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コラム

「キラコン」「ローブラ」系に注目!

2012年後半の飲食トレンドの柱として、「ハイカジ」「ネオ大衆」「ネオコン」の三つを挙げたが、それらに加えて、「キラコン」「ローブラ」というキーワードにも注目したい。「キラーコンテンツ」「ローカルブランディング」である。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


キラーコンテンツ、「キラコン」とは、圧倒的な魅力をもった商品やサービス。その店の看板となるような突き抜けたメニュー、他店が真似できないオリジナリティをもったメニューのことである。一度体験したら「記憶に残る」ようなもの。業態間競争が激化し、商品やサービスはハイレベルになってきているが、一方で「同質化の罠」に陥ってしまう現状がある。例えば、カジュアルワイン業態での売りのメニューとなっている“ガッツリ系肉料理”。いまや相当差別化しないと競争に勝てなくなった。そうしたなかで、中野「ツイテル」は熟成肉を打ち出すことによって抜け出した。鮮魚業態の競争も激しく、「魚金」ベンチマークスタイルの高ボリュームの「刺し盛り」もいまや珍しくなくなった。そんななかで、スパイスワークスの青物横丁「貝殻荘」は魚介の量り売りを打ち出し、人気を博している。活車海老を客の前でブランデー漬けにして出す「踊り食い」は衝撃的。食べ残した海老の頭と殻は、鉄板でプレスされて「海老せんべい」として出される。一時、大ブームとなった「せいろ蒸し野菜」。明大前に楽コーポレーション出身者がオープンした「魚酎」は店に入るとすぐ、生野菜やきのこがうず高く積まれた大きな蒸し場がある。客はサラダバーの容量でせいろに好きな野菜を盛ってスタッフに渡すと、目の前で蒸しあげてくれる。野菜は盛り放題で、蓋ができないほど山盛りにする客も多い。スタッフが「お客さん、これ蓋ができないっすよ~」と困って見せる。客はとても楽しそう。そんな光景も記憶に残る。夢屋の小林研社長がプロデュースした八丁堀「焼きジビエ 罠」は、その名の通りジビエを焼肉スタイルで七輪焼きにして食べさせる。食材は小林さん独自のルートから調達。プロのハンターから直接仕入れる北海道の蝦夷鹿、対馬、長崎、熊本、静岡から一頭買いした猪に、養殖された雉子などを用意している。価格もリーズナブルで、立ち飲みにすることによって回転率を上げている。こうした「キラコン」系に要注目だ。「ローブラ(ローカルブランディング)」の波も強い。地方食材を打ち出した店や業態はもの凄い勢いで増えたが、最近の傾向は、地方の自治体をまるごと冠にしたり、地域食材ブランドをそのまま店名にする店が出てきたこと。「北海道八雲町」でブレイクしたファンファンクションは、田町に「佐賀県三瀬村 麓どり」をオープン。鶏業態をやろうと、全国のブランド鶏を探していた同社の合掌智宏さんは、佐賀県が新たにブランディングを始めた三瀬村の養鶏場が生産する「麓どり」に目を付けた。フランスの赤鶏を雛のときに輸入して独自な飼料で育てた鶏肉は、歯ごたえがよく風味も豊か。生産量が限られているので、東京で提供している店はまだここだけ。お客さんには希少価値があり、地域食材ブランディングに貢献できるという共感性もある。この分野での先駆者はAPカンパニーだが、同社には全国の自治体から、食材のブランディング相談が来ているようだ。地方の食材を外食企業、飲食店が都市部でブランディングするという動きはますます加速するに違いない。「ローブラ」業態はまだまだポテンシャルが高いといえるだろう。

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