コラム

春の注目ニューオープン!

「アベノミクス」効果か、景気回復を先取りするかのように、例年にも増して春の飲食店オープンラッシュを迎えている。数あるオープンのなかで、注目の店3店をクローズアップしてみたい。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


話題性の点で最注目の店は、4月12日オープンの六本木「1967」。150坪(テラス60坪)、140席余りの大箱ラウンジカフェ。「もっと遊べ、大人達。」「東京中のイイ女が集まる店」をキャッチフレーズに、1967年生まれの三人、ダイヤモンドダイニング松村厚久社長、ゼットン稲本健一社長、そしていまや世界的なインテリアデザイナーのグラマラス森田恭通氏のコラボでつくり上げたラグジュアリー&エンタメ空間。緑に囲まれた開放感あるテラス席、カラオケを完備したプライベートラウンジなど、ランチからカフェタイム、ディナーからバータイムまで、シーンに合わせて空間を選べる。フードは飲茶やホッケンミー、海南チキンライスなどのシンガポールを軸としたオリエンタル料理とコンチネンタルテイストを融合した料理。運営は、ダイヤモンドダイニンググループのバグース。“100業態100店舗”達成後、成長の踊り場にあった同グループの“再生の狼煙”と言えるかもしれない。この箱は昔、業界では“伝説のレストラン”といわれる「カシータ」があったところ。「1967」が「カシータ」を超える伝説をつくれるかどうか注目したい。二つ目は、新業態ではないが、4月8日綱島店、9日町田店、10日五反田店と3日連続して新店をオープンした「串カツ田中」。町田店は直営9店舗目、FC店含めるとトータルで26店舗と急成長を続けている。地元密着型の大衆的な串カツチェーンだが、ちょっとオシャレな大衆酒場の雰囲気を醸し出した空間が女性やファミリー客からも支持されている。客単価は「2500円を超えない、週に何度も通える値段」(貫啓二ノート社長)に抑えている。串カツ専門店というよりは、気軽に通えるセンスのいい“ネオ大衆酒場”である。駅前商店街と住宅街の挟間の幹線通り沿い1階路面を狙うという立地戦略もユニーク。「鳥貴族を目標にしている」(貫社長)としながらも、急拡大戦略は取らず、立地・物件ありきの手堅い出店計画。ただ、FC希望者が後を絶たないそうで、5月には5店舗と加速、年内には50店舗達成も射程圏に入っているようだ。ありそうでなかった、できそうでできない業態パッケージはある意味、“サイレント・イノベーション”と言えるかもしれない。「外食アワード2013」の候補に名前が上がりそうな予感がしてきた。3店舗目は、4月12日に築地にオープンする酒販店のいまでや直営店、築地「蔵葡」。運営は子会社のイマデヤワインズ。日本ワインと日本酒を主軸に、料理はそれらに合うおばんざいを提供。日本ワインは250種類を揃え日本酒も四合瓶が冷房エアカーテン付きのワインセラーに並ぶ。セラーには多彩な酒器も並び、「お酒の特長を引き出す酒器の提案もしたい」と小倉秀一社長は話す。いまでやといえば、飲食店向けに“酒育”を打ち出したユニークな酒販店。ワイン、日本酒に強く、ビールは扱わない。ひたすら、飲食店のクオリティアップのために、酒蔵やワイナリーを回り、名酒の発掘とネットワークづくりに邁進してきた。「APカンパニーの成長の陰にいまでやあり!」とも言われる。そんないまでや初の直営とあって、業界からの注目度は高い。いま、トレンドの日本ワインと日本酒を提供する“酒育”プレゼンテーションの場が「蔵葡」である。同社のチャレンジスピリットに敬意を表したい。

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