コラム

“外食大再編”時代が到来する!

今週に入って、ロイヤルホールディングスによる洋風居酒屋「HUB」を展開するハブの株式33%取得、天丼チェーン「てんや」を展開するテンコーポレーションを完全子会社化するというニュースが流れた。2010年はデフレ不況が進む中、外食業界再編"が大きなテーマに浮上しそうだ。"

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


M&Aを中心とする外食の“業界再編”が活発に起きたのは2006年から2007年初頭にかけて。2004年のBSE問題を機に外食業界が将来に対する危機意識を強め、経営基盤の強化、業態の多様化、や、食材仕入れリスクの分散化、あるいは創業者の高齢化による事業承継ニーズといった要因から、M&Aが増えた。この間のM&Aは、すかいらーくによる小僧寿し本部の子会社化、吉野家ディー・アンド・シーによる讃岐うどんチェーンのはなまるの子会社化、ゼンショーによるカッパ・クリエイト、サンデーサン、あきんどスシローへの資本参加、ジー・コミュニケーションによる焼肉屋さかいの子会社化、コロワイドグループによる平成フードサービス、贔屓屋、がんこ炎の買収など、まさに“M&A”ラッシュだった。これらは概ね、大手外食チェーンや新興ベンチャー企業による“強い者が弱い者を傘下におさめる”企業買収型の再編だったが、その後、コーヒーチェーンの雄・ドトールコーヒーと、スパゲティチェーン「洋麺屋五右衛門」などを経営する日本レストランシステムが、“経営統合”するという動きが起きた。業界では「強い者同士が手を組む“強者連合”型再編が始まった」といわれた。その一方で、すかいらーくやレインズインターナショナルを傘下にもつレックスホールディングなどのMBOによる“企業防衛”の動きも進む。外資系ファンドが外食業界に参入してきたこともこうした動きの背景にあった。しかし、2008年9月の“リーマンショック”を契機に、それまでの流れが一変する。水を含んで膨らんでいたスポンジのような“外食投機マネー”が急速に萎んでしまうのだ。さらに“リーマン不況”による市場の冷え込みが外食企業の経営を直撃した。そして2009年に入り、デフレ不況の追い討ちもあり、M&A専門会社や成長企業には“売り案件”の持込みが急増する。“デフレ不況型再編”の始まりである。M&Aといえば、上場大手チェーンの専売特許だったが、中堅、中小の成長企業にも“売り案件”が流れ、業界再編の表舞台に登場するケースも出てきた。ダイヤモンドダイニングによるフードスコープの買収、「ステーキ&ハンバーグけん」で急成長しているエムグラントフードサービスによる「ふらんす亭」経営受託など、“サードG世代”の経営者たちもM&Aの買い手側の主役を演じる時代が到来した。ダイヤモンドダイニングの松村厚久社長は言う。「ウチの経営拡大戦略としてM&Aは最優先に置いています。来期(2011年2月期)には、1~2件のM&Aを実施したい」。“デフレ不況型再編”の次は、“世代交代型再編”が来るのかもしれない。 

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