【開催概要】
2019年5月16日開催 フースタ繁盛ゼミ 5月度
《第一部:基調講演》
理論で解決!みるみる成長するサービス力浸透法
講師:株式会社プレジャーカンパニー サービスマネージャー 遠山啓之氏
《第二部:基調講演》
日本一『日本一』を輩出する飲食企業『絶好調』に学ぶ最強のチームビルディングとは
株式会社絶好調 専務取締役 松村康夫氏
《第三部:パネルディスカッション》
大山が引き続きコーディネーターとして進行。以下3名がパネル講師として参加。
・株式会社プレジャーカンパニー サービスマネージャー 遠山啓之氏
・株式会社絶好調 専務取締役 松村康夫氏
・株式会社絶好調 人材育成統括 高橋夏穂氏
【パネルディスカッション講師 紹介】
左から、絶好調 専務取締役 松村康夫氏、同社人材育成統括 高橋夏穂氏、プレジャーカンパニー サービスマネージャー 遠山啓之氏
【コーディネーター】
フードスタジアム 代表取締役 大山 正
大山 正(以下、大山):遠山さん、松村さん、1時間にわたるご講演ありがとうございました。三部のパネルディスカッションでは、「第14回S1サーバーグランプリ全国大会」の最優秀賞に輝いた、絶好調の人材育成統括 高橋夏穂さんにもご参加いただきます。よろしくお願いします。
人材が育つ絶好調の”店長プレゼン”とは?
大山:第三部のパネルディスカッションでは、二部の講演を通して、疑問に思ったことを伺っていきます。最初の質問です。
絶好調では店長になる前に「店長プレゼン」なるものがあると伺いました。具体的には、どういったことをされるんでしょうか?
高橋 夏穂氏(以下、高橋):店長プレゼンは、性別、年齢、経験に関係なく誰でも参加できるプレゼン大会です。新規店舗の店長立候補、既存店長の新業態提案などを、候補者はアルバイトや社員全員の前でプレゼンします。
店長に立候補する場合、一番重要視されるのは”想い”です。なぜ店長になりたいか、何のためにやるのか、どういうチームを作りたいのか、といった部分を大切にしています。
大山:その大会を経て、店長の役職を決めるのは経営陣ですか?
高橋:最終的には、そうですね。ただ、応援してもらえるような人材でないと店長にはなれないので、まずプレゼンを聞いたスタッフから共感を得る必要があります。また、すぐに店長になれなかったとしても、その後の成長につながる大会なので、スタッフには出場を積極的に勧めています。
松村 康夫氏(以下、松村):店長プレゼンについて、少し補足します。例えば、今日この会場に講義を聞きに来ているウチの子(会場に座っている女性を指す)、元は大学生でアルバイト入社だったんですよ。絶好調の思いに共感して、ここで夢を叶えるため社員になりたいと言って今年の1月に大学を辞めたんです。そこから3月に店長プレゼンに出て、今は店長代理を任せています。
大山:すごいですね。
松村:もう、その人の可能性でしかないんですよ。今、高橋を「燗アガリ」の店長に一時的に戻して、彼女の育成を行っています。
大山:店長プレゼンでみんなに認められて店長になっているから、現場の納得度も高いですよね。本人も実行に移しますし。
遠山さん、プレジャーカンパニーの店長になるプロセスはいかがですか?
遠山 啓之氏(以下、遠山):社長が半年に一回、社員全員の面談を行っていまして。個々の将来像を共有し、店長を目指している人材を本部のメンバーがバックアップしていきます。
最終的には、項目の達成度でランクが決まるキャリアステージがあり、それを踏まえて幹部が審査の上、現場に落とし込んでいきます。
大山:事前に将来のビジョンを共有した上で、段階を踏んで育成していくという感じなんですね。
影響を受けた人物は、誰も真似できない”サービスの神様”
大山:サービスマン、飲食人として、感動して影響を受けた方を教えてください。
高橋:私は、奥田英里さんという憧れの人がいます。現在は、一家ダイニングでウェディングのマネージャーとして働いていらっしゃいます。もとは絶好調のアルバイトをされていた方で、その後「絶好調てっぺん」の初代店長 秋川が愛媛で独立開業した「夢の家」の女将を勤められていました。
一緒に働いたことはなかったんですが、女将としての考え方などに大きく影響を受けて。奥田さんが「夢の家」を辞められるときは、弾丸で愛媛へ行き「一緒に働かせてください」と頼み込んで、お店に入らせてもらいました。
大山:松村さんの影響を受けた人は誰ですか?
