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コラム

サードG世代よ、アジアを目指せ!

私が現地出店を手伝っている居酒屋オープニング企画の打ち合わせをかねて、香港における日本食レストランの動向を視察してきた。リーマンショックから1年、香港でアジア進出の将来を考えてみた。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


まず驚いたのは、普通の香港人が「和民」や「大戸屋」などの“和定食”に昼も夜も行列をつくっている風景でした。もう完全に“庶民の日常的な外食”として、日本食レストランが定着していました。香港は東京の半分ぐらいの面積に700万人が暮らします。加えて国際金融・貿易都市ですから、世界から来た現地企業の駐在員が都心に住み、中華グルメやマカオギャンブルを求めて観光客も常に溢れている。成功している日本食レストランは、駐在員相手や観光客相手ではありません。そうした客目当てに、「なんとなく当たるだろう」と思って進出してきた日本の高級寿司店がありましたが、閑古鳥が鳴いていました。一方、香港人の「ちょっとリッチな外食を楽しもう」という層をターゲットにした、とんかつ業態「とん吉」(ポッカコーポレーション)は凄まじい人気でした。「とんかつ定食」が2,000円です。普通、1,000円以内で外食を済ませる香港OLやサラリーマンが群がっているのです。目から鱗でした。

案内してもらった現地の飲食コンサルティング「メリットリンク社」の関口さんによると、「いま香港人は、新しい業態の日本食レストランに目がありません。とんかつ業態のほか、うどん、焼き鳥、炉端焼き、最近東京で流行っている“浜焼き”などもウケるに違いありません」とのこと。「和民」「大戸屋」などのチェーン店から、東京マーケット同様、専門店や個店的な日本食レストランが求められているという。香港人はトレンドにも敏感で、日本食新業態の店がオープンすると現地メディアの取材が必ず入り、それを読んだグルメ族がオープンに押し寄せるらしい。最近では、9月にオープンした「稲庭うどん 佐藤養助」がそのパターンで大ブレークした。私が手伝った「博多道場」(東京レストランツファクトリー)は12月15日オープン予定。香港で初めて“魚居酒屋”業態「魚や一丁」のチェーン化に成功し、現地で“日本食レストラントレンドの仕掛け人”と言われている関口さんが、「もつ鍋」「串焼き」「九州料理」は絶対イケると太鼓判を押す。果たして、どうか…。ただ、香港でも、「なんでもあり」の旧型チェーンから新しい専門業態へのシフトが起こりつつある。日本で多店舗展開していなくても、業態力があれば進出のチャンスといえよう。

香港は上海、シンガポール、タイなど、日本食レストラン人気の強いアジア諸国への拠点である。外食がインフラ産業であり、味に煩い香港人の評価を得れば、他のアジア諸都市でも勝てるのではないか。上海はじめ中国本土以外のアジア地域で、すでに数年前から日本食レストランの進出サポートを行なってきたのがミュープランニング&オペレーターズの吉本隆彦社長である。吉本さんは、グローバルダイニングの長谷川さんや際の中島武さんと並ぶ新外食”第一世代のリーダーの一人だ。いま、シンガポール、香港を拠点に、外食企業のアジア進出や現地ディベロッパーからの依頼で商業施設開発や飲食プロデュースにビジネスを集中している。昨年、ある雑誌で吉本さんにインタビューしたが、その際、今の厳しい外食を取り巻く環境について、示唆に富むいろいろな話を聞かせてもらった。“第二世代”“第三世代”に対する評価も面白かった。時代の軸は大きく動いている。今が10年、20年単位の転換期にあることは、吉本さんの話を聞いて、よくわかった。「東京、いや日本の外食は飽和状態にある。小さなパイの中だけで戦っても、それは消耗戦や主役の入れ替わりにすぎない。いまこそ、外食企業は海外に出るべきだ」と真剣に唱える吉本さんの姿が印象的だった。それは、重大な警鐘であるに違いない。「大きな時代の流れを読むこと」。歴史的名大転換期の今、若い外食経営者こそ、アジアに、そして世界に出るべきだ。
 

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