2020年のオリンピックに向けて、東京は大きく変わる。選手村や国際競技場、観光客受け入れのためのホテルの建設、それに伴う道路や交通体系の整備などのハードやインフラ面だけでなく、滝川クリステルがプレゼンで強調した「おもてなし」の精神、このソフト面にも様々な取り組みは必要になるだろう。飲食業界にとっては、メニューの外国語対応、スタッフの語学教育、サービスのレベルアップ、ブラッシュアップなどの対応が迫られる。オリンピックを7年後の2週間のイベントと考えるのではなく、これから7年間は世界から「TOKYO」という国際都市への注目が集まると捉えるべきであろう。猪瀬都知事は、「東京を24時時間都市にする。これからは、スポーツ、アート、レストランでの食事など、人々のライフスタイルを変えていくことによって、GDPを伸ばしてくという発想が必要。オリンピックはその起爆剤になる」と語っている。そんなライフスタイルの変化の波を受けて、レストランビジネス、飲食店のマネジメント、オペレーションも、これから「サービスの高度化」が大きなテーマになるだろう。それはなにも高級ディナーレストランだけの課題ではなく、カジュアルレストラン、居酒屋やバル、カフェ、食堂に至るまで、すべての飲食シーンに求められることであろう。そうしたなかで、改めて見直したいのはグローバルダイニング卒業生たちの活躍だ。私は、二年ほど前から、続々と誕生してきたグローバル独立組の動向を追ってきた。フードスタジアムのヘッドライン記事でも彼らのニューオープン取材を続けてきた。「アガリコ」の大林芳彰氏をはじめ、「Dai」の望月大輔氏、「ゴッチス」の青山剛平氏、「東京バル アジト」の高瀬篤志氏、「クラブハウス エニ」の奥澤友紀氏、「SALU」の猿田伸幸氏、「ビストロハッチ」に高島巨房氏、「ビストロ ジル」の吉田裕司氏など多彩。彼らはそんなに店づくりにカネをかけるわけでもなく、好立地に出店するわけでもないのに、オープンしてたちまち繁盛店をつくりあげてしまう。そして多店舗化にも意欲的だ。その強さのポイントは、やはりオーナーたちがグローバルダイニング時代に体得したホスピタリティであろう。目の前のお客さんを喜ばせるのはもちろん、リコグニション(お客さんの顔と名前を覚える)、アンティシペーション(お客さんの要望、行動を先に気付いて対応する)のレベルが高い。どんなに混んでいても、数回しか店に訪れていなくても、扉を開けようとしたとたん、「○○さん、こんにちは!」と声がかかる。店に入ろうかどうか迷っていると、スタッフが外に飛び出してくる。2杯目のドリンクを頼みたいと思うより先に、「お代わりいかがでしょうか?」とくる。客単価3000円ぐらいの店で、彼らはそんな高度なサービスをフレンドリーにこなす。いまこそ、グローバルダイニング卒業生たちに学ぶべきではないだろうか
コラム
2013.09.12
「おもてなしの時代」をチャンスに!
2020年オリンピック・パラリンピック招致成功で、東京は国際都市として今後7年間、世界から注目を浴びることになる。そのキーワードの一つは「おもてなし」。サービスマインドである。これは飲食業界にとって、大きなビジネスチャンスであり、また宿題でもある。
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。