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コラム

「ハマサイトグルメ」VS「ムーンストリート大門」”浜松町戦争”の行方

浜松町に同時期に二つの飲食施設が誕生した。さっそく両施設をパトロールしてきたので報告したい。浜松町グルメ戦争"の勃発である。 "

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


まず1月15日、三菱地所と東急不動産が「汐留ビルディング」1・2階に飲食ゾーン「HAMASITE Gurume(ハマサイトグルメ)」をオープン。次いで1月22日、大門交差点近くに飲食ビル「Moon Street DAIMON(ムーンストリート大門)」が オープンした。事業主は香港に本拠地をもつ不動産ファンド。「サンストリート」ブランドで昼型の商業施設に実績があるが、“夜型”は初めて。浜松町・大門 エリアはオフィス人口に比べて飲食店の数がまだ少なく、昼は“ランチ難民”が溢れ、夜は他のエリアへの“流失リスク”を抱える。 両施設もそうしたマーケティング上の課題を共有、オフィスワーカーを取り込むための“一味違う”“ワンクラス上の”グルメシーンを提供することが今 回のミッションだった。各施設とも地元の高感度OLやビジネスマンへの訴求に重点を置き、派手なプレス向けオープンニングレセプションは控え、独自のプロ モーションを行なった。「ハマサイトグルメ」はコアな“バーチャル 客”としてハマちゃんならぬ「ハマさん」(浜 松男、45歳、ハマサイト・プリント・ジャパンINC 第一営業部 係長)を想定、「大門交差点から見える新しいビル」であるハマサイトグルメ各店にTPOで通うシーンを想定したショップガイドを作成して頒布している。 そのガイドがいみじくも指摘しているように、浜松町の中心は大門交差点。そのすぐ近くに立つ「ムーンストリート大門」は 立地的に有利である。JRのガードをくぐり、海岸エリアに歩かなければならない「ハマサイトグルメ」までわざわざ行くには、積極的な来店動機をつくる必要 がある。しかも、ビルのオフィスはまだ埋まっていない。ビルに勤めるワーカーのシャワー効果を期待できないなかでの“見切り発車オープン”である。テナン トの中には昨年末に“フライングオープン”した店もあったようで、テナントの足並みの乱れや出店時期が遅れる“歯抜けスペース”も目立つ。1月25日の “オープニング祭り”が実質的なオープンセレモニーになるが、そこから“爆発”することを願いたい。 さて、テナントで私が気になった店をあげておこう。「ハマサイトグルメ」でチェックしたいのは、大衆肉割烹「ハラホロヒレハレ」、大阪梅田で50余年の老舗串揚料理「雲仙」、蕎麦とおでんの和食居酒屋「藪へゑ」、山陰料理、海鮮炉端「かば」の4店舗。「ハラホロヒレハラ」は「もつ福」ブランドを育てたアキナイの 三宅茂幸氏の新業態。牛・豚を大衆割烹のスタイルで提供するという実験。「きなこ豚と草鍋」「イベリコ豚のグリルステーキ」などが目玉料理。串揚料理「雲 仙」は、鉄板で焼く“串焼き”という珍しい調理法に注目。「藪へゑ」は上野の人気店「海鮮問屋磯べゑ」の新店。日本酒や焼酎の和酒の提供法がユニーク。社 長は松風堂の松澤善久氏。三宅氏と松澤氏はエイチワイシステムの安田久氏らと同じ元BBAの“同窓”出身者である。 「ハマサイトグルメ」でスタートから一番人気の店は山陰海鮮・炉端「かば」である。島根県のK.Kダイニングが新宿、新橋に続く東京進出3号店。 40~50種類の鮮魚を毎日、鳥取県境港より直送し、地元出身スタッフが提供する業態。いまトレンドの「魚屋系居酒屋」スタイルのチープな内装だが、“山 陰発”“地元出身スタッフ”といった地方色を強く打ち出したことが受けているようだ。店づくりは荒っぽいし、魚以外のメニューのレベルは並みながら、独特 のオーラをビルに放っている。私がディベロッパーならば、この「かば」を1階の角地に入れ、通り側にオープン席を設ける。乃木坂の「魚真」スタイルだ。 「磯べゑ」も1階がいい。逆に、イタリアンの「イタリアーナ・エノテカ・ドォーロ」、和食の「AEN」、宮崎地鶏の「車」などは2階にもっていき、落ち着 いて食べたい客をつかみたいところだ。 一方、複合飲食ビル「Moon Street DAIMON(ムーンストリート大門)」は7業態7店舗の出店。従来の近隣の店よりもグレードを上げ、銀座エリアや六本木エリアに流出してしまっていた接 待需要やデート需要に応えられる“大門のランドマーク”を目指すとのことだが、今回のテナントミックスでこだわったのは「素材」。「魚貝」「野菜」「練り 物」「鶏」「牛」「豚」とそれぞれの店舗が異なる素材を訴求している点が注目されるところだ。とはいえ、鶏はチェーンの「今井屋総本店」、野菜は表参道ヒ ルズの「やさい家めい」のプロデュースと、珍しくはない。要チェックは地下1階は「焼きはまぐりる」(ナイツ・アンド・カンパニー)。青山一丁目で人気の焼はまぐり専門店で、盛岡わんこそばのように次々と焼きはまぐりが出てくる。まだ、マスコミにほとんど出ていないユニークな業態だけに注目したい。 それから、5階の焼肉「薩摩牛の蔵」(カミチク)にも注目。 薩摩牛を使った本格焼肉店で、赤坂、西麻布に続く3店舗目。ホームページ「焼肉番付」で“横綱”に輝いた名店。特に牛たん、レバ刺しが名物。和牛のメー カーや卸業者が直営店を出す例が急増しているが、“薩摩牛”をブランド発信できるかどうかがポイント。「ムーンストリート大門」の課題は1階の“顔”が弱 いこと。この好立地にありながら、今のトレンドを踏まえた“フェイスづくり”が出来ていない。渋谷SEDEの1階もそうだが、飲食ビルの1階のテナント選 定、MD力がそのビルのパワーを左右することをディベロッパー側は認識すべきだろう。当初は“ゼットン誘致”という説もあったようだが、確かにゼットンあ たりが出ていれば面白かったかもしれない。

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