松村:……僕は、過去は振り返らないから。
(一同笑い)
遠山:僕はいくつかターニングポイントがあって、一人に絞るのが難しいです。その中で頑張って絞って、二人いらっしゃいます。
一人目は、前職で勤めていたグローバルダイニングの代表取締役社長 長谷川耕造さんです。よく私たち社員に言っていたのは「ただのお盆持ちになるな。どこに行っても潰しがきく人間になれ」ということですね。私は、何を考えずに接客をやるだけでは意味がないと解釈して、色々と先読みしながら動くようになりました。
二人目はサービスの神様とも呼ばれる、ヒュージの代表取締役社長兼 CEO 新川義弘さん。新川さんがグローバルダイニングに在籍されている時に、一緒に時間を過ごさせていただいて、本当に「この人、天才だな」って思いました。でも、現場で新川さんでしかできない接客を目の当たりにした時、「この人にはなれない」って気付かされて。さらに天才の人って、目指すイメージがあってもどうやってスキルを上げてたどり着いたのかを言葉にしづらいんです。そこで、僕は天才にはなれないけど、自分なりにやれることを考えて、たどり着くためのプロセスを把握するため、とにかく天才を観察することにしました。どうやってお客様に喜んでいただいているのか、どういう言葉遣いをしているのかを見聞きして、とにかく模倣していましたね。
大山:我々世代は、サービスの神様といえば新川さんみたいなところがありますよね。平成生まれの方はわからないかもしれないですが、小泉首相とブッシュ大統領が会食した時にサーバーを務めたのが新川さんでした。
独立、転職を考えないナンバー2の役割
大山:遠山さん、松村さんのお二方とも、いわゆる会社のナンバー2と言われるポジションかと思いますが、社長になろうとは思わなかったでしょうか。
松村:ないです。独立も転職も考えたことがないです。僕の頭の中に確固たる社長や経営者のイメージがあって、それが僕ではないなと思っています。そこまでの度量がないかな、とも。クビにならない限りは(笑)、絶好調にいるので、社長になる、独立っていうのは全くないですね。
大山:松村さんは、本当にいつもブレないですね。遠山さんは?
遠山:現段階では全くありません。ただ、僕の将来の夢がカウンター10席くらいのカレー屋さんのオーナーになることでして。絶対に店舗展開はせず、普通のカレーを提供するんです。もう僕が最高のサービスをするためのカレー屋さんっていう。最後は自己満足に走ろうかなと思っています(笑)。
僕も松村さんと同じで、独立して経営者になろうという考えはありません。経営者がいて、その通訳になる方が性に合っていると自覚しているので。
大山:プレジャーカンパニーの代表、望月さんはグローバルダイニングで同期だったそうですね?
