の飲食業スタートは、神楽坂。「ダディーフィンガー」の志小田氏の店からだ。父の達也氏も事務方ではあるが、飲食店で勤務をしていたことから、いつしか親子での出店を目標にし、飲食の世界へと進んだ。洋平氏はさらに日本酒の名店、大森「吟吟」で日本酒修行を積んだ。暇があれば蔵元へ足繁く通い、蔵人と語り、酒米の田植え作業も。同氏はなによりも日本酒との出会いを大切にするという。「のぼる~幟~」では、先入観なく、純粋に日本酒を味わって欲しいと日本酒のスペック(造り方、仕込み方)を表記しないという。そこには、「お客様一人一人に対して丁寧に説明し、じっくりとコミュニケーションをしたい」と考える洋平氏のこだわりがある。ゆえに店内には「お酒、お料理気長にお待ちください」の張り紙が貼られている。「のぼる~幟~」で楽しめる日本酒は、基本の「白鴻」「賀儀屋」「三千櫻」「巌」「廣戸川」5銘柄のほか、「天明」、「磐城寿」、「而今」、「会津」、「羽根屋」などを常時入れ替え、20蔵、30種類近くが揃う。ポーションは「いろいろ楽しめるように」とグラス提供で90cc、正一合、大徳利(約300cc)で提供している。しかも、それぞれ390円、580円、980円と画期的で、リーズナブルな均一価格。ビールは「舞浜地ビール」を置く。料理は、毎朝松山漁港から空輸される瀬戸内海の鮮魚に、愛媛県西条市から届く農家の野菜や果物、そして時には、「野生の猪肉などから作る日替わり」がお勧め。なかでも新鮮な刺身は自慢の一品。定番では、出汁と塩で時間をかけて作るオリジナルの「煮豚」(580円)。「自家製ポテトサラダ」(580円)、「手作りさつま揚げ」(280円)などが味わえる。「のぼる~幟~」の「幟」は、酒蔵が使う旗(幟のぼり)に由来。「自分たちの旗揚げと幟をかけている」という。店を訪れると、「とことん日本酒を愛する店」ということが実感できる名店だ。
ヘッドライン
[ニューオープン]
2013.02.15
日本酒新時代!の名店誕生。日本酒を愛する「地酒屋のぼる~幟~」が1月7日大井町にオープン
- 本日お勧めの銘柄が書かれたカウンター上のスタイリッシュな透明アクリルボード。黒板機能を備えている
- 槽の側面板のカウンターをはじめ、随所に酒造りの道具が活きる、おしゃれな雰囲気の店内
- お勧めの料理と定番日本酒。(左から)あっさりとした「のぼる風煮豚」、西条市の「ミニトマトのバジルソース和え」、出汁がしみ込んだ「里芋の唐揚げ」
- おやじこと、山田達也氏(左)、次男坊こと、日本酒を愛する山田洋平氏(右)
(取材=西山 登美子)