五反田駅西口から徒歩3分、東急池上線のガード下に、居酒屋、お好み焼き屋など6店舗が集まった「五反田桜小路」が誕生した。この桜小路は、高架橋下のスペースを有効活用しようと、東急電鉄が横丁仕様の建物を建設。飲食店舗の業態開発や店舗開発などを手掛けるブルーブ(大阪府東大阪市、社長:川口淳太郎氏)が施設運営を行なうもので、大阪最強・生野菜焼き「お好み焼きオモニ」、激辛牛すじ煮込み「居酒屋路地裏」、餃子日本一・久留米ラーメン「満洲屋が一番」、讃岐うどんの代名詞「讃州うどんの庄 かな泉」、遊びゴコロ満載の立ち飲みバー「ファットBAR」の5店舗に加え、その桜小路の一角で、6月1日に開店したのが「酉焼 美智子(とりやき みちこ)」だ。居酒屋風の店内に入ると、カウンター上に、さまざまな部位の鶏肉が並んでいる。各テーブルの上には、カセットコンロとジンギスカン鍋。「焼鳥屋と焼肉屋の間のような店です」というのは、この店を経営する、ハレノヒ(東京都目黒区、代表取締役社長:高野昌宏氏)の高野氏だ。「魅惑の七輪 らんまん」「らんまん食堂」などのブランドで話題を集める高野氏が手掛けるこの店は、鶏のホルモン焼きの店だ。
メニューには、笹身やレバーなどおなじみの部位の他に、「食道」(480円)、「ハツモト」(480円)、「ランソウ」(480円)、など見なれない文字が並ぶ。「食道は、軽い軟骨が入っていてコリコリとした食感。ハツモトは動脈なんですが、ゴムのように弾力があります。ランソウは卵巣なんで、小さいヒダヒダがたくさんあって、ちょっと変わったタラコみたいな感じ」と、それぞれの食感をユニークに表現する高野氏。「今まで、牛や豚のホルモンを扱ってきましたが、鶏のホルモンは全然違うんです。1羽の個体が小さいから、内臓も小さい。牛や豚のように内臓と肉に完全に分かれるのではなく、各々の部位にちょっとずつ鶏肉がついた状態で食べることになるから、内臓と肉がうまく合わさってコーディネートされるんですよ」、イキイキと話すその表情から、食材、特にホルモンに対する愛情が感じられる。「鶏肉がメインの店はたくさんあって、多くは鶏肉の産地やブランドにこだわっています。うちも、もちろんいい鶏肉を仕入れていますが、産地をウリにしようとは思っていません」という高野氏は、「鶏の内臓を出す店は他にはないんじゃないかな。日本初といっても過言ではない店なんです」と胸を張る。
この店の名物は、店名にもなっている「初代 美智子焼き」(780円)。若鳥よりも肉が赤みががっていて、歯ごたえがある親鳥を、ジンギスカンのように野菜とともに焼いて食べる。「僕の母親の名前が美智子っていうんです。だから、親鳥の料理は美智子焼き」と、命名にも遊び心を忘れない高野氏である。この他にも、鶏の「とさか」を湯むきして細かく刻んだ「とさか酢」(380円)、「笹身アボガドわさび和え」(530円)など、オリジナルの一品メニューが並ぶ。飲み物は「焼酎」(500円)、「日本酒」(600円)など、その日のおすすめを用意。「大人が長時間楽しんでもらえるような店」を目指しているそうだ。
次々とヒットを生み出すアイデアマンとしても知られる高野氏。なぜ、今回はこのような店をつくろうと思ったのだろうか。「この場所で店を出そうと思った時、まず鶏肉ありきだったんです」高野氏の頭の中では、店内が狭く、厨房に大きな冷蔵庫を置けないことと、店の近くに鶏肉の専門業者があることが、うまく合致したようだ。「新鮮で美味しい鶏肉を販売する、信頼のおける業者さんだったんで、そこから仕入れて、足りなくなったら、すぐに持ってきてもらえるな、と」いわば、食材用の大きな冷蔵庫が近くにあるようなもの。「鶏肉イコール焼鳥屋、ということも考えたんですが、焼き肉の方が、お客さんにいろんな部位を食べてもらえるし、長時間楽しんでもらえる」これまで、らんまんブランドで培ってきた、焼き肉店の経営者としての経験が、新業態のアイデアにつながった。
新しいアイデアと、これまでの経験の蓄積から生まれた店。しかし、始めからうまくいったわけではない。「プレオープンの時、お客さんから『焼き加減がわかりにくい』って、厳しく指摘されたんです」と、振り返る高野氏。火が通りやすく、一般の人も焼き加減をよく知っている牛や豚の焼き肉とは違い、鶏肉は火が通りにくく、だからといって焼き過ぎると身がパサついてしまう。加減が難しいため、完全に客任せでは、最も美味しい状態を食べてもらえないとわかった。「今は、最初に肉を出す時にスタッフが焼き方をお教えしています。目の前で焼いたものをいくつか食べてもらい、焼き加減をわかっていただいてから、お客さんにお任せするようにしました」。スタッフが横についていることで会話がうまれ、ホスピタリティにもつながっているそうだ。来店客の声をサービスやメニューに反映させ、客と一緒に店をつくっていく。「人を大事にしていきたい」と語る高野氏は、この夏、この店とは違う新業態3店舗をオープンさせる予定。ハレノヒの快進撃は、今後も続きそうだ。
ヘッドライン
[ニューオープン]
2011.07.01
ヒットを生み出す高野氏が率いるハレノヒの新業態「酉焼 美智子(とりやき みちこ)」、五反田桜小路内に6月1日オープン!
- ガード下にある店は、五反田のサラリーマンに親しみやすい雰囲気
- 約10坪という狭さを感じさせない店内。大人が長時間楽しめる
- さまざまな鶏の部位が並ぶ食材ケース。初めて見る、初めて聞く部位もきっとあるはず
- これが名物「美智子焼き」!たっぷりの野菜も摂れて親心がいっぱい!?
(取材=長谷川 敏子)