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浜倉的商店製作所と三井不動産による話題の商業施設「渋谷横丁」開業秘話【vol.1】浜倉的商店製作所 代表・浜倉好宣氏

2020年8月、渋谷に商業施設MIYASHITA PARKが開業。その目玉である「渋谷横丁」は全長100mのゾーンに19テナントが集結した横丁だ。大手デベロッパーである三井不動産と、型破りの手法で横丁を手掛けてきた浜倉的商店製作所、まったく風土の違う二社が協業して生まれた。コロナ禍にもかかわらず、オープンするや否や若者を中心に連日大盛況、渋谷の新名所として世の中を騒がせている。vol.1は、浜倉的商店製作所の代表、浜倉好宣氏に話を聞いた。


(浜倉的商店製作所 代表取締役:浜倉好宣氏)

大手不動産会社との横丁計画は、担当者の熱意によって実現

―「渋谷横丁」開業のきっかけは?

6年ほど前、不動産各社がこの宮下公園の再開発事業の企画をしている時点で三井不動産から打診がありました。声をかけてきたのは伊藤彩さんという当時まだ20代の女性社員。彼女の前職はビールメーカーで、その時からのお付き合いでした。個人的に「恵比寿横丁」ファンでもあったようで「もし取れたらここで横丁やりましょう!」と提案してくれました。

正直、商業施設を手掛けるような大手不動産会社から見たらうちの横丁は型破りな手法を多用しますし、まるで風土が違う。三井不動産で企画を通すことは難しいのでは、と思いました。その時は冗談交じりの話でしたが、次に伊藤さんに会った時には、三井不動産が宮下公園再開発の事業権を取得することになっていました。「本当に横丁をやりましょう」と、冗談ではなく本気で彼女が言うので、真剣に“次世代に繋ぐ横丁”をテーマに計画を考えるようになりました。

―ここで横丁を作ろうと思った決め手は?

施設の目の前が道路だが、広さがあり、契約上テラス席の設置が可能とのことだった。この構造なら、浅草のホッピー通りのようなにぎわいを作れる。それこそが渋谷で求められているものではないかと思いました。再開発が進む渋谷ではどんどん新しい高層ビルが生まれている。しかし、人はやはり“地面”で酒を飲みたくなるのではないかと思うんです。風を感じながらテラス席で飲む解放感を求めて多くの人が集う場所にしたいと考えました。そして、全長100mにも及ぶ長さ。道を歩く人は強制的に横丁の賑わいを見ることになる。じゃあ入ってみようか、という連鎖が生まれるのも狙いです。

大通りから1本入った場所であることも絶好のロケーションでした。駅から近く利便性がありながらも隠れているため、落ち着いて飲める環境。渋谷のセンター街側にはたくさんの飲み屋がありますが、ちょうどこの原宿へと向かう明治通り沿いには店が少なく、ポテンシャルを感じました。すぐ横にはのんべえ横丁があり、新旧の横丁の良さが入り混じるエリアにできるのも良かったですね。

当初はプロデュースと直営店は半分だったはずが、全19テナントを直営でオープン

―計画を進める中で苦労したことは?

予想はしていましたが、それはもうたくさん苦労がありました(笑)。この横丁計画は、普通に考えて大手企業では通らない企画だったと思います。最終的に伊藤さんはじめ担当者の熱意があって実現した計画です。その経過ではさまざまな折衝がありましたね。

「渋谷横丁」の全19店舗は当社の直営ですが、当初は全店直営でやるつもりではなく、レイアウトやゾーニングなどを担当するプロデュースの予定でした。ただ、新築のため、建築法に則ると「恵比寿横丁」のような小規模店舗の集合体は不可能であること、施設規模を考えると、コンセプト的にも一本のストーリーをたてて施設が一体化してスタートすることが大きなキーとなる、そう考えて全国の食文化を渋谷に集結させ、食だけでなく、エンタメなど体感できる新たな横丁を創ろうと考えました。「恵比寿横丁」はそれぞれ個性あるオーナーが集結したからこそ、あの味ができたのですが、商業施設内でそれぞれのオーナーをまとめるとなると至って普通の商業施設になってしまうのでは、という危惧がありました。だったら、まずは自分たちで運営してしまい、ある程度、軌道に乗ってきたらその後に独立する人が出てきてもアリだと考えました。

