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特集

ミートフードEXPO2016 フードスタジアム presents スペシャルトークショー
外食新時代のイノベーション戦略と経営者の生き方!
~株式会社ゼットン代表取締役 稲本健一氏 × 株式会社エー・ピーカンパニー代表取締役 米山久氏~

外食業界の新世代経営者を代表する二人に、外食マーケットをどう読み、どんな戦略で経営に臨んでいるのかを語り合ってもらった。ハワイをキーワードにし、自らもハワイを中心にアイランドライフスタイルを送り、世界中を食べ歩くアイアンマンでもあるゼットン稲本氏。一方、製販一体化というミッション経営の理想を追い世界進出を着々と進めるエー・ピーカンパニーの米山氏。二人のライフスタイルや仕事観についても本音を聞いた。
(モデレーター/フードスタジアム編集長 佐藤こうぞう)


2016年の外食業界の流れをどう読んでいるか?

佐藤こうぞう(以下:佐藤) では順番に質問を投げかけていきます。お二人は外食企業経営を超えて突出したアイコン的存在でもあるわけですが、2016年の流れ、ご自身の会社についてはどう読んでおられますか?

稲本健一社長(以下:稲本) ゼットンでは、ここ数年ビアガーデンなどといった夏のアウトドア業態が非常に強く、その傾向は、例えば真冬には1800人くらいの全従業員数が、真夏になると3000人近くにも膨らむほど顕著です。
こうしたアウトドアの店というのは、天気がいい時には大きな利益を生むのですが、昨年は夏の天候不良にものすごく苦しめられました。そのため、こうした業態の比率を上げすぎたなという会社としての反省があります。
2016年については、余剰店舗を削り出していくと共に、もう一度自分たちの価値や強みを見つめ直し、そこに注力して業態をブラッシュアップしていく必要があると思っています。
また、人不足の事実は依然として変わりません。今のお客様は、一概に高級ということではなく、より価値あるものを求める傾向にあります。そこに向けて正しい業態開発を行い、極論を言えば、あまり人材に負荷をかけなくてもしっかりと回せるような強い店を作っていかなくてはいけない。それが2016年になるかと思います。

佐藤 お客が何に価値を感じているか、そこをしっかりキャッチして掘り下げていくということですね。

稲本 そうですね。世の中が本当に多様になってきているので、みんなのニーズを一本にまとめる、ということは非常に難しい。大型店舗と個店、一店一店に対して丁寧な店作りが必要になってきていると思いますね。

佐藤 エー・ピーカンパニーの米山さんはいかがですか?

米山久社長(以下:米山)
流れ…。そうですね、例えば、総合居酒屋からの専門店化で、キラーコンテンツだけをきちっと磨いていけばよかったような時代から、それだけにぶらさがるのではなく、全ての要素を磨き込んでいかないとダメな時代になってきているなという感じはしています。
例えば当社APカンパニーでいえば、宮崎や鹿児島の地鶏を提案するのがゴールではなくて、そのクオリティをもっともっと高め、お客様との距離感をいかに近づけていくか。そしてそれを鶏だけじゃなくて、豚とか、野菜にまで広げ、いかに今より上質なものを提示し続けていくか。
これまで飲食業界というのは、どこかアイデアとかコンテンツ単体のヒットありきというか、一部分にのみフォーカスしがちだった所があるのではないかと思います。そのあたりの企業努力の偏りが、コンビニなどといった他業種の進歩に負けている部分じゃないでしょうか。

佐藤 専門店としてのブラッシュアップはもう当たり前だと。総合力が問われているということですね。御社の主力業態の一つである『塚田農場』ですが、去年は既存店の売上げが前年度の90%を割り込んだ時期がありました。その反省の意味もあるのでしょうか?

