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コラム

飲食店が株式上場するということ

名証セントレックス上場を果たした「ゼットン」(社長・稲本健一氏)の株価が下げ止まらない。昨日22日は上場来最安値の61,200円を付けた(終値 68,000円)。公開価格が92,000円、10月19日上場初値が100,000円ジャストだった。初値で買った投資家は1ヶ月で3割を超える含み損。売るに売れない状況だ。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


レストランビジネス業界、同店のお客さんたちからの“ゼットン・稲本人 気”は根強い。しかし、IPOデビューをすると投資家(株主)という新たなお客さんから常に厳しい目を注がれることになる。飲食店店のオーナーたちは、レ ストランの客のクレームには慣れていても、投資家からの容赦ない“ご意見”からは逃げられない。マスコミの目も厳しくなる。なかには勘違いする経営者も多 く、IPO企業としてのデスクロージャー義務さえ避けて、我々ジャーナリストの取材を平気で拒否する新興レストランオーナーも多い。 誰も大きい声では言わないが、ゼットンが上場を急ぎすぎたことは明らかだ。名古屋テレビ塔、徳川園、東京ミッドタウンなど公共施設、商業施設出店に向けた経営戦略だったのはわかるが、投資家たちも指摘しているように、「前々期債務超過の会社がなぜ公開できるのか?」「セントレックスの 市場関係者はちゃんと審査したのか?」という批判は残念ながら当を得ている。最近の稲本さんは名古屋財界やさまざまな講演会から引っ張りだこのようだが、 株価回復の施策を早急に講じるべきだろう。東京進出以来、ずっとゼットンと稲本さんを見続け、書き続けてきたからこそ、敢えて苦言を呈したい。機会があれ ば、「なぜいま、公開だったのか?」その本心を聞いてみたい。 名古屋グループではゼットンのライバルである「ジェイプロジェクト」(社長・新田治郎氏)が11月30日、東証マザーズに上場する。公開価格は150,000円。こちらは幹事証券がみずほインベスターズとあって投資家の前人気は高く、初値200,000円とも250,000円とも言われている。新田さんはあまりマスコミに顔を出さない人だが、私は「フジサンケイビジネスアイ」でインタビューさせてもらったことがある。本格焼酎を強く打ち出した居酒屋の展開が当たった。 東京進出後も順調に店舗展開し、現在、居酒屋を18業態37店舗、レストラン等食事をメインとした店舗を7業態12店舗、計25業態49店舗を展開 し、前2月期売上げは62億円、経常利益は2億円強。上場で得た資金は全額設備投資に充当するとのこと。ただ、投資家から「リリース内容が不十分だ」とい う要望が出ているように、IR広報体制が後手後手に回っている感は否めない。新田さんというトップの顔が見えてこないこと、銀行系証券主導にありがちな数字至上主義が、「飲食店」としての魅力を半減させてしまうのではないか、それが心配である。

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