「わが家」「じとっこ」「関根精肉店」「魚米」など様々な繁盛業態を展開するエー・ピー カンパニー(港区、代表取締役 米山 久氏)が新業態店にチャレンジ。6月1日、地下鉄溜池山王駅から直結するオフィスビル、山王パークタワーという112坪もの大箱店舗に「芝浦食肉」「十七代目 紀ノ重」「魚貝バル KINOSHIGE」の3業態をオープンさせた。不況の煽りを受け、集客がますます難しくなっている大箱店の“再生”をテーマに、ホルモン居酒屋、魚貝居酒屋、立ち飲み魚貝バルの3業態の居酒屋を1ヵ所に集約させ、その総合力で集客を図っているのが特徴だ。特筆されるのは単に3業態の店を集めただけでなく、そこに数々の“共有”を盛り込むことで設備費、人件費、食材ロスの削減など、時代に合った効率のよい経営を実現していること。損益分岐点を抑えて利益を生みやすくする、新しい飲食店経営のモデルパターンとしても大いに注目される取り組みだ。
同社は自社で内臓類と魚貝の卸売業を手がけており、料理も卸直営の「旨い、安い、新鮮」を売り物に据える。店舗デザインはこうした売り物を全面に打ち出して差別化を図っており、オフィスビル内に築地場内と芝浦の精肉加工場を思わせる横丁を再現してインパクトを強化。ホルモン居酒屋の「芝浦食肉」、魚貝居酒屋の「十七代目 紀ノ重」は店舗の仕切りを低くして空間を共有し、店内を活気と熱気で包む。ディナー時に満席の際は席が空くまでもう1店舗で飲食しながら席待ちできるようにして商機の損失をカバーし、一方、ランチではスペースを完全共有。どちらの店舗でも両店の料理が楽しめるようにして席効率を高めている。「魚貝バル KINOSHIGE」は夜のみの営業で、こちらも通常利用の他、満席時の席待ちとして利用できる。また、3店舗を集約させることで厨房の共有を図り、飲食店開業で最も費用のかかる厨房の設備投資をダウン。さらに料理人も共有することで人件費を削減。そして、魚貝居酒屋と魚貝バルで食材を共有し、鮮度に合った調理法での提供、食材の効率化で巧みにロスを防いでいる。
メニューは「芝浦食肉」が牛小腸に特化した新鮮なホルモンを鉄板焼きスタイルで提供、塩、醤油、味噌の3種の味を揃えた「ホルモン焼き」(1人前各580円)として看板商品に据える。また、「もつ鍋(塩・醤油)」(1人前各880円)や「刺し盛り」(1480円)など、脇を固めるメニューも充実。ランチはスープ、麺に徹底してこだわったつけ麺と、メンチカツカレーや牛すじカレーといった「肉屋」とボリューム感を売りにしたメニューで営業し、昼夜売り方を変える二毛作店として独自性を追求する。「十七代目 紀ノ重」は創業400年の歴史を持つ仲卸「紀ノ重」の目利きで仕入れる強みを生かし、居酒屋業態としては贅沢なまでの新鮮魚貝をお値打ち価格で供する。木箱に盛った“市場感”“築地感”あふれる「紀ノ重盛り」(1980円)や、「十七代目紀ノ重名物こだわり卵の明太子入り玉子焼き」(880円)、「三陸5種の海藻サラダ」(580円)などバラエティーある商品構成を採用。「魚貝バル KINOSHIGE」は「カニ味噌バーニャカウダ」(500円)、「釜上げ白魚のガーリック炒め」(750円)、「いかすみのリゾット」(750円)など、立ち飲みの店とは思えないほど料理性の高いメニューを豊富に揃え、それでいながら仕事帰りにふらっと立ち寄れる気軽さを大切にしてお客を楽しませている。
今回、店づくりは横丁づくりの第一人者・浜焼き業態の火付け役でもある浜倉的商店製作所の浜倉好宣氏とコラボを組んでいるのが大きな売り物で、繁盛店づくりのノウハウを共有することで新たな魅力を導入し、より磐石な経営を目指している。長引く不況で従来では考えられないような好条件の大箱物件が出やすくなっている昨今、3業態の複合店舗という斬新な売り方を引っさげて大箱店攻略に乗り出したエー・ピー カンパニー。目標月商は3店舗で2500万円を掲げており、多くの飲食店が手を引きつつある大箱店というビッグなビジネスチャンスを同社が根こそぎ手中に収めていくのか、要注目だ。
店舗データ
店名 | 芝浦食肉 山王パークタワー店 |
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住所 | 東京都千代田区永田町2-11-1 山王パークタワーB1階 |
アクセス | 地下鉄溜池山王駅から徒歩1分、地下鉄国会議事堂前駅から徒歩3分 |
電話 | 03-5512-8161 |
営業時間 | 11:00~14:30(L.O.14:00)、17:00~23:00(L.O.22:00) |
定休日 | 日曜・祝日 |
坪数客数 | 45坪・110席 |
客単価 | 昼750円、夜3300円 |
運営会社 | 株式会社エー・ピー カンパニー |