また、これは当社のポリシーですが、“横丁は通り抜けできる構造でなければならない”と考えています。そして、通り抜ける通路もまっすぐではなく凸凹しているから良さが生まれる。これは当社が横丁を手掛けるうえでの絶対条件でした。テナントがそれぞれ独立していると、通路は施設側の管轄になってしまうんです。商業施設の通路はどうしても整然とした造りになってしまい、横丁としての面白さがでない。全店直営で丸ごと当社の運営とすれば、テナント間の通路も当社の管轄となるので、いびつな通路を作り出すこともできました。

(横丁の各店では、全国各地のご当地ギョウザを取り揃える)

―商業施設で24時間営業を実現したのも衝撃的ですね。

24時間営業も当社の横丁のポリシーのひとつ。商業施設では前代未聞ですが、三井不動産のご理解いただき実現できました。北海道から沖縄まで日本各地のご当地グルメを提供する「地方別食市」が13テナントありますが、24時間営業をするうえで夜はもちろん昼も多くの人が集う場所として、「酒場」とは打ち出さず「〇〇食市」と謳っています。それぞれのご当地グルメを提供して「毎日が食フェス状態」を目指しています。

特に、丼ものやラーメン、ギョウザ、串焼き、から揚げなどのアイテムでそれぞれのご当地の味にした品を多く用意しています。例えばラーメンなら札幌は味噌ラーメン、沖縄はソーキそば、などこれらのアイテムは地方ごとのバリエーションがたくさんあり、特色を打ち出しやすい。昼にランチとして丼やラーメン、夜はギョウザや焼鳥をつまみながら、と利用してもらえます。

(店内でDJイベントなども開催し、エンタメ性の高い場所として訴求する)

―「渋谷横丁」の魅力とは何なのでしょうか。

これだけの規模ですから、のんべえ横丁のような小さな店だからこそできる「人情」や「人の魅力」をウリにすることは難しい。ただ、飲食店は料理や内装デザインだけでなく、そういった「体験」もコンテンツとして勝負していかなくてはならない。そこで「渋谷横丁」では、次世代を繋ぐ横丁として「エンタメ性」で勝負しようと考えました。行政や生産者のPRイベントの定期的な開催や、歌手やダンサー、DJによるパフォーマンスも行っています。コロナ時期で集客を図るイベントは難しいですが、今年、多くの祭りが中止や延期に追い込まれ、地域の文化は元気を失っています。祭りは、地域の文化や魅力が詰まった体感型のコンテンツですので、渋谷横丁を舞台に、全国の祭りを体験し、応援できるイベントを開催することで、日本の文化を盛り上げたいと思っています。まずは、11月に「阿波踊り」祭りを実施し、「渋谷横丁」は毎日がお祭り、そんな場所にしていきたいと思います。

―今後の展望は?

ここまでの規模の大きい案件を手掛け、有難いことに想像以上の客入りでやり切った感もありますが、今後もある程度の大きさのある案件を中心に手掛けていければと思います。コロナ禍で横丁も危機にはなりましたが、絶対に次世代を繋ぐ要素があれば横丁がなくなることはないと思います。「渋谷横丁」を見るに、人の集まるパワーは不変だと感じました。

今回、様々なチャレンジをさせてくれた三井不動産のように、デベロッパーの在り方も変わっていくのではないかと思います。「渋谷横丁」の、全長100mのサッシを抜いてテラスを配置するスタイルは、従来のように、まずビルを作ってそこにテナントを当てはめていく……という従来のやり方ではできない。今回の「渋谷横丁」が、これからの施設づくりの新たなカタチになっていけばと思います。

【vol.2】は、「渋谷横丁」開業のきっかけを作った三井不動産の担当者を直撃インタビュー!こうご期待。

(取材=大関 まなみ)

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