米山 もちろん真面目に努力はしているのですが、どこか足りなかった部分があるのだという反省はあります。地鶏だけじゃなく、全てを磨き続けないとダメなんだと。ブランドというのは飽きられていくというのが大前提としてあるので、ここで『塚田』が継続的に必要とされていくのか、衰退していくのかの分かれ道に来ているのかなと思います。

佐藤 まあ、米山さんいろいろありましたけど(笑)、今年は現場にちゃんと出てしっかり見ていかれるということですかね?

米山 そうですね、いろいろ反省してます(笑)。

会社の舵取りをどのようにしていくか?

佐藤 次に、リーダーとしてどう会社を導いていくかということを伺いたいと思います。一番注目すべきは“人”の問題ではないでしょうか。人手不足や、教育の難しさ。育てた人材の移籍や独立、あるいはブラック企業批判という問題もあります。その辺は率直に言っていかがですか。

米山 人の問題に関していうと、当社のキーワードは「感情移入」だと思っています。今年度は新卒の社員が100人くらい入りましたが、うちの離職率は平均で5,6%くらいです。まあ独立ということもありますが、特にそれに対して反対することはありません。
APカンパニーの企業理念やビジネスモデルに対してどれだけ共感してもらえるかが大切で、生産者の所得や社会的地位の向上、日本の食文化の保全にどれだけ貢献できるか。こうした会社としての使命をきちっと示し、そこに感情移入してもらえれば、それほど大きな問題は起こらないと思っています。

佐藤 飲食企業としての社会的なミッションを、社内全体に浸透させていくということですね。ゼットンさんは、ミッション、ビジョン、人の問題に関していかがですか?

稲本 米山社長のおっしゃる通り、会社の理念を社員に届けていくのはもちろん大事ですね。そして、我々も基本的に成長した社員の独立に対して反対することはありません。
一つの商品を掘り下げていくという部分は、個店でもどんな大企業でも同じだと思うんですが、ただ、ある程度の資本規模がなくてはできないことは沢山あると思うんです。我々としては、そうした“チーム”でしかできないことをいかに目指していくかです。
例えば、東京レストランツファクトリーが『MIFUNE NY』の出店を予定していますが、現地での進行が難航し、当初は昨年9月にオープン予定だったのが今春か、あるいは夏かというところまで伸びている。今、そうした不測の事態に耐えるために、東京のメンバーが一生懸命になって利益を出してこのプロジェクトを支え、海外に新しいコンテンツを売り出していくという会社としての挑戦をしている。そんなことはやはりある程度スケール感のあるチームにならないとできないことです。個店ではまず耐えられないでしょう。
また、もちろん現場では一つ一つの商品を掘り下げてサービスを極めていく、これは当然のことなんですが、我々がチームとしての目的を明確にし、それを全員が共有しなければ時として個店主義に走りすぎてしまう、また時としてシステム化されすぎてしまうことになりかねない。そこの部分を、社員からアルバイトに至るまでしっかり共有することが重要だと思います。

佐藤 そうですね。ブラック企業と呼ばれる要因は、結局人間性の否定ということです。スタッフ一人一人の人間性や個性をいかに活かしながらマネジメントしていくか。飲食ビジネスはそんな難しい時代になりましたね。

具体的なこれからの戦略、戦術については?

佐藤 では次に、具体的な戦略について、ゼットンといえば、ハワイというイメージですが、稲本さん、新店計画などに関してはいかがですか?

稲本 先ほど申し上げた“自分たちのストロングタイプは何か?”ということにも関わってきますが、我々の強みは何かといえば、やはりいち早く着手したハワイアン業態ということになります。日本国内において、非常に強いブランディングの中で展開を進めることができているので、ここをさらに攻めていこうと。
飲食店経営者で「ハワイに出店したい」って言う人、実はメチャメチャ多いんですよね。そんななか、僕らのやり方というのは非常に特殊で、ハワイで“ハワイ料理”をやっているわけなんです。例えるなら、ニューヨークに住んでいるアメリカ人が日本に来て寿司屋をやっているみたいなこと。さらにはそれを現地の方々に支持していただいている状態なんですね。
ただ、やはり我々は日本人なので、今期はそろそろ次の段階として和食という業態にトライしていこうと考えています。 “築地直送”的なアピールの仕方ではなく、できるだけ現地のネイティブな食材を使いたい。ハワイは特に“イートローカル”の特色がある島なので、とても沢山の食材に恵まれています。それらを使って、和食の調理技術で何ができるかということにトライしたいと思っています。今ちょうど物件の契約が終わった段階なんですが、今年はハワイから日本へ、そしてメインランドにまで発信できる新しい業態作りにチャレンジしていきます。

