11月11日、根津美術館から西麻布方面へ抜けていく閑静な通り沿いに、日本料理店「御料理 壽修」がオープンした。店主の先崎真朗氏は、大阪の和食店で10数年に渡り研鑽を積んだ後、上京して都内の寿司店で修業を重ねながら、独立の構想を3年に渡り温めていたという。今回の出店を決意するに至った経緯について先崎氏は、「ちょうど知人にこの物件を紹介してもらったのですが、立地も規模も理想的で、造りも面白いなと思ったんです」と話す。シックなファサードの扉を開けると広がる、数奇屋調の食空間。厨房から、カウンター席とテーブル席の状況が全て目に届くような小規模なスペースだが、天井が高いためか窮屈な印象を与えない。「実はこの物件、半地下になっていまして。階段を下った先にもまだ空間があるんです」(先崎氏)。この隠れた地下スペースは、今は倉庫として使っているが、いずれは個室を作って、家族連れや接待などの幅広い層やニーズに対応する予定だという。
同店で供されるのは季節の食材をふんだんに使った12,000円のお任せコース。基本はこのコース一本のみだが、深夜には希望の価格に応じたショートコースも提供可能だ。毎日市場に足を運び、自らの目で選んだ素材を仕入れるため、メニュー内容は仕入れ状況によって日々異なる。特に力を入れているのはコース序盤に登場する「煮物椀」。旬の野菜や時季の魚介類をお出汁と共に盛りつけた一品は定評があり、特に、寒くなってくると登場するスッポンのお椀は先崎氏の自信作だ。また、固定概念にとらわれることなく、個性的な食材も積極的に取り入れており、冬の時期にはジビエにも挑戦。伝統に斬新さも取り入れてコース内容に緩急を出す。また、コース終盤には必ず「炊き込みご飯」を提供しており、こちらも旬の食材を用いた季節感あふれるものを組み込んでいる。ドリンクメニューは日本酒、焼酎、ワイン、ソフトドリンクと豊富なラインナップを取り揃え、いずれもグラス1000円前後と、良心的な価格帯で愉しむことができる。また、ワインに詳しいスタッフが随時相談に応じてくれるという。
内装は数奇屋調を基本としているものの、床にはヨーロッパ調の模様が描かれており、「和」の中にもモダンな要素を取り入れた斬新なデザインとなっている。この独特な設えは、両親が美術の先生をしていて昔からアートに造詣が深いという、先崎氏ならではの感性からくるものだ。「食事はもちろんなのですが、内装や器なども総合的に愉しんで欲しいと思います。私自身も器が好きなので、古いものから現代作家ものまで、お客様に興味を持っていただけるものを、幅広く提供していきたいです。」唐津出身で小さい頃から焼き物に接していた先崎氏が見立てた器と料理の饗宴もまた、同店での愉しみの一つだ。
「地下に個室をつくるときには、お茶事もできるような空間にして、茶会などのイベントも積極的に行なっていきたいですね。もちろん、堅苦しいものではなく、カジュアルな会です。お客様が気軽に集い、楽しめるような場を提供できたら嬉しいです」と、今後の展望を語る先崎氏。「とにかく、まずは1回食べに来てください」と自信をのぞかせる店主が演出する、芸術的な食空間 ―― 西麻布の憩いの場を目指し、静かに幕を開けた。
店舗データ
店名 | 御料理 壽修(じゅしゅう) |
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住所 | 東京都港区西麻布2-16-1 |
アクセス | 地下鉄 表参道駅A5出口より徒歩10分 六本木駅2番出口より徒歩15分 |
電話 | 03-6427-5167 |
営業時間 | 18:00~24:00 |
定休日 | 日曜・祝日 |
坪数客数 | 20坪(1F:10坪、B1F:10坪)9席 |
客単価 | 15,000円 |