遠山:はい。グローバルダイニング時代の同期で、望月が独立してプレジャーカンパニーを立ち上げて10年目で、私が入社して5年半くらいですね。
経営者と現場を繋ぐ、仕事の流儀
大山:経営者の通訳という話がありましたが、ナンバー2として心がけていることはありますか?プレジャーカンパニーの望月さんは、どちらかというと感覚的なタイプですよね。
遠山:感覚的ですね。でも”1番はお客様”という考え方の軸や、経営者として実績100%で評価される覚悟が一切ブレない。そうなるとどうしても、現場的に言葉が足りなかったり、タイミングが悪かったり、は出てきます。そこを僕ができる範囲で噛み砕いて言葉にして、スタッフに声をかけて補います。経営者の考えをうまく汲み取りつつ、現場を尊重して伝えるというのは心に決めていますね。
大山:外食業界は”社長と店長”という組織体制が非常に多いですよね。でも、社長って神みたいな感じで、意見しにくいと思うんです。やはり、遠山さんのような通訳がいないと、現場が納得するようにトップの考えを落とし込むのが難しい。そういった意味で遠山さんの存在というのは非常に重要な存在ですよね。業界でそういった人材が求められていると感じます。
松村:1番は代表の吉田さんがやりたいように、やりやすいように土台を作ることを心がけています。社長は想いを語ったりとか、色々と1番に会社のことを考える立場じゃないですか。その考える時間をいかに作れるかを意識しています。僕は何かをするというよりも、吉田さんがやりやすい環境を作るのが仕事です。
スタッフにひたすら向き合う高橋氏流、人材育成術
大山:絶好調の吉田社長は、月1回社員1人ずつ面談をされると聞きました。
高橋:面談というよりも、社長と2人でご飯食べにいくとか、お酒を飲みにいくとか、もっとフランクな感じです。社員に限らずアルバイトともいったりしていますね。距離が近いので、悩み相談や自分の希望を話す機会がたくさんあります。
大山:高橋さんも人材教育に携わられているということですが、現場スタッフと接するときに心がけていることはありますか?
松村:ちょっと僕から言わせてください!みんなに「夏穂ちゃ~ん!」って慕われていて、やわらかい感じがしますが、そんなことないんですよね。僕がみている限り、彼女は現場スタッフとのやりとりとかがすごく細かくて。熱量もあるし、厚みもある。なんでそこまでできるのかな?っていうくらい人を大切にしています。
人って自分ごとでやっちゃったりするじゃないですか。自分が育成を任されているから、やらなくちゃいけないとか。でも彼女は、スタッフ一人一人が絶好調でどうしたらベストな状態になるかを常に考えて行動しているのが、見ていてもわかります。現場の育成は全部やってくれているので、吉田さんや僕は余計なことする必要がないくらい。
遠山:僕が現場に入るときには、とにかく誰よりもやるっていうのは決めています。
例えば、店のスタッフの誰よりもキビキビ動く、自分の笑顔はもちろん、お客様を笑顔にする、ウォッシャーで洗い物を速くキレイに仕上げるとか。研修をして何かを教えるポジションである以上、スタッフに絶対に見られているじゃないですか。きっと本来は、ミスも許されないと思うんです。だから、なるべく確率を減らすよう心がけています。
ただ年齢的に動いている時間が長すぎると、腰にきたりします。現場では、本当にずっと全力で走ったりしますから、キツいこともあって、そんなときは笑顔で「ごめん」って言います(笑)。
チームビルディングのプロに学ぶ、尊敬できない上司への対処法
大山:松村さんの言葉で「扇の要を尊ぶべし」というのがありましたけど、やっぱり尊敬されないということ聞いてくれないですからね。今日は色んな飲食業の方たちが集まっていると思うんですが、上司を尊敬できないなっていう瞬間があると思うんです。そんな時はどうしたらいいんですかね?もし、ご自身がその立場ならどうしますか?
遠山:そこは、素直に話したらいいんじゃないですか。あるあるだと思うんですけど、「報連相しろよ」「遅刻するな」って言っている上司がきちんとできてないケース。そういうのは正直に言ったほうがいいんです。「それではついていけないですよ」って。それでもダメなら次の手を考えなければいけませんが、思っていることを言わずにストレス溜めて、不満を抱えている状態だと何にも変わらないですから。
松村:尊敬できない経営者、上司なら、会社を辞めるのも選択肢としてはアリなんじゃないですかねぇ……。でも、まず辞める覚悟できちんと伝えてみたらどうでしょう。辞めるから言うのではなく、辞める覚悟で。それでも改善されなかったなら、自分の生きる場が違ったということだと思いますよ。まぁ、そういう方は是非絶好調にきていただければ(笑)。そのまま勤めていても、その人の人生も、その上司の人生も良くならないです。
大山:松村さん、今日セミナーでお話し聞かれた方は、風通しの良い環境を作れないのも自分の責任だというのはわかっていますから。お二方とも、きちんと自分の想いをぶつけてみましょう、というご意見ですね。
現場の士気を上げるモチベーションアップ法
大山:続いて、自分流のモチベーションアップの方法を教えてください。絶好調は、1番若いスタッフだと10代ですよね。どうしても、恋愛だったりとか、学校だったり、モチベーションの上がり下がりは出てきませんか。そういう時どういう風に雰囲気を作っていますか?
