デモ騒ぎが一服して、平静を取り戻しつつあるバンコク。相変わらず、日本の飲食企業、飲食店の出店意欲は旺盛だ。商業施設でいえば、バンコク一集客力のある商業施設サイアムパラゴンのフードコートに日系コンテンツが続々とオープン。しかもローカル香川県のコンテンツが二件、いい場所に姿を現した。「宮武讃岐うどん」と「四国丸亀平岡餃子」である。駅直結の商業施設内のレストランやフードコートは“鉄板”であるが、なかなか物件が出ない。ただ、施設側も常に新規コンテンツを探しており、日系のテナントには集客力があることから、不振な既存店舗があれば追い出し、入れ替えをはかっているので、小まめな情報収集が必要となるだろう。バンコクの百貨店系ディベロッパーグループは、「セントラル」と「ザ・モール」の二強が鎬を削っている。これから注目されるエリアはBTSアソーク駅とトンロー駅の間のプロンポン駅に直結するモール系の「エンポリアム2」。
BTSチットロム駅直結の新しい商業施設「mercury ville」には、ゼットン出身の佐藤信之氏の「エポック」がリーシングした日系飲食店が2店舗出店した。「里のうどん」と「デキシーダイナー モクオラ」。かなり女性客を意識した環境のコミュニティーショッピングセンター(地域住民や近隣ビスネスマンが通う地域密着型SC)。中小型の商業施設だが、「今後バンコクではこうしたコミュニティーSCが増えるでしょう。そこが出店の狙い目だと思います」(エポック・吉田孝敬副社長)という意見もある。駅直結あるいは駅前がもちろん有利であることは違いないが、タクシーや車でしか行けない高級住宅街の一角が開発され、コミュニティSCが建つ動きも増えている。日本人が集まるトンロー街に新しくオープンした「日本村モール」は、たいへん注目を集めたプロジェクトだが、「梅の花」「つぼ八」を除いては苦戦が伝えられる。ある程度集客はあるものの、家賃の高さや物件オーナー側の営業に対する姿勢がネックとなっているようだ。トンローエリアは、商業施設系物件よりも、「てっぺん」のような一軒家系の物件をじっくりと育てるほうが面白いのではないか。リニューアルした「トンロー横丁」も日本コンテンツ発信基地として定着しそうだ。
バンコク中心街を東西に走るスクンビット通りを挟んで、南側にも高級住宅街がある。そのロードサイドに固まって3つの商業施設がある。「日本街」「Kビレッジ」「Aスクエア」だ。なかでも注目されているのが「Kビレッジ」。ここにはアジアで最もワインを売るといわれる「ワインコネクション」がある。月商4500万円とか。「ワインコネクション」の隣に昨年暮れにオープンしたのが沖縄の繁盛店みたのクリエイトの「目利きの銀次」。オープンしてから二度訪問したが、田野治樹社長が「まだまだ出来てません」と言うものの、その繁盛ぶりは店の雰囲気から察することができた。相良店長によると、月商1500万目標でマネジメントを固めている段階とのこと。目玉の原価100%の刺身桶盛り(299バーツ)のクオリティも高い。「Aスクエア」には最近、横丁競演スタイルの「ラーメンキング」がオープン。まずまずのスタートを切っている。「Kビレッジ」と「Aスクエア」で“KAエリア”。この周辺もこれからの出店場所としては面白い。「Aスクエア」の奥には日系のスーパー銭湯「湯の森」もあり、近くにまたモールの建設計画が噂させていた。
バンコクの飲食ビジネス成功のカギは、立地、物件、パートナー選びにかかっているとされる。商業施設か街場か、ビル型物件か一軒家型か。街場の物件は大家の腹一つでどうにでもなるというリスクもある。そして株式の51%の名義をもってもらうパートナー選び。FC展開を前提にした組み方も、パートナーを間違えると大きな失敗をすることになる。コントロールがきかなくなり、メニューや値付けが勝手にかわったりすことは日常茶飯事とか。オーバーストア状態になりつつある居酒屋戦争の行方も気になるところ。「てっぺん」、「えびす参」、「筑前屋」、「つぼ八」と続々と新しい店が出店。それを迎え撃つ「なぎ屋」、「しゃかりき」、「寅次郎」などの巻き返し。現地邦人や視察に訪れる日本人は減ることはないだろうが、日本人相手だけでは生き残れない。もう、そんな時代が来ているようだ。どこで差別化し、突き抜けるか、それを真剣に考えなければならないと思う。これからは「質の戦い」が始まるのだ。
次回は、ベトナム・ホーチミンの最新情報をレポートする。