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コラム

2013年後半の飲食トレンドを予測する!

2013年も後半に入り、1ヵ月が過ぎた。上半期の総括をしながら、下半期の飲食マーケットのトレンド、業態のトレンドがどんな変化を見せるのか、それを大胆に予測してみたい。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


2013年の上半期を振り返ってみると、業界の最大の話題は“ハイカジ型”の「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」のブレイクぶりが突出しており、他では“ミッション経営型”のエー・ピーカンパニー、“ネオ大衆型”「串カツ田中」の快進撃、そしてグローバルダイニング卒業生“第三世代”たちの活躍ぶりである。業態的には、「日本酒」「日本ワイン」「クラフトビール」の“ジャパンクオリティ”三兄弟、とりわけ日本酒業態はバルスタイルも登場し、ポストワインバル的な勢いだった。料理の面では、素材特化型の動きが強まり、クオリティと美味しさが伴う熟成肉や馬肉、魚介、甲殻類、ブランド鷄や農園野菜を生産者の思いを伝えるストーリーの演出、盛り付けの演出を含め、主役として際立たせる業態が目立った。こうしたトレンドの底流にあるのは、「価格から価値へのパラダイム転換」であり、価値志向を示す以下の七つのキーワード。これは2012年6月28日にこのコラムで発表したものである。1、「ネオ大衆」(ネオ大衆酒場)2、「ハイカジ」(ハイクオリティ・カジュアル)3、「ネオトラ」(ネオ・トラディショナル)4、「ローブラ」(ローカル・ブランディング)5、「リーイン」(リージョナル・イン)6、「ジャパン」(ジャパン・クオリティ)7、「キラコン」(キラーコンテンツ)この1年、マーケットの底流の動きはそう変わっていない。時代の空気は、12月の総選挙で“デフレ脱出”を掲げた自民党が大復活を果たし、7月の参院選も勝利を収めたことで、人々の心に“プチ贅沢”志向が生まれ、それが飲食業界に少しはプラスに働いている。ここ数年で最高売上げを叩いたという飲食店も増えており、「価値を感じる店、商品にはお金を払う」という傾向が強まっていることは事実だろう。人々は「ミッション」「クオリティ」「オリジナリティ」あるものをリスペクトし、そこに消費と投資をする「価値のシェア」の時代なのだ。さらに言えば、SNS時代、個人が価値情報を発信する。「俺の店に来て、俺の料理を食ってみろ!」と主張する“俺流飲食”が台頭してきているという傾向も見逃せない。さて、そうした流れの先、この下半期はどんなトレンドになるのだろうか。私は、以下の五つのキーワードの動きが際立って来るのではないかと見ている。ポイントは「クオリティ」へのこだわりである。高級業態のエッセンスを採り入れた“ネオ・ハイカジ”の流れに注目したい。1、「レスバル!」(レストランのクオリティを持つバル)バルの進化系。素材と調理力、ホスピタリティで勝負。シェフの技が光る。「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」のような立ち飲み、フル回転型ではなく、フレンドリーな接客が前提。「ネオビストロ」「ネオトラットリア」はこの範疇に入る。オシャレに気軽に、日常的に利用できる。でも料理のクオリティはハレ系。ワインもクオリティが問われる。要は、安っぽいワイン酒場に飽き飽きした客が、少し高くても美味しくて接客のいい店を求め始めるだろうということだ。ホスピタリティの基礎のあるグローバルダイニング卒業生や高級レストラン脱出組がこのマーケットに主役になるだろう。客単価はこれまで空洞化していた4000~6000円ゾーン。アロマクラシコの元シェフの独立店、目黒「アンチカブラチェリアベッリターリア)」や六本木の「クッチーナボーナイタリアーナノック」など参考例になるだろう。2、「ネオジャポネ!」(国産食材にこだわる職人系新・創作料理)「ジャパンクオリティ」業態の進化系。ビバレッジにもしっかりこだわりの品揃えを持つ板前仕事のネオ割烹「割烹酒場」業態が増えている。野菜が主役としてだけではなく、脇役やエキストラとしても登場するメニュー(野菜を取り入れた)センスに優れた次世代型の野菜業態「野菜食堂」にも注目。熟成肉バルや発酵食堂、地方活性化バルや酒場、さらに“俺流酒場”もこのジャンルに入る。職人型店主の素材へのこだわり、創作性がポイントになる。銀座はじめ3店舗展開している「板前バル」や恵比寿「雨後晴」などはその例。今日オープンする青物横丁「俺流和食 のりたけ」にも注目したい。こうした店にはこだわりの日本酒やワイン、クラフトビール、そしてオリジナルな酒器がある。「なぜその酒をその器で?」にも店主のこだわりが必ずある。3、「ジャンクション!」(乗り入れ型料理を提供する業態) フランス、イタリア、スペインほかエスニックやヒスパニック、中華などの複合的なテイストを持つバル&レストラン。ジャンルの乗り入れ、合流と分岐を表す高速道路の「ジャンクション」のイメージ。かといって、かつてのフュージョン料理や「〜風」ではなく、それぞれの料理が本格的。パスタとパエリア、イタリアンでアヒージョ、メキシカンに点のような乗り入れでサプライズを提供する。あるいは、ビバレイジカテゴリーに専門性の高いツートップコンセプトを持ったドリンク・ハイブリッド業態もこのジャンルに入る。日本酒とワイン、日本酒(ワイン)とクラフトビール、焼酎とモルトウィスキーなど。4、「ネオ・ラグジュアリー!」(一点豪華主義)これからの業態は高級食材を安く提供するとか、一点豪華主義でキラーコンテンツをつくるとか、クオリティと価格のギャップがサプライズを生む。その料理を食べるためだけにわざわざ通う価値のあるような業態。限定品ですぐなくなるような“おとりメニュー”ではなく、それがメインの位置にあり、専門店化していなければならない。フォアグラをカジュアルに食べられる「銀座フォアグラ」や中目黒の海老カニのカジュアル業態「クラブハウスエニ」(2号店は、魚卵料理専門店)などがその例。客単価は5000~6000円。このゾーンで抑えられるかどうかが決め手。5、「グローカル!」(世界に支店を持つ)ローカルなコンテンツをグローバルに展開すること。日本食は欧米だけでなく、アジア、とくにアセアン諸国で注目されている。しかも、その市場規模は膨大で、成長性も高い。市場が縮小し、パイを取り合うレッドオーシャンの日本だけでなく、海外に出て行く。ただし、脱出するわけではなく、日本でしっかり業態をつくりながら、2号店、3号店の感覚で海外に出て行くことが重要だろう。これから海外で求められる飲食コンテンツは、総花的なものではなく、専門店化した業態。とくに日本の地方コンテンツは海外では新鮮だ。海外に店をもつことのメリットは、経営の視野が広がることだ。外から日本マーケット、東京マーケットを見ることによって、改めて日本、東京で何をやるべきかがわかる。原点回帰のためにも視察だけでも海外に行くことが大事ではないだろうか。

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