2月1日オープンの「しのばず屋別邸」は 260坪、4店舗4業態、総席数441という超大箱である。江戸時代は“黒門町”と呼ばれ、浅草の旦那衆や芸姑が優雅な遊びを愉しんだ一郭。その華美を極 めた風情を現代に再現しようという、ダイヤモンドダイニングらしいコンセプトだ。麦とろ・はしり割烹の「京個室 辻が花」、お茶屋BARの「逢瀬の刻」、 炉端焼の「鬼吉」、そして同社初のビュッフェスタイル「大地の贈り物」の4業態。デザインはジェリーフィッシュ・貞廣一鑑氏の渋谷「おはし」を手掛けたベ イリーフの前田太郎氏(MD出身)である。 1月30日に開催されたレセプションにはプレス、同社関係者、松村社長と交友のある業界人など300人を超える招待客が集まった。入り口に立つ松村 さんは、いつもと表情が違う。一人ひとりに、この「渾身の作」を一所懸命に説く姿があった。今回はOLやサラリーマン対象というより、「浅草や上野界隈の 老舗関係者や食通の方々にもぜひ足を運んでいただきたい」(松村さん)という想いが強いのだ。同じビルには「今半」「梅の花」などがある。それらと戦える かどうか、高い客層の取り込みという狙いもあるようだ。 かつて、このコラムで「二人の上場予備軍」という原稿を書いた。ダイヤモンドダイニングが池袋にやはり4業態500席という大箱を出店したときだ。同じビルに先に出店していた名古屋出身の「ジェイプロジェクト」の 新田治郎社長と松村さんは同世代、共にディスコ出身でよく似たコースを辿っていた。「株式上場」という目標も一緒だった。その新田さんは昨年12月にマ ザーズ上場を果たし、松村さんはまたしても先を越されてしまった。最新、松村さんは「上場の話題」については黙して語らない。株価で二人が競う日も近いの だろうか。 ※この原稿を公表直後、株式会社ダイヤモンドダイニング・公式ホームページ上で、「大証ヘラクレス上場への承認が得られた」と発表がありました。
コラム
2007.02.01
松村厚久「渾身の作」に秘めた想い
フルスピードで出店のアクセルを踏み続けているダイヤモンドダイニングが上野一の大箱"でまた勝負に出た。松村厚久社長、「渾身の作」である。 "
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。