「波平」 は“魚介の浜焼きと漁師料理”の店。出店した場所は恵比寿駅西口交番前の信号を渡るとすぐの西一丁目商店街、通称“ピーコック通り”に2005年春に誕生 した6階建て飲食店ビル「ZAIN EBISU」。その最上階の6階に入った。50坪84席の大箱である。元あった店はコリアンダイニングinアジアンリ ゾートをコンセプトにした「SAYAN」。オーナーは宝石商の東京トレーディング、運営スタッフはかつてカーディナスチャコールグリルで活躍したチームだった。天高があり、小さいながらオープンテラスもあるお洒落な空間を、漁師町を再現したベタでチープな活気ある魚居酒屋に変えた。 この「ZAIN EBISU」は恵比寿の好立地にありながら恵比寿らしくない居酒屋チェーン店を集めた不気味なビル。恵比寿銀座を抜けたところに建った野村不動産の白亜の飲食店ビル「コンツェ」 もやや高級路線ではあるが恵比寿マーケットを“利回り狙い”できると勘違いしてきた開発だった。「ZAIN」もオープン当初はテナントがなかなか決まら ず、1階にハワイ料理「マハナ」や上に「わん」「一粋」「鳥良」などのチェーン店のの電飾看板が出たときは「やはりダメだ」と思ったものだ。 「SAYAN」は私にとって“期待の星”だったのだ。当然真っ先にフードスタジアムで取材した。 その後、地下1階に恵比寿業界人ご用達の「ももたろう」はじめ、「Sacra」「Ubcra」「KABUTO」など人気店を手がけるジャパンチキンフードサービスの超ゴージャス店、巨大な水槽のある「LUXIS」がオープンして、少しは面白くなったところだった。そして、そこへ出てきたのがダイヤモンドダイニングである。さて、松村社長は この「波平」をどんな店に育てようとしてるのか。私がその点を突っ込むと、「正直わからないんですよ。でも頑張ります」と彼はかわしたが、ぐるなびパワー を駆使して「わん」や「一粋」と同じ客層を狙うのか、「LUXIS」にように時間をかけてじっくりと恵比寿族を常連に囲い込むのか、そのどちらを選ぶのだ ろうか?深夜営業しないところを見ると、当初は株主が納得する前者の戦略だろうが、私は空間を見る限り、ここは業界人が集まる巨大な“深夜の酒宴”を提供 できる可能性があると感じた。そのためには深夜営業しないと始まらない。浜焼きを囲みながら高級ワインを傾けるのが似合うエリアなのだから。
コラム
2007.06.14
ダイヤモンドダイニングの「恵比寿チャレンジ!」
ダイヤモンドダイニングが浜焼きの店「波平」で初めて恵比寿に出店した。これまでターミナル駅周辺や商業施設出店が中心だっただけに、業界で話題になっている。その狙いは?
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。