そんな質問に対して、私はこう答えるようにしている。それは、「コンセプトよりも“社長の想い”を伝えることですよ」。あるいは、「“オーナーの個 性”を叩き込むことです」と。実はこれ、“ウケウリ”である。「社長の想い」説は、某ビールメーカーの方と話していて相手から聞いた言葉。そして、「オー ナーの個性」説は、オペレーションファクトリーの笠島明裕社長が私のインタビューに応えた際に吐いたセリフである。いずれにしても、飲食店は“個”を競う時代。他店との差別化を明確にするには、オーナーなり社長の顔が見えて来ないといけない。 オーナー側からすれば、それは妥協を許さないことである。全人格をかけた戦いである。しかし、名作の歴史小説がそうであるように、天下を取らんとす る戦国時代の大将や武士は、そのビジョン、キャラクターが際立っている。戦国時代のいまの飲食業界においても、トップがどんな想いで店をつくり、何を個性 として売りにしているのか、そして客にどんなことを訴えようと考えているのか、そうしたフィロソフィーがいま最も問われているのではないだろうか?チェー ン店が元気ないのは、オーナーの顔が見えず、個性がなく、ただそこに箱と看板があるだけで、料理にもスタッフのサービスにも“色”がないからである。 その意味で、私は「社長ブログ」をチェックすることが習いになっている。トップ自身がすべての店に立つことはできないが、ブログを通してその思いや 個性を伝えることは可能だからだ。フードスタジアムのヘッドラインニュースを書く場合でも、最後にホームページだけでなく、社長ブログがあればそれを必ず 紹介するようにしている。いま最も注目しているのは“飲食第二世代”のリーダー、ダイヤモンドダイニング・松村厚久社長の「銀座のフード・ファンタジスタ」だが、株式公開企業のトップでここまで日常の言動を曝け出したブログを私は他に知らない。坂本龍馬よろしく土佐出身の彼は“業界維新”を仕掛ける日々を送る。 フットワークの凄さにおいては、エイチワイジャパン・安田久社長の「一攫千金塾」である。昨日は金沢、今日は鹿児島と、“地方の虎”の異名をいかんなく発揮している。業界のトレンドを知るには、かつて私と一緒に雑誌『ARIgATT』を創刊した際コーポレーション・中島武社長の「流行飲食業・中島武公式ブログ」で ある。業界を動かすキーマンの固有名詞がポンポン飛び出し、“業界第一世代”リーダー中島武氏が“フィクサー”としていかに業界に影響力をもっているか、 それが垣間見える。こうした業界有名人に限らず、我こそは“飲食の星”を目指さんとするトップは「社長ブログ」を発信することを強く奨めたい。飲食店検索 サイトに広告を打つのとは違って、タダで始めることができるのだから。
コラム
2007.05.17
「社長ブログ」のススメ
これからの飲食店づくりで重要なことは何だろうか?最近、よく質問されるテーマである。コンセプト?料理?サービス?さて......
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。