コラム

「ドリンク」で差別化せよ!

大手メーカーがさまざまなユニークなドリンクを開発し、飲食店に提案する動きが広がっているが、それが広がれば広がるほど、ドリンクメニューの同質化のリスクが増える。いま必要なのは、その店にしかないオリジナルドリンクを開発して差別化することではないか。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


京王線明大前駅の改札を出て、まっすぐ2分程歩いた少し静かなエリアにある「魚酎(ウオンチュウ)」は新鮮な魚と野菜が売りの居酒屋業態で、3月28日にオープンした。オーナーの永澤淳氏は、楽コーポレーションの出身。ここのドリンクが面白い。「UON-CHUハイ」(290円)はじめ、しそ、ライム、梅、ガラナ、ざくろ、シークァーサーなど、20種類以上ある「酎ハイ」(380円)は、 「カチ割酎」か、クラッシュアイスの「シャリシャリ酎」から選ぶことができる。そのほか、生のフルーツやトマトを焼酎と一緒に凍らせたものをシャーベット状にし、それを炭酸で割って提供するドリンクはサプライズ感があり大人気。ありきたりじゃないドリンクの数々は業界でも注目されている。三軒茶屋駅から246を駒澤大学方面に7分ほど歩くと、ちょっと歴史が止まったような商店街がある。その一角に最近オープンした「キッチン cara-no」。ここのオーナーの片山ヨシノリ氏は、楽グループ卒業生代表のガンさんこと岩澤博氏のベイシックスで統括店長を努めた人物。独立1号店だが、彼がこだわったドリンクはサングリア。ワインバルに定番のドリンクだが、片山氏はそれをグラスだけでなくボトルで提供。「自家製ボトルサングリア」である。それをボトルの白ワインと一緒に氷の入ったバケツで冷やしている。ちょっとした工夫だが、お客さんは「面白いね!1本もらおうか」と声をかける。このように、ドリンクにひと手間加え、工夫して提供することが、いま差別化のポイントとして重要になってきた。料理にはこだわっても、ドリンクはメーカー任せ、酒屋任せという店がまだまだ多いのではないか。メーカーや酒屋は、FL管理経営を重視する居酒屋チェーン向けの提案慣れから、「いかに手間を省けるか」「いかに原価を下げられるか」に努力を割いてきた。それはそれで素晴らしいことだが、それがクオリティを求め始めた顧客のニーズと大きく乖離し始めたということを認識すべきだ。飲食店側は、メーカーや酒屋の提案に安易に乗るのではなく、自ら手間をかけて、オリジナルドリンクを開発する努力を怠ってはならない。例えば、いまブームになりつつある「モヒートカクテル」。導入は容易だが、顧客は本当に「モヒートもどき」を求めているのか。ドリンクにこだわってきたあるチェーンは、メーカーが提案してきた「モヒートカクテル」をそのまま出すのではなく、ひと工夫加えた「オリジナルモヒート」として提供している。飲食店が、世界に一つしない「オリジナルドリンクレシピ」を開発する時代が来たのかもしれない。

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