佐藤 客単価やメニューのイメージは?店名や出店時期は決まっているのですか?

稲本 単価は40~50ドルの中間くらいですかね。メニューに関しては、少なくとも寿司、天ぷらなどのオーセンティックな和食ではなく、ニュージャパニーズスタイルです。ただ、フュージョンではなくて、ストレートな田舎料理とかそういったもの。サイズとしてはアメリカ的なビッグポーションも設ける予定です。
そして、2階には日本の感覚で1万2,3千円くらいのフレンチビストロを作ります。この業態はダウンタウンには沢山あるんですが、ワイキキには一軒もないのです。こちらもハワイの食材を使い、アメリカ国内のビオ系ワインや日本酒、焼酎をラインナップしていきます。
店名はまだ未定で、時期はできれば今年の5月~6月。ご存知のように、現地での仕事はそうスムーズにいきませんので、現場次第ですけどね。そんな感じで、いかに金をかけずにデザインで勝負するかというところです。

佐藤 デザインは森田(恭道)さんじゃないんですね?(笑)

稲本
 予算が今より5倍くらいかかっちゃいますからね(笑)。
今回借りた建物は、1935年にできたヒストリカル・ビルディングなんです。その建物の価値をいかに料理やサービスによって高めていけるかを考えています。

佐藤 御社が手がけられた(名古屋の)徳川園みたいですね。国内はいかがですか?

稲本 国内では、『(アロハ)アミーゴ』系で少し出店計画があります。ただ、去年の反省があるのであまり多くは出さず、海外でいかに次を担うブランドを作るかということに注力する年になると思います。

佐藤 なるほど。米山さんはいかがでしょうか。

米山 やはり、これからはリアル店舗とネットを連動させるという動きが強まっていくと思います。外食業界でこうした取り組みが目立っているのは、まだ『大阪王将』さんくらいだとは思いますが。居酒屋だけじゃなく、弁当やその他の取り組みで、家や会社、もっといろんなシーンで『塚田農場』を利用してもらえる提案をしていきたい。
例えば『塚田農場』では、オリジナルの「壺味噌」を生産していて、店内で売ったりもしてきましたし、現在では養鶏場で生産した卵を使ったロールケーキも作っています。そうした自社開発商品を、これからはオンラインマーケットで外販していきます。
実店舗の出店数に関しては、昨年多く出しすぎた反省があります。数よりも、200店舗を一つ一つをちゃんと作って、ブランド価値を高める。そしてその他のチャネルを開拓していくという考えです。

佐藤 今、中食や外販の売り上げ構成比は何割くらいですか?

米山 まだ数字的には全然ですね。ただ、今後どこかのタイミングではEC(eコマース)に何十億かの投資をして、この分野を開拓していく予定です。現状では、まずは商品力を上げていこうというマーケティング段階ですが。

佐藤 海外展開に関してはいかがでしょうか?

