「ワインバル」「ワイン食堂」「ワイン居酒屋」など、カジュアルワイン業態の店が急増しているが、「高くて不味い」というイメージのあった「日本ワイン」「国産ワイン」(日本ワインは100%国産ぶどうで醸造されたもの。国産ワインは輸入原料を使用し日本で醸造されたものを含む)を強く打ち出した店がここにきて目立ち始めた。昨年10月、ワインリストのほとんどを日本ワインで取り揃えた新宿三丁目「JIP」がオープンした。店内にはショップが併設され、200種類以上ある中から、その場で選んだワインが抜栓料1500円で店内で楽しめる。グラスワインは常時15~20種類以上あり、価格は400円からと、気軽に色々な品種を飲み比べることができる。甲州、シャルドネはもちろん、あじろん、ツヴァイゲルトレーベなど品種や地域も幅広く、北は北海道から南は九州大分のものまで取り揃えている。
今年7月には、「国産ワイン」専門ワインバル「WA」が外苑前にオープンした、日本各地から100種類以上のワインを取り揃えた。ボトルは3,000~5,000円までが中心。料理も肉、魚介、野菜はすべて国産にこだわったうえ、 下味やソースなどには味噌や醤油を使用し、ワインとのマリアージュにこだわっている。8月に代々木八幡にオープンした「おいしい日本のワイン≡sun(さんさん)」は国産ワインしか置いていないが、地元客で毎晩立ち飲み席まで埋まっている。山梨のワインが中心だが、あまり手に入らないボトルも豊富に取り揃える。大阪でも北新地のど真ん中にオープンした「北新地バル」は、国産ワイン専門バル。羽曳野市にあるワイナリーの「河内ワイン」など、地のワインを中心に品揃えし、リーズナブルな価格で提供している。このように、「日本ワイン」「国産ワイン」専門バーやバルが最近、確実に増えている。こうした専門店での“国産ワイン体験”重ねながら、「高くて不味い」「白は甘く、赤は軽い」といったイメージを払拭し、日本ワインに目覚めた客が増えていると言っていいだろう。これまで、輸入原料を使用した粗悪で低価格の「国産ワイン」が悪いイメージをつくってきたが、最近では国内にワイナリーが増え、醸造技術も格段に向上し、100%国産の醸造用ぶどうを使ったハイレベルな「日本ワイン」が増えてきた。「日本ワイン」は食の安全・安心という消費者の志向にもマッチする。こうした背景に加え、「ジャパン・クオリティ」追求というトレンドも手伝って大きなフォローの風が吹き始めたと言っていいだろう。
それはまた、日本酒地酒への見直し、国産クラフトビールの復活などと、軌を一にするものだろう。この追い風はかなり息が長いものと思われる。「国産ワイン専門店」ばかりでなく、既存のワイン業態の店にも普通に国産ワインが並ぶ風景が見られるだろうし、「和食と国産ワイン」の店なども増えていくだろう。「国産ワインはちょっと…」とまだ抵抗感のあるワイン業態のオーナーさんも、そろそろ見方を変えるときが来たのではないか。