コラム

「カシータ赤坂」に郷愁と期待

「青山カシータ」に「ラウンジ」がオープンしたというので、さっそく行ってみた。ラ・ポルトの地下1階にあり、看板もサインもない。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


大きな木目の自動扉が目印。扉が開くとそこはマンションの一室のよう。迎えてくれたのはカシータで エグゼクティブディレクターを務める雨宮龍氏だ。私が『アリガット』誌を編集していた2000年、六本木カシータで店長をしていた。当時の編集者の松本育 子が取材を拒否し続ける彼を口説き落とし、雑誌では初紹介させていただいたという経緯がある。まだ32歳とか。六本木カシータには個人的にも何度も通い、 我が儘な客として迷惑もかけた。しかし、青山に移り、麻布十番に2号店を出し、オーナーの高橋滋氏が講演や出版、DVD発売を始めてから、客としてはカ シータから足が遠のいていた。「行き届いたサービス」が「行き過ぎた演出ビジネス」に変ったからだ。客はサービスの形ではなく、形にならない心を求めてい る。 「ラウンジ」に 足を踏み入れると、懐かしさが甦ってきた。六本木にあった“抜けた感じ”が戻ってきたからである。「サービスされていないようで、されている」という感 覚。ときには「サービスされていないんじゃないか」と思うことも。しかし、帰るときにはなぜか気持ちいい。六本木にはそんな感覚があった。「ラウンジ」で は、ラーメン、きつねうどん、カレー、ハンバーグが食べられる。「彼女と食事してお酒を飲まれたあとに、“ラーメンでも食って帰るか”と言って、ウチにお 連れいただく。そんな遊び方、お洒落じゃないですか」と雨宮氏。そう、この崩し方が新しいカシータの可能性を予感させる。 3月24日には3号店目になる赤坂店を出店する。サンケイビルが建設中の地下1階、地上7階建ての飲食店ビル(仮称「一ツ木Lip」)の5階70坪、テラス20坪付き。なぜ赤坂だったのか。このビルにはHUGEの新川義弘氏、AWキッチンの 渡邊明氏が出店するという話もあったそうだ。グローバルダイニング出身のカリスマたちが集えば話題は盛り上がる。しかし、彼らは赤坂という立地に自信がも てなかったのか、出店の話は消えた。“孤軍奮闘”の雨宮氏、「正直言って立地は不安ですが、六本木カシータの初期のように気軽に利用していただける店に戻 します」と語る。いわば“原点回帰”の店、期待したいところだ。

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