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コラム

「羊肉ブーム」は来るか?

2005年、一気にブームが巻き起こり、そして一瞬で去った東京ジンギスカンブームから10年、肉自体のヘルシーさとワインの定着で再度注目の兆しを見せる「羊肉」。ひつじ年の2015年、肉業態ブーム最高潮のなかで、無視はできないトレンドアイテムとなってきた。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


肉業態が大ブーム。赤身から、熟成肉、塊肉(ブロック肉)の量り売り、部位の1枚からの提供、立ち食いステーキ、Tボーンステーキ、ローストビーフ丼、シェラスコに至るまで、ありとあらゆる業態が人気化している牛肉。豚肉も黒豚にしゃぶしゃぶから串焼き、シャルキトリーまで相変わらずの人気。鶏肉も大衆焼き鳥からアッパーな焼き鳥業態、そしてローストチキンもブレーク中。ここ2~3年ぐらいで牛、豚、鶏に続き、「馬肉」も協会などができ、大きなマーケットに発展した。居酒屋や大衆酒場で普通に「馬刺し」が食べられる時代になった。そして、鹿、猪、雉、熊、うさぎなどの「ジビエ肉」も昨年あたりからじわじわと人気が出てきて、チェーンを含む専門店も登場。生産者や流通業者が仕掛ける協会も次々に設立されている。そうした史上空前の肉業態ブームのなかで、「羊肉」だけ取り残されているように静かな動きにとどまっている。

とはいえ、「羊肉」を売りにする人気店が消えたわけではない。2005~2006年のブーム時に200軒以上あった東京都内のジンギスカン専門店はたしかにそのほとんどが姿を消したが、西新宿の「だるまや」、六本木の「だるま」、中目黒の「くろひつじ本店」、恵比寿「club子羊」などはいまだに予約が困難なほどだ。ワイン人気とともに「ラムチョップ」の専門店やそれを売りにするワインバル、ビストロも増えた。メイン商品にはなりにくいが、サブキラーコンテンツとして「ラムチョップ」人気はじわじわと広がっている。「羊肉」(主流は生後1年未満のラム肉)が肉業態トレンドの表舞台に出てきても、いまのマーケットならなんら違和感はない。むしろ、その栄養価やヘルシーさは高く評価されているだけに、再び人気に火が点く素地は大きいと言えるのだ。ただ、飲食業界ではやはり、ジンギスカンブームが一過性に終わった「2006年ショック」のトラウマが残っているために、なかなか手を出しづらいということがある。

しかし、新しく「羊肉」業態を打ち出す企業も出てきた。昨年8月、池袋にオープンした「東京ジンギスカン」。独特のジンギスカン鍋で生ラムを焼くスタイルだ。初心者にも馴染みやすいと、クセのない特上の穀物ラムもある。運営は「東京純豆腐」の展開で当たったブラスアンドカンパニー(東京都豊島区、代表取締役:坂入洋平氏)。同社は御茶ノ水の商業施設「WATERRAS」にもラム肉料理が楽しめる「羊肉酒場0,19(ラムミートバル ゼロコンマイチキュー)」という肉バルをオープンさせた。同店の売りであるラム肉料理の中でも一押しは、ラムの串焼きだ。ヘルシーなラム肉を大胆に串焼きにして提供する。「ラム肩ロース串」(230円)や「ラムもも串」(230円)、特選3種の肉の塊と野菜というボリューム満点の盛合せ串「大人BBQ」(1480円)などオーダー率が高く人気のメニューだ。

また、店で挽いた新鮮なラム肉ミンチを使った「鉄板ラムバーグ」(880円)は、肉の濃厚な旨味が味わえる同店自信の一品で、ランチ、ディナータイム共に人気がある。コチュジャンをベースに秘伝のソースでじっくり煮込んだ絶品の「ラムとろ煮」(480円)もぜひ注文したい一品だ。池袋に厚みのある質の高い生ラムが話題の「ジンギスカン野口家」もオープンした。また、神田にはリニュールオープンで注目される神田バル横丁(元神田ミートセンター)に、六本木「だるま」の神田店が出店する。三軒茶屋にオープンした「ラム&パクチー salad days」は店名から判るように、パクチーとラム、話題の食材をコラボさせた新しいラム料理の店だ。こうしたキラーコンテンツを明確に打ち出したカジュアルなスタイルの羊肉業態が続々とオープンしている。2015年、ひつじ年。後から振り返ると「第二次羊肉ブーム元年」といわれる年になるかもしれない。

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