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コラム

2012年飲食トレンドはズバリ、「ネオ・トラ」!

1月も半ばが過ぎ、なんとなく今年の飲食トレンドのキーワードが見えてきた。ここ数年、急成長してきた外食ベンチャー企業にも明暗がはっきり現れてきた。2012年はズバリ、「ネオ・トラディショナル」!

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


2012年について、ゼットンの稲本健一さんは「リセットから新たな価値創造の年へ」と語った。 日本居酒屋協会理事長で「い志井グループ」のエムファクトリー長谷川勉さんは、年頭の同協会メルマガでこう書いている。「年末年始で僕が思った事は、今年は『リセット!』がキーワードのように思います。外食・居酒屋も昨年まで色々な業態ができ、マネタ業態ができたり・・・。食材についても、流通についてもしかり。商売の本質がブレて来ていたように思います。一番大切なことは、『最終的にお客様に喜んでもらうこと』が一番の目的なのです!見た目や、目先の問題ではないと言うことです。今年は、昨年を教訓に『原点』に戻り、総ての面において『リセット』して見直す一年になるのではないでしょうか!!」。今年の目標としては、「社員やアルバイトへの勉強会の回数を増やし、会社の理念やあり方、い志井のDNAをより強くすることに専念して行きたい」と。つまり、「リセットから再生への年」になるということだ。それは、飲食店の本来あるべき姿への「原点回帰」ということだろう。マネーゲームに踊った“外食ベンチャーバブル”も弾ける。金融、不動産業的な発想で伸びてきたビジネスモデルも破綻する。新興外食上場企業の明暗も分かれてくるだろう。まさに、「外食維新前夜」の様相を帯びてくるのではないか。では、なぜ「ネオ・トラディショナル」なのか。それは、長谷川さんが言うように、飲食の本質を取り戻すための「原点回帰」が求められているのである。「い志井」ならば、もつ焼きの職人技という「DNA」の強化がミッションとなるわけだ。「ネオ・トラ」は創業時代の伝統復活であり、同時にその殻を破って新しいスタンダードを創造する作業でもある。注意しなければならないのは、顧客がどんどん「プロ化」していることである。口コミやソーシャルメディアの発達で、顧客の「高度な体験価値」志向はとどまらない。「嗜好性の復活」と言い換えてもいいだろう。大人が愉しめる、本物志向というトレンドはますます強まってくるに違いない。「ネオ・トラ」は、伝統への回帰と同時に、その殻を破るニューコンテンツの創造。居酒屋業界を見渡しても、これから来るのは「ネオ大衆酒場」と「ネオ小料理屋」だ。「ネオ小料理屋」とは職人技を発揮する大将や女将がいて、こだわりの酒とハイクオリティな手作り料理を出店。かといって割烹ほどの値段ではなく、あくまで日常使いができるリーズナブル客単価の業態だ。「小料理屋」というトラディショナルをベースとし、そこに新しいコンテンツを植え込む業態だ。新橋「平木商店」などはその典型だろう。新橋生まれの三代目オーナーは焼き鳥名店で修行し、独立した。串焼きをベースにしながら、女性シェフによるレベルの高いバル料理が出る。焼酎はあえて黒糖にこだわり、もちろんワインも置く。ほっこりして、旨くで安い、懐かしくも新しい小料理屋なのだ。「ネオ・トラ」現象は居酒屋業態だけでなく、イタリアンやスペインバルの復活など、洋業態でも起きている。「ネオ・トラは」は“食材の時代”の終焉を告げるかもしれない。それは、産地や食材を売りにする時代は終わり、いい食材を使って当たり前、それよりも「どう調理するか」の技が問われるということだ。言い方を帰れば、飲食業界が「プロ相場」の時代なるということだ。しかし、だからといって、素人が戦えないということではない。素人でもプロ意識をもつことが重要である。「怠けたプロよりも、勉強熱心なアマであれ!」と言いたい。職人回帰の時代なのだが、技に溺れ、自己満足に終始するような職人は不要だ。つねに素人の目(顧客目線)をもち、時代の変化、顧客の嗜好の変化にスピーディーに対応し、常に新しいコンテンツを産んでいかなければならない。オーナーも、遊んでいてはいけない。現場に立ち、スタッフたちの模範にならなければならない。「暖簾」という名の“ブランドDNA”を濃くしていかなければならない。組織を存続させ、ブランドを磨き上げるために必要なのは、売上げよりも利益。しかし、大事なのは通帳の金額ではなく、信用という名の預金である。利益が信用を生むのではなく、信用が利益を生むというこも忘れてはならない。「ネオ・トラディショナル」に新世代が挑戦する時代が来た。 

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