松村:こういう話は、彼女(高橋氏)得意ですよ。
高橋:ええっ、そうですね……(笑)、どうしても体調が優れないこともありますし、プライベートで不安定になるスタッフもいます。様子が変だなって思ったら「なんかあった?」って聞いてみたりしますね。
チームで動いているものなので、誰かが調子良くない時はみんなでカバーできるよう全体に共有します。私は、例えばその子が10の力を持っていて、7の力しか出せないっていう時は
私が残りの3を補うように動きますし。
遠山:僕が現場に入る場合は、ウェイターをやりながらスタッフの先にいるお客様の表情を見るようにしています。お客様と笑顔で会話をしていたら、「今お客様が笑顔だったけど、どんな話したの?」と声をかけて気づかせます。接客スタッフの状態はお客様の顔を見ればわかりますよね。なので、店長にはスタッフの言動や行動でお客様の表情を把握して欲しいです。
すごく個人的なやり方でいうと、インカムで親父ギャグをメッチャ言います。インカムって使い方を間違えると、すごくネガティブな言葉が飛び交うことがあるんです。スタッフ同士、表情も見えなくてイライラが伝播しがちです。そうならないように、親父ギャグを使います。誰も笑わないですけど(笑)。
大山:お三方とも店長とは違った立場で、サーバーの表情を見てらっしゃるんですね。
絶好調は、お客としてよく行かせていただいてまして。いつもいいなと思うのは、店長がアルバイトの子を僕に紹介してくれるんです。「今日入ったアルバイトの子なんです」といった感じで。行きつけの店って顔見知りのスタッフがいなければ楽しさが半減することもありますが、そういった形で紹介してもらえれば、さらに愛着がわきますよね。
今後の飲食人の在り方とは
大山:最後に今後の目標をお聞かせください。業界をどのように変えていきたいですか?
遠山:今日の講義でも体感してもらった接客理論を業界のスタンダードにして、”接客と教育”のイノベーションを起こすことです。これは覚悟を決めて取り組んでいます。
『お客様がワクワクするような考える接客』を教育していく。そのために今まで業界が感覚でやっていて再現性の薄かった部分を、見える化できるように力を入れています。最終的には、僕が死ぬまでに国に認めてもらって、小中学校の教育カリキュラムに接客を組み込んで、僕ら飲食人が教えるという活動をしたいです。最近、国の学校教育が思考力を重視する教育方針に変わってきていまして。接客ってもう思考力だと思うんですよね。表情を読み取ったり、言葉を汲み取ったりしながら、考えて表現していく。これを活かさない手はないと思っています。
大山:飲食業界、売上規模は大きいのに声が小さい業界と言われていますから、教育サイドから入るとまた流れが変わりそうですね。
遠山:国に認めてもらって初めて、飲食業界の価値が上がり、働きたい業界になると思っています。そういうストーリーで進めたいですね。
高橋:私は採用も担当させていただいて、飲食業に就職したいと思える業種にしたいと思っています。絶好調は新卒採用をはじめて2年。この4月には6名が入社してくれました。今年は内定出しの段階で15名。飲食で働きたいっていう子が増えている実感があります。もっと飲食業界の魅力を伝えていきたいですね。
松村:お父さんお母さんが「なんで飲食やらないの?」っていってくれるような業界作りをやっていきたいですね。飲食業で働きたいって本人が思っているのにも関わらず、未だに他力によって働けなかったりするんです。そういうのってすごく悔しいじゃないですか。そこを変えられるかは、今の時代に生きている飲食人がどうあるべきかということだと思います。やるって決めない限りどうはならないと思うので、楽しいお店を作ったり、素敵な人材を育成できたり、いかに楽しい人生が歩めるかというのを伝えていきたいです。
大山:お三方とも、飲食業界の魅力を伝えることに尽力されるのですね。実りのあるお話ありがとうございました。