「業種」とは、顧客に何を売るか、である。「業態」とは、顧客にどのように売るか、である。たとえば、エー・ピーカンパニーの「塚田農場」。業種は「居酒屋」、業態は「鷄をメインにした宮崎料理」である。しかし、「塚田農場」が数ある宮崎料理業態と一線を画しているのは、「宮崎に自社農場を持ち、生産と販売を一体化している」こと。また、「俺のイタリアン」は、イタリアンバール業態だが、「立ち飲みにして高級食材を安売りする」ことによって、業態の枠を超えてブレークした。このように、最近は“業態破りの発想”から超繁盛店が生まれている。これらは、外食業界における「イノベーション」の事例だと私は思う。業態の枠を破ることによって、イノベーションが生まれるのだ。それは、新しいビジネスモデル(業型)の創造でもある。そこで、私が提唱したいのは、外食、飲食業界も「業態づくり」から「業型づくり」へ脱皮しなければ、これからの飛躍はないということだ。「業態」をいくら量産したところで、陳腐化するのは目に見えている。ある意味で「何屋かわからない」店づくりのなかにこそ、イノベーションのタネがあるのかも知れない。そこに挑戦する企業こそ、先端企業ではないか。そこで重要なのは、「ミッション」である。ミッション無き「業態」は、「業型」(ビジネスモデル)までたどり着けない。人に真似されたり、陳腐化して終わる。人のやってないこと、誰もやってないこと。それを探して、やり続ける。迷いながら、行きつ戻りつしながら、やり続けていると、自分しかできないやり方や進むべき道が見えてくる。やるべきこと、立っている位置が絞られてくる。それが、「ミッション」ではないか。例えば、熟成肉が流行っているから、「熟成肉とワインの業態」をやろうとする。その時点で、アウト。そうした業態発想では、競争に飲み込まれ、埋没するのが目に見えている。業型発想は、「なぜ、熟成肉をやるのか?熟成肉を通じて、ウチはどんな価値を顧客にもたらせることができるのか?そのためには、どんな仕組みをつくるのか?」と考える。そして、「まだ無名で弱小の生産者の肉をブランディングするためにやれないか?」「店内熟成させることで、顧客がサプライズするような価格破壊やプレゼンテーションができないか?」といった「ミッション」が生まれる。それが差別化ポイント(独自のポジショニング)になるのだ。まとめてみよう。業種=顧客に何を売るか。業態=顧客にどのように売るか。それに対して、業型=顧客に価値を伝える仕組みをどうつくるか、ということである。「我々が顧客に与えられる価値とはなにか」(ミッション)、そして、その仕組みをどうつくるか」(業型発想)を考え抜き、実行すること。それによって、競争状態から突き抜けることができるのである。
コラム
2013.08.08
「業態」から「業型」の時代へ!
「業態は陳腐化する」。このコラムでそのことを私は何度も言ってきた。トレンドサイクルが短くなり、いまや業態の寿命"は2年とも3年ともいわれている。そこで提唱したいのは、「業態をつくる」という発想の枠をいかに破るかということ。これからはそこがポイントになるのではないか。"
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。