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コラム

「地方の飲食店」が生き残る道

B級グルメ"や"地方ブランド食材"が盛り上がるなかで、埋もれてしまっているのが地方の飲食店。地方活性化が叫ばれる一方で、地元の飲食店は厳しい環境に耐えられず、閉店や廃業も後を絶たない。どうすれば、生き残れるのか...。"

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


福島県いわき市の商工会議所の招きで、いわき市の飲食店オーナーを集めてもらって講演してきた。いわき市は人口35万人の典型的な地方の小都市。、かつては炭鉱開発が盛んで、いまは映画「フラガール」で一躍有名になったスパリゾートハワイアンズをはじめとしたいわき湯本温泉街がある「常磐エリア」、歴史ある漁港をもつ「小名浜エリア」、そして常磐線いわき駅を中核に商業が集中する「いわき平エリア」の三つに分かれる。常磐エリアは観光客需要がハワインアンズや湯本温泉街に奪われ、地元飲食店は集客に苦労している。小名浜エリアは行政主導で建てられた商業施設に客が集中。いわき平エリアも駅前再開発で街は綺麗になったが、地元飲食店は減少傾向にある。“フラミンゴレストラン”などで有名な「メヒコ」などが生まれた「かしま街道」と呼ばれるロードサイド飲食ストリートも大手ナショナルチェーンが乱立し、地元の飲食店は危機に瀕している。各エリアごとの商店会や飲食店組合はあるのだが、いわき市全体でまとまった飲食店オーナーの集まりはほとんどない。結局、個々の飲食店としては、「先が見えない」「東京から来たナショナルチェーンに客を取られる」と一人で悩むしかなくなる。同じエリアで廃業や閉店していく飲食店をただ眺めていくしかないという状況だ。行政主導で建てられた商業施設に大きな投資をして出店し、勝負をかけた飲食店のなかにも、期待以上の売上は上げられず苦しんでいる経営者がいた。ただ、そうしたなかでも、飲食店組合に加盟する各店舗が共通の地元食材をつかった料理を提供したり、名産の青のりを練りこんだ「青のり麺」を開発して地元食材として提供する店など、いろいろな取り組みをする動きも見られた。しかし、それを大きな動きにするような仕掛けがない。「青のり麺」も全国放送で紹介さたときは一時的に盛り上がったものの、そのあとが続かない。では、どのような仕掛けをすれば、地元の飲食店が活性化するのか。商工会議所から講師の私に課せられたミッションもそこにあっただけだが、わたしが強調したのは、「危機意識を行動に変えること」だ。東京の飲食トレンドや繁盛店情報をただ研究しても、「それは東京のことだから…」と高をくくっていたら何も変わらない。不況で外食する人は減っている、接待客も急減している、そんな悪くなる一方の環境で手をこまぬいていたら次は自分が廃業に追い込まれる番だということをしっかり認識し、人が外食に戻ってくるためのアクションを起こさなければならない。いわきは小名浜港からあがる鮮魚も豊富。「生魚を出しておけば客は来てくれる」と現状維持型の割烹や和食店もいまは選別されつつある。客を取り戻すためには魚の提供方法を変えたり、サプライズのための名物料理を考案したり、思い切って業態を変えてみるといった行動が必要。それから、飲食店オーナーたちが集まって、地元食材を見直したり、ブランド化のための仕掛けをしたり、場合によっては“B級グルメ”を開発するといったコミュニティづくりが求められている。“食による地域活性化”を自分たちの手で実にしていくという意識改革から始めるべきだろう。地方が元気になれば、日本の外食、飲食は元気になる!

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