米山 今、特に中国に頻繁に赴いているのですが、例えば自国の食品に対して不信感があり、親が子供にだけは外国産の安全なものを食べさせているというような一般家庭事情がある国では、『塚田』の想いに共感してもらいやすいですし、進出する意味はあるなと感じています。

佐藤 御社のミッションが具現化できる国をさらに増やしていくと。

米山 はい。他に海外ではシンガポール、サンフランシスコ、LA、ハワイ、NYも進出します。マーケットはいくらでもあるので、あとは我々がやる意義を現地に対して探していくということです。

佐藤 世界戦略ですね。地方自治体とのコラボについてはいかがですか。

米山 そうですね、僕らを必要としていただけるのであれば。うちの会社の一番の力の源はなんといっても「地域の活性化」なので。地方に行くと、“いいもの”であっても“売れるもの”を作っていないことがしばしばあります。それを我々がマーケットインの発想でプロデュースしていくということですね。

佐藤 六次産業化のビジネスモデルですね。

米山 「六次産業」は最近よくいわれるようになりましたが、それを我々はECの四次元の世界に入ってやっていくわけだから、6×4=24で24次産業ですね。

佐藤 24次産業、面白いですね。あと、御社は最近ベンチャー企業への投資もなさっているのですかね?

米山 はい。やはり社内での商品開発だったりアイデアだったりだけでは限界があるので、お客様に上質なものを提案するための一環としてベンチャー投資もやっていますね。

佐藤 「WE ARE THE FARM」、恵比寿に続き銀座店もオープンしましたが、応援なさっているんですか?

米山 そうですね、まだ僕個人の応援段階ですが、いずれ彼らと一緒に農業をやって、塚田ブランドとコラボしてなにか出せないかなと考えたりもしています。「地産地消」や「農業」に目的を置いている企業には共感がしやすいですね。

佐藤 私も昨年から、外食は「イートグッド」で体に良く安心なものにシフトしていくべきだと提唱しています。一部上場企業がこうした提案をしてくれると嬉しいですね。

「イノベーション」のポイントは何か?

佐藤 では、次に、お二人に“外食産業におけるイノベーション”についてお聞きしたいと思います。
外食産業のマーケットは、1997年の29兆円をピークに、現在23兆円台まで縮小しています。今後は人口減少に伴い、ますますパイが減っていくと考えられます。インバウンドを考慮してもかなり厳しい。こんな状況のなかで、新しい業態を作って戦っても、消耗戦のスパイラルで終わってしまうのではないか。一方、例えばエー・ピーカンパニーさんはイノベーションに成功し、上場まで駆け上がった代表的な成功例の一つといえるのではないでしょうか。そこについてお聞きしたいと思います。

米山 そうですね、ぼくはいつも、“細かいイノベーション”を日々やっていかなくてはと考えています。大きなイノベーションは、会社全体で長期的に取り組んでいかなくてはならない。バランス感覚も重要ですね。例えば、安売り業態が流行った、専門店が流行ったという時、全体の7割の消費者がそちらに流れたとして、9割の競合がそこで一斉にパイを分かち合う状況になる。で、残りの3割くらいの消費者はそことは全然違う方向を向いていると。その場合、僕は競合1割と、3割の消費者を競争したほうが絶対にいいと思うわけです。そのあたりの読みは絶対に大事ですね。
例えばセブンイレブンは、高額な「セブンプレミアム商品」を開発して、安売りなしでも支持され続けている。イノベーションにおいては、ああいった視点が問われていると思います。

佐藤 なるほど。マスじゃなくてニッチの部分から入っていって、そこをハブにしていく。ある意味、お客さんの期待を裏切る形で新しいものが誕生していくのだと。

米山 飲食店の場合、業態とかブランドを作った時点でスタートが既にゴールみたいな感じがありますが、そうではなくて、いざお店がオープンしてから、いかにブランドを磨いていくかに目を向けないといけない。
目新しいブランドや商品開発をする方がもちろん楽しいんですが、そこは2割くらいに置いておいて、残りの8割は今あるものを磨き続けるということが大事かな、という風に思います。

佐藤 よくわかりました。稲本さんはどうですか?“イノベーション”は今日の大きなテーマなのですが。

稲本
 パイが縮小傾向にあるというのは、僕らが店を始めた20年くらい前から言われていたことで、その間の20年間、僕らはただやってきただけです。で、パイは縮小していくんですが、依然一人の顧客に対して3食×365日で約1000食分、チャンスがあるわけです。
今、世の中の欲求が所有からシェアすることに移ってきているので、ものを欲しくない人が増えています。車一つとっても、水素、電気、いろいろ開発されてきてはいますが、そこに対して強い購買意欲を持たせるのはなかなか難しい。それに対し、飲食はやはり所有じゃなく“シェア”していだくというのが仕事の一番のコアなところです。
例えお一人様だったとしても、スタッフとお客様がその時間をシェアすることで「ああこのお店に来てよかった」と思っていただく。よくこうぞうさんもお一人で食べ歩きにいかれてるじゃないですか(笑)。でも、本当は一人じゃなくて、スタッフや他のお客様とそのお店の空気をシェアしてるんだとおもいます。そういう意味では、飲食業というのは今後これまで以上に大切な文化になっていきうると思います。
一見、数字的にはシュリンクしていくと思われがちですが、感覚論では外食産業にはまだまだリアルな可能性があると思う。モチベーションや内容に関してはイノベーションしていかなくてはいけない部分は多々ありますが、いろいろな問題はあっても、業界全体としてはパイが縮小傾向にあるとは全然思っていませんね。

佐藤 新しい食事体験、シーンやシチュエーションを提案していけということですね。
では次の質問です。お二人はライフスタイルも非常にユニークで、パワフルな生き方を貫いていらっしゃいます。経営者としての自分と、もう一人の自分がやりたいこと、両方を貫くというスタイルをどう整合していらっしゃるのですか。

米山 今朝も4時まで社員と飲んでたんですが(笑)。飲食業界では、まじめにコツコツ働いているだけでは味のある提案ができないので、やっぱり外に出て飲んだり遊んだりしてマーケットの空気に触れていないと、結局つまらないものになってしまうと思うんですよね。
しっかり自己管理したうえで楽しく遊んでそれをお客様に還元していかないといけない。あ、そういえば僕ゴルフ止めたんですよ。

佐藤 止めた!?

米山 ハイ。ゴルフしてる場合じゃないなと思って。まず今年は既存店をちゃんとしたい。でも中国だったりアメリカだったり、海外に進出する意味も感じていて、あれもこれもやってたら全部中途半端になるなと。で考えたんです。あ、月~金まで日本をしっかりやって、金曜の夜に香港、北京に向かえば土・日は現地にいられるぞと。要するに休まなければいいんだと思いまして、年始報告で社員達にも今年はほぼ休まずに仕事に向き合うと伝えました。

佐藤 これで株価も安心ですね。安心しました!(笑)
稲本さんは業界を代表するような遊び人に見えますが…(笑)

稲本 僕はそうですね、遊び人なんですけど(笑)、好きなことを突き詰めたい。やることとやらないことを徹底して分けています。海外についても、ハワイに集中しているのは、経済面でどうかというより、僕がそこで店をやりたいと思うかどうか、から始まっているんです。中国、ASEAN、散々世界中を旅したうえで、スタッフを送り、働いてもらうという意味でも結局ハワイがいいなと思っているんです。
日本の経営者は、株価だとか店舗数、売り上げ高、そういったもので判断されがちです。もちろん売り上げも大事なんですが、海外の経営者って、アパレルだったりレストランビジネスだったり、そのライフスタイルが支持されて注目されることが多い。その人がどんな人で、どんな風に生きてきて、何を提案しているのかがジャッジされるわけです。僕が選択した経営者像というのはそういう生き方であり、そのライフスタイルを社員に話しかけていく事で、新しい生き方、経営スタイル、業態の提案ができないだろうかということですね。

佐藤 ライフスタイルを経営にフィードバックしていくということですね。

稲本 『アロハテーブル』とかナチュラル業態、ベジ―業態なんかはまさしくその流れですね。まあヘルシー=ダイレクトに売り上げにはつながらないという難しさは感じているので、その辺はもう一段階トライしていかないといけないですが。

佐藤 稲本さんの場合は「稲本健一」というブランディングですよね。経営者ももっと自分を出して好きなことをやって、日本の経済を大きくしていくべきで、稲本さんはその見本ですね。

稲本 そうなれるようにがんばります。

注目している飲食店経営者、尊敬する経営者は?

佐藤 では、お二人が注目している経営者はいますか。

稲本
 経営者だけでなくて、スタッフの中にも、「ああこの人は素晴らしいな」と感化されることはありますね。
際コーポレーションの中島社長は20年前に知り合って、いまだトップランナーのままです。僕と比べものにならないくらい熱いし、趣味人でもある。そこから生まれてくるエネルギーは素晴らしいなと思います。また、鳥貴族の大倉社長は、とにかくずっとブレずに同じことをメッセージとして持ち続けている。そのスタイルにも感銘を受けますね。
ただ、他の業界に比べて飲食の経営者がすごいと思うのは、業界全体をよくしていこうと意識がとても強い。ディスクローズが激しいというか、「この研修すごくよかったから使ってみたら?」みたいになんでも分かち合うんですね。他の業界では、例えば僕と米山社長が一緒に飲んでいろんな話をするみたいなことってあんまりないんです。ライバルに自社の業容を見せるようなことはあまりしない。
それに加えて、関係者数という意味では飲食業は一番大きな業界です。この業界がよくなるということは日本がよくなるということ。そんな業界にいる経営者だというだけで、基本的には僕はずべての人をリスペクトします。

米山 まあ、稲本さんのキャラクターは、凄すぎて僕には真似しようと思っても到底できないですね。他にもダイヤモンドダイニングの松村社長とか、尊敬する方はたくさんいます。初めてお会いした頃、際コーポレーションの中島さんの自由さにも憧れましたね。ロールスロイスにお姉ちゃん乗せて吉野家に行く、みたいな(笑)。「なんだこのかっこよさは!」と思ったものです。

佐藤 では最後に、後輩の経営者にメッセージをお願いします。

米山 さっき来るときに気づいたんですが、エー・ピーカンパニーは今年15周年なんです。ちょうど今、『塚田』というブランドが本当に世の中に必要とされていくのかが問われている時で、日々真剣に向き合っている所です。テクニカル的に一瞬の繁盛店を作ることは比較的容易ですが、ブームやトレンドは飽きられるという宿命にある。継続的に必要とされるための自分たちの強みというのは何なのか、そこが一番重要です。お互いに、もっと世の中をイノベーションしていくために、様々な価値を提案できるような業態でいたいね、と思っています。

佐藤 繁盛店を真似しあうゲームはやめたほうがいいですね。いかにこれまでにないものや、違うことをやるかです。

米山 そうですね。でも、たまに山内農場さんに行くと…

稲本 ブラッシュアップしてるよね(笑)
会場 (笑)

米山 はい。なかなか勉強になります。

佐藤 稲本さんはいかがですか。

稲本 はい。時代には常にリードしていく業界があります。今、例えばフェイスブック、ツイッター、インスタグラム、こうしたSNSで食の情報を見ない日はないですよね。これはすごいことです。ファッション業界の方々も、ブランドのカフェを作ったり、続々飲食部門に入ってきている。今の時代を牽引しているのは間違いなく飲食業界です。皆さんが今やっている飲食業という仕事が世の中をどれくらい引っ張っているかということを常に胸に秘めて仕事をしてほしいし、特に若い経営者の方には、それを世界に広げていくということを意識してほしい。
どこの国にも当然難しいことはあります。でも「この国だ!」と感じたらぜひ挑戦してほしい。世界中の人が僕達のサービスを必要としています。

佐藤 素晴らしいメッセージを有難うございます。お二人とも、引き続き業界の見本として頑張ってください。有難うございました。

(構成:中村結)

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