独創的な発想と価値観で、予約必須の人気店を生み出している、夢屋の小林研氏による新業態「Nico(ニコ)」。見た目が美しく、テイストも繊細なフレンチでの、スタイリッシュなビストロが主流の現在、小林氏はあえて昔風のパワフルなフレンチを原点にしたという。オーブン焼き、コンフィといった、トラディショナルなフレンチスタイルの調理方法。食材の特徴を引き出し、食材自体の旨味、素材そのものの存在をストレートに感じさせる料理をワイワイとした喧噪の中で喰らい、ワインを呑む——。ここはパリの下町、モンパルナスの裏路地。頑固親父がいるような、昔からそこにある大衆的なネオビストロだ。 神田駅と新日本橋駅のほぼ中間。日本橋室町の猫道のような路地に構える同店は、大正時代に建てられた築104年の古民家。それを見事にリメイクした店舗が特徴の小林氏さえ驚くような、時間を経過した物件である。そんな物件自体の空気感が、小林氏のイメージするビストロを確かなものにしている。肉はジビエを中心とした、クラシカルソースが魅力の料理がメインを飾る。魚貝はフレンチの手法でいて、新しいスタイルを創出。そして、前菜、温菜は野菜を中心にした斬新な構成。クラシカルなフレンチの基本を踏襲しながらも現代的な新しい感性でまとめたのが「Nico」流だ。 ドリンクは当然ながら、フランス産をメインにしたワイン。グラスで楽しめるワインやシャンパンも揃い、ワインバルポジションの面も見せる。とはいえ、カジュアルな今どきのワインバルとの違いを明確にし、ワインは価格パフォーマンスではなく、クオリティを優先。料理と共に味わう食中酒としての本来のワインスタイルを徹底している。それらを現実として可能にしているのは、培われた経験のもと、料理を作り出すプロのシェフがいてのこと。小林氏が最もこだわった、プロの領域である。 そんな、こだわりのフード。冷菜は「蝦夷鹿の芯玉タタキカルパッチョ仕立て」(780円)、温菜に「ニシンのコンフィ」(950円)、「カリフラワーカルボナーラ」(780円)、「及川さんのジャンボキノコ フリカッセ」(780円)。シロコロキュイジーヌは「和牛マル腸と仔牛のフォンのソテー」(850円)。メインには「フランス産マグレ鴨のロティソースボワブルペール」(1800円)、「淡路産 猪豚のグリエ 本日のソース」(1600円)。スペシャリテに「熟成雉の半身ロースト ソースシュプレーム」(3300円/S 1800円)、「Nico特製カッスーレ」(1800円/S 980円)。〆には「Nico特製焼飯」(750円)などを揃え、料理によってはハーフサイズも用意する。他にユニークなのは、シャリュキトリーの3点盛り合わせ、熟成雉の半身350gローストなど7品で構成する「Nicoザ・コース」。4人であれば、1人3800円、5人となると3040円とお得感満載のコースとなり、食べる事の楽しさを工夫している。 2800円から揃えるワインは、しっかりとした料理に合わせ赤、白ともにフルボディタイプで、ハーフボトルも置く。「Nico」では6銘柄揃えたシャンパンがおすすめという。当然ながらグラスワイン、グラスシャンパン。自家製サングリア白、赤。他にカクテルや、食前酒、食後酒まで酒場らしいアイテム揃え。パーティーコースではワインの持ち込み(1000円)が可能だ。楽しめる系列店「BRASSERIE LE ZINC(ブラッスリーザン)」があるが、至近距離となる。「ZINC」は1階が今話題の立ち飲みで、スタイル的にもトレンディなカジュアルワインバル業態。しかし、「Nico」は1階も着席として、しっかりと呑みつつ、きちんと食べることを意識したという。とはいえ、1階の黒皮のハイチェア、2階の椅子は60~70年代の中古家具という。時間の存在感を環境に反映させる演出が、小林氏らしいエスプリだ。1階はハイカウンター席とワイン樽のテーブル席。2階は中古家具のテーブル席。3階は座敷にちゃぶ台、ユニークである。
ヘッドライン
[ニューオープン]
2012.08.03
ジビエ料理がメインの男前フレンチが6月29日、日本橋室町にオープン! 注目の夢屋・小林研氏の新店、濃厚ネオフレンチビストロ「Nico(ニコ)」が誕生!
- やはり、1階は特等席。オープンキッチンのカウンターは、シェフのライブステージでもある
- 2階はテーブル席。104年と現在の空気が濃厚ネオビストロ感を盛り上げる
- シャリュキトリーの盛り合わせ
- 「フランス産マグレ鴨のロティ」。重めのワインがマッチする
(取材=西山 登美子)