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神楽坂の隠れ路地の景色にさらりと馴染む酒場、日本酒と魚料理「酒ト壽」が2月13日オープン。独創的な店舗展開で業界注目の夢屋、小林研氏の新業態

風情を残す神楽坂の隠れ路地に佇む、趣のある古民家が同店だ
1階のカウンター席で存在感を見せるのがユニークな形態の酒燗器は、東京でも数少ない貴重なもの
煎り酒が隠し味の上品な「なめろう」
新鮮でリッチな味わいの「毛蟹のコールスロー」
左よりエディさん、日原さん、杉さん

(取材=にしやま とみ子)


古民家という環境を活かし、独創的な業態を展開し続ける小林氏(夢屋、東京都渋谷区、代表取締役 小林研氏)が期待の新店、日本酒と魚料理「酒ト壽」を神楽坂の隠れ路地に2月13日にオープンさせた。丁寧に仕上げた魚料理をアテに日本酒をