昨日、連休明けの銀座「ベルビア館」(三井不動産)と「新丸ビル」(三 菱地所)の様子を見てきた。「ベルビア館」が苦戦しているのに対し、「新丸ビル」はビジネスマンやカップルで賑わっていた。「ベルビア館」はフロアコンセ プト、MDの点で私は高評価したのだが、三井不動産側のPR不足なのか、新丸ビルオープンと重なった間の悪さなのか、水曜日とはいえ21時前後で約3~4 割の集客というのはあまりに厳しすぎる。リーシングサイドの思い込みが強すぎたのだろうか、コンセプト重視のあまり、ブランドと商品の“いいとこ取り”に なってしまった感がある。集客しだいでフロアに活気は演出できるが、オープンしたばかりというのに、オーナーが店に立っていない。わずか「アヒル」「喜よ し」が気を吐いていたぐらいか。 その点、新丸ビルはアナーキーだが、飲食店本来の個店の空気感をそのまま持ち込み、結果として“活きた街”を再現することができた。とくに5階は何 度行っても独特の匂いを放つ。立ち飲み「再生酒場」の先にクールな「AWキッチン」があったりする。5階はなんと店舗日商平均70万円という。“地所の夜 の社員食堂”と揶揄され賛否両論の7階「丸の内ハウス」は55万円。ただ「ソバキチ」は20坪で100万円、新川さんの「リゴレット」は150万円売る日 もあるという。ちょっとした“シンマルバブル”だが、やはり飲食店は個性、アイデンティティ、その店のもつ独自の空気感が集客のポイントになるということ か。 その空気感を醸し出すのはオーナーの個性、シェフの想い、スタッフのホスピタリティなどのソフト力とデザイナーのハード力とのミックス。新丸ビルでは「AWキッチン」がスワンズアイディー・小山トシオ氏、「リゴレット」がグローバルダイニング出身のスイート・ 佐野岳士氏 共に突き抜けたいい仕事をしている。「酢重ダイニング」はミュープランニングだが、数年前のダイニングスタイルの成功体験から抜け出ておら ず、せっかくのオーナーのコンテンツを引き出せていない。そういえば、いまや“死語”に近くなった「デザイナーズ・レストラン」。大きなトレンドだっただ けに、その頂点で仕事をした大御所たちは東京レストランシーンの先導役となったが、半面彼らに仕事が集中した結果、“デザイナーズバブル”の崩壊も早かっ た。 そして、いま新しいセンスと才能をもった“新世代デザイナー”たちが台頭し始めた。それは経営者、シェフの世代交代と軌を一にしている。ダイヤモンドダイニングの成長と共に活躍場を増やしているカームデザイン・金澤拓也氏、佐野氏と同様グローバル出身のアッタ・戸井田晃英氏、立ち飲みブームを仕掛けたガタイパーソナルスペースデザイン・萩本雅泰氏、味噌汁バーをブレイクさせ新宿に独立開業者向け図書館を運営する鬼才、スタジオナガレ・横井貴広氏など、次々に新鋭が登場してきた。彼らがこれからのレストランシーンをどう変えていくのか楽しみだ。
コラム
2007.05.10
次世代デザイナー”はどこにいる?”
先週のつぶやきで飲食第3世代"について触れたが、経営者たちが世代交代すると同時に、店舗デザイナーの世界も"新世代"が台頭し始めている。"
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。