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超過供給で売れない果実を有効利用。旬の果実を凍らせて削る「果実けずり」という新感覚スイーツ

イチゴやマンゴーなど、生の果物を冷凍し、かき氷機で削って仕上げにソースをかけて提供する「果実けずり」は、従来の氷を削ったかき氷とは似て非なる新感覚のスイーツ。このアイテムに目を付け、独自にブラッシュアップをして打ち出していこうと考えたのが株式会社Cyberdoorの荒木賢二郎氏。荒木氏は「かき氷Louge」というかき氷のフランチャイズ事業を展開している人物。荒木氏が仕掛ける果実けずりは、今夏、かき氷に代わる新たな冷たいスイーツとしてブームを巻き起こすか。


規格外の果物を活用、低コストと生産者の利益を実現

荒木氏が果実けずりを展開する目的は、市場で売れ残った果物の有効利用。ひいては生産者への利益につなげたいという思いがあった。
果実けずりに使用するのは、大田市場で取引後に残った果物。品質に問題はなくとも、超過供給などの理由で売れ残った果実は、安値で買い取ることができる。荒木氏と同じ東京農工大学出身の左今克憲氏が経営する「旬八青果店」の協力のもと、旬の果実を低コストで仕入れ、同時に生産者の利益にもつなげている。
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かき氷のFC事業の果物ソースを活用し、スムーズな製品化が実現

果実けずりのもともとの着想は、「暑い夏の日に冷たいかき氷のデリバリーがあれば…」と考えたことだ。しかし、かき氷はすぐに氷が溶けてしまうため、デリバリーには不向き。そこで浮上したのが果実削りだ。冷凍して削った果実は氷に比べて溶けにくいということがわかり、製品化に乗り出した。
すでに同様の商品を提供している何軒かの店で実際に食べてみたという荒木氏だが、荒木氏の琴線に触れる商品はなかった。「ただ果実を凍らせて削っただけのものは、決しておいしいと言えませんでした」と荒木氏。凍らせたことで口の中の温度が下がって甘みが感じにくくなり、苦味や青臭さなどのネガティブなフレーバーが際立ってしまったのだ。そこで甘みを補うための試行錯誤を重ねるなか、最終的にかき氷Loungeで使用している自社生産のかき氷用のソース「ドルチェソース」を組み合わせることにした。このドルチェソースは、生の果実を使い、無化調で素材そのものの味を生かして製造しているもの。これをかけると適度に温度が上がり甘みが感じられ、しかも素材の風味がより強調される仕上がりになった。さらによいことに、すでにかき氷のフランチャイズ事業で販売しているものをそのまま流用するため、新たに開発した場合と比べて手間がなく、製品化はスムーズに進んだ。
「このドルチェソースがあったからこそ、果実けずりの製品化が実現しました。今後、果実けずりの競合が出現しても、自社でソースを製造しているという点は大きな強みとなりますね」と荒木氏は語る。
果物を削る削り器は、なんと1台1500円程度の家庭用の手回しかき氷器。荒木氏は業務用から家庭用に至るまで、さまざまな削り器で試したが、選んだ基準は、削り器内部に溜まってロスとなる量の少なさだ。余った果実の有効利用を謳っておきながら、ロスが多く出てしまうようでは本末転倒。この安価な家庭用のかき氷器が、もっともロスを少なく削ることができたそうだ。
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国内外への展開で全国の生産者の利益につなげる

現在、果実けずりは料理のデリバリーサービス「UBER eats」のほか、いくつかの店舗で5月下旬から販売を開始している。今夏、全国で果実けずりを展開予定で、1杯500円程度のちょっとしたぜいたくスイーツとしての販売と、レストランなどのデザートとして提供する高級路線の2つの軸で展開していく予定だ。さらには シンガポールなど海外でも販売の計画を進めている。
将来的には地方の産地で余っている果実を活用したいと考える荒木氏。産地では、収穫した果実の3割は規格外として出荷できないという。全国にフランチャイズの加盟店を増やして生産者と結びつけることで、低コストの実現はもとより、今まで出荷できなかった果実による利益を生産者にもたらし、三方よしのビジネスを実現するのが目標だ。同時に、「果実けずりを通じて、輸入ものの冷凍果物にはない、国産果実だけにある“旬の”おいしさを伝えることが私の使命です」と荒木氏は語る。

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