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コラム

“ミシュラン目線”と“B級グルメブーム”

外食不況の中で、3年目となる「ミシュランガイド東京2010」が発売。今回は新たに、焼き鳥、居酒屋、串揚げ店も紹介されたことから、「ミシュランも庶民派に?」と話題を呼んでいるが...。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


ミシュラン掲載店のうち7割を占める日本料理店の中で、従来のふぐ、そば、すきやき、寿司、天ぷら、鉄板焼、うなぎなどのカテゴリーに加えて、居酒屋、串揚げ、焼き鳥が新たに加わった。しかし、その詳細を見てみると、居酒屋1店、串揚げ1店、焼き鳥4店のみで、いずれも一つ星どまり。そのうち、唯一、居酒屋ジャンルで星を獲得した「六角」は、今回3つ星に昇格した「幸村」の姉妹店で、当初は幸村のお客限定で営業していた隠れ家バーだったという。一般のお客が考える「居酒屋」とは程遠いとの声は、各メディアからも上がっている。その他、串揚げの「六覚燈」(銀座)も、客単価1万円を軽く超える高額店。ミシュランの審査員と日本の一般客との感覚の差が、はっきりと露呈する形となった。
一方、焼き鳥では「とり喜」(錦糸町)、「よし鳥」(東五反田)、「バードランド」(銀座)、「たかはし」(西五反田)の4店が選ばれた。有楽町の「バードランド」には、ミシュランガイド総責任者のジャン=リュック・ナレ氏が訪問し、その様子が多くのテレビで放送された。ミシュランが“庶民派”の飲食店にも目を向けているということのアピールとしては十分過ぎる演出だった。しかし、焼き鳥といっても、これらの店も紛れもなく高額店の部類に入る。いいワインを選べば、客単価は1万を軽く超えるだろう。結局、どう“庶民派”を装っても、ミシュランは“高額店のぐるなび”であり、外国人、観光客のガイドの域を出ていない。「日本の一般客」を相手に戦っている外食ビジネスのリアルな世界とは大きくかけ離れていると言えよう。
これからデフレが本格化すれば、ミシュランで騒いでいる暇などない。「日本の一般客」はますます“低価格志向”を強める。そうした中で、最近“B級グルメ”に関する記事を見ない日がないほど、ブームが続いている。ご当地のB級グルメの人気を競う「B-1グランプリ」(愛Bリーグ主催)が火を付けたこのブームも、いまや地方経済活性化の“救世主”になっている。気になるのは、行政が補助金や税金を投じて無理やりB級グルメイベントを開催したりしていること。“地域プロデューサー”という名のブローカーたちも暗躍し始めている。こうした“俄か外食ビジネスブローカー”たちはブームの中でマネーゲームを繰り広げるだけ。もちろん地域起こしを目的とした真面目なボランティアもいるのだろうが、マスメディアはそのあたりを見極めて取り上げてほしい。いずれにしても、“ミシュラン目線”も“B級グルメブーム”もリアルマーケットとは乖離した流行現象と割り切るべきだろう。

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