「蟻月」が恵比寿の辺鄙な場所で密かに産声を上げたのはもう3年以 上前の2003年、クリスマスイブの日だった。博多ラーメン「一風堂」出身者たちが研究に研究を重ね、「白」「赤」「金」の独特のスープを揃えてデ ビュー。たちまち人気店となり、「芸能人御用達」「予約の取れない店」として、いまやもつ鍋界の“聖地”とさえ呼ばれる。2005年4月にはもつ鍋セット の通販事業にも進出、同年10月代官山に「HANARE」を、12月には心斎橋店を出している。 10数年前、地元博多から東京進出した「もつ鍋元気」が火をつけた“第一次もつ鍋ブーム”はわずか2年足らずで終わったため、今回の“第二次ブー ム”もジンギスカンと同じようにそのうち終息すると見られていたものの、むしろ東京マーケットに根を張り、すっかり定着した感がある。“元祖”「もつ鍋元気」も六本木に復帰し、いまや地元からの東京進出組、東京スタイルのオリジナル組、ブームに便乗したキャッチアップ組と様々な店が入り乱れ、“仁義なき東京もつ鍋戦争”がヒートアップしている。 恵比寿エリアだけでも、「蟻月」のほか、「黄金屋」「もつ義」「たまや」「龍」などの人気店が“予約の難しい店”といわれている。3月6日にはゼットンの「チャミスル」が入ってたビルにリン・クルーが「もつ道」恵比寿店を オープンした。もつ鍋の人気の要因は、手頃な値段でにヘルシー鍋(コラーゲンたっぷり)を楽しめること、良質なモツの仕入れルート確保で味食感が格段にレ ベルアップしたこと、味噌、醤油、塩などをベースにしたスープに様々な特長を出して他店と差別化できること、そしてジンギスカンと違ってサイドメニューを 揃えることによって鍋以外の食事も楽しめることなどだろう。 しかし、「蟻月」オープンから起算してブームがすでに3年も続くと、そろそろ“飽和感”が出てきてもおかしくない。すでに専門店でなくても、もつ鍋 をメニューの一つに加える居酒屋や和食店が続出している。豚しゃぶブームと同じような定着と選別の波が待っているような気がする。「博多水炊き 蟻月」 のオープンは、もつ鍋ブームを仕掛けた自らが“追随組”に嫌気がさし、“ふるい落とし”を狙ったに違いない。同店のホームページにはこうある。「…どうも ブームに乗る、とにかく後追いで走り出す習性というのは…江戸時代前からの習性のようで…とにかく走り出すとみんな走り出す。そして徒党をなす」とブーム に警鐘を鳴らし、「まあ、なかには冷静にフィールドを見回す漢(おとこ)がいて、たぶんそんなやつが次世の主流に…」と書いている。したたかにマーケット を読んでい
コラム
2007.03.22
「もつ鍋」ブームもそろそろピークか?
もつ鍋ブーム"の火付け役となった「博多もつ鍋 蟻月」が3月19日、代官山に今度は「博多水炊き 蟻月」をオープン、話題を呼んでいる。"
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。