新・編集長コラム

ショットで乾杯、シャンパンを開ける、スタッフに1杯おごる……非日常のパーティドリンクが外食ならではの体験価値に?

最近の居酒屋ドリンクメニューに変化が起きています。テキーラなどのショット酒やシャンパンボトル、スタッフへのごちそうドリンク......このような“イベント感”や“パーティ感”のあるドリンクが居酒屋のメニュー表にラインナップされるようになっています。

PROFILE

大関 まなみ

大関 まなみ
1988年栃木県生まれ。東北大学卒業後、教育系出版社や飲食業界系出版社を経て、2019年3月よりフードスタジアム編集長に就任。年間約300の飲食店を視察、100軒を取材する。


「クライナー」を端にしたネオショットドリンクが流行

仲間と一緒に高アルコールの酒をショットグラスで一気あおる遊びは、もともとはクラブ文化として親しまれていました。それがクラブではない普通の居酒屋にも登場し始めています。押すとテキーラが出てくる「テキーラベル」などの悪ふざけアイテム(?)を置く居酒屋もよく見かけるようになりました。

三軒茶屋「とととりとん」で見かけた人形。お腹を押すとテキーラが出てきてしまう

最近のショットブームの火付け役は数年前に日本に上陸したドイツ発祥のミニチュアボトル入りリキュールの「クライナー」でしょう。カラフルで見た目にもかわいいパッケージの同商品は「ネクストパリピ酒」とも呼ばれ、フルーツ系やクリーム系など多数の味バリエーションがある、1本20mlほどの小さなリキュールボトルです。これを仲間と一緒にショットのようにあおって楽しむことが若者の中で数年前にブームとなり、今も売上を伸ばしているようです。従来のショットはテキーラやコカレロなど正直きつい飲み口のものが多かったですが、この「クライナー」は口当たりよいカクテル風で比較的飲みやすい。さらに味のバリエーションがあることで、「多様性の世代」と言われるZ世代にとって自分の好みが選べることが今の若者にウケた要因となっています。

「クライナー」を端に、ドリンクにこだわりのある店では、独自のショット用カクテルを出す店も出てきています。既製品のショットではなく、バーテンダーが味わいに趣向を凝らしたカクテルを用意。これをショットのように乾杯して酒席を楽しもう、と提案しています。

お祝いシャンパン、「1杯どうぞ」も大衆化

ショットと同時に、居酒屋やシャンパンボトルを開けるシーンも増えてきました。これももともと夜のお店の文化からきているもので、以前は店の関係者がオープンのご祝儀代わりに開けることがほとんどで、店は身内のためにこっそり冷蔵庫で冷やしていたものでした。ところが最近ではメニュー表に堂々と「シャンパンボトル」を商品として記載するようになっています。店の周年やスタッフの誕生日など、ちょっとしたお祝いごとやテンションが上がった際に常連客が開けるようです。

同様に「スタッフに1杯」も、最近ではメニュー表にわざわざ記載する店も出てきました。こちらも、酒場慣れした玄人客がスタッフにこっそり「1杯どうですか?」と耳打ちして乾杯するようなものでしたが、この行為もどんどん一般的になってきました。以前はあくまでお客からの厚意として「1杯どうぞ」だったものが、メニュー表に書く=店側から「1杯くれ」というアピールをし始めるようになったのは一つの変化だなぁと思います。

外食でしかできない体験、高利益率でお客と店の双方にメリット?

こうした“イベント感”や“パーティ感”のあるドリンクが増えたのは、コロナ禍以降、外食でしか体験できないことが重視されるようになったからでしょう。

ショットで乾杯したりシャンパンボトルを開けたりスタッフと乾杯したりといった行為は、外食だからこその楽しい体験。家ではできない一体感や高揚感が味わえます。

こうしたドリンクは店側からしても圧倒的に利益率がよく、売っていきたいアイテムであることは間違いありません。昨今のコスト高で各飲食店はどう利益を上げるか苦心する中でこういった方策を打ち出すのも一つの選択肢となっているのかもしれません。

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