Z世代に見られる4つの消費行動の価値観
おおよそ1996年から2012年に生まれた現在の11~27歳、いわゆる「Z世代」。これからの消費の中心であり、外食のメイン顧客、酒の飲み手となっていく層だ。このZ世代にどうアプローチするかが飲食業界にとっても要となってくる。もちろん、人それぞれ趣味嗜好は異なり、世代でひとくくりにするのは無粋だと承知の上だが、彼らが生まれ育った時代背景や環境から、大まかな傾向というものは存在する。その性質を理解したうえでアプローチしていくことは大切だ。
今回、長田麻衣さんの「SHIBUYA109式 Z世代マーケティング」(プレジデント社)という書籍を参考にした。約5年で一万人のZ世代に地道なヒアリングを行い、それをもとにした分析は示唆に富んだ内容で、ぜひ読んでいただきたい一冊だ。
同書によると、Z世代の消費行動における4つの価値観として、「体験消費」「メリハリ消費」「応援消費」「失敗したくない消費」を挙げている。特に「メリハリ消費」「失敗したくない消費」は飲食店の目線で見たときにも非常にうなずけるものだった。
普段は節約して、ハレの日の外食でお金を使う若者たち
最近、飲食店経営者から話を聞くと、「今の若い人はお金を使わない」と「今の若い人は気に入ってくれたら思った以上にお金を使ってくれる」の両方が聞こえてくる。結局は世代の共通項がなく「人それぞれ」「店による」になってしまうのか?と思っていたところ、この「メリハリ消費」という言葉ですべて説明ができる。
「メリハリ消費」とは、自分の興味あることにはお金と時間を惜しまない代わりに、それ以外のことは徹底的に節約するというもの。すべてを効率化したいというわけではなく、「メリ(滅り)=お金や時間をかけない部分」と「ハリ(張り)=お金や時間をかける部分」の差が明確だということだ。
興味は人それぞれで、例えば応援しているアイドルの「推し活」や、漫画・アニメ、ファッション、スポーツ、アウトドアなど様々だ。もちろんその中には外食を強い興味の対象としている人も一定数いる。
外食が好きで、外食にしっかりお金をかける人は、普段からコツコツお金を貯めて、たまのハレの日に、好きな店で好きなお酒や料理を楽しんでいる、という姿が浮かんでくる。以前の記事で飲食店オーナーから「うちは8000円のコースを用意していますが、アラカルト利用もできて、それなら単価4000~5000円で済む。だけどわざわざ8000円のコースを注文する20代のお客様がたくさんいて驚いているし、お酒もしっかり飲むし詳しい」という話があった。決して今の若者はたくさんお金を持っているということではなく(むしろ昔に比べて若者はお金を持っていない)、この「メリハリ消費」の「ハリ」を行っているということになる。
Z世代に限らず進む「外食の二極化」が、単価の差を広げる
逆に、関心ごとが外食以外にある人にとっては、外食は節約の対象となる。なるべくお金を使わず、「コスパよく」(これもZ世代が重視するポイントだ)外食をしたいのである。結果、飲食店で若者は店が想定しているほどの単価を使わずに帰っていくという事象が起こっている。
Z世代に限らず、幅広い世代で外食の二極化が進んでいると私は考える。コロナ禍の緊急事態宣言に伴う休業や時短の要請で人々の外食が制限されたことで、各人の外食に対するスタンスが明確になった。外食をしなくなったことで、改めて「外食っていいな!」と外食の価値を再確認した人、一方で「外食しなくても平気だな」と気づいてしまった人。この差が外食で使う金額になって表れている。それを受けてか、2022年は今までは4000円程度の店を展開していたグループが、8000円や1万円超のアッパーな業態にチャレンジするケースも増加。その一方で、2000円ほどの安価な価格帯の居酒屋チェーンが爆発的に店舗数を伸ばしている例もある。
「外食に興味があり、しっかりとお金を使う層」を取り込んでいくためには、「本当に外食が好きな人」に刺さるアプローチで、「普段は節約してでも行きたい、特別なお店」を作っていくことが求められている。後編では、そんなZ世代に選ばれるために参考にしたい、「失敗したくない消費」について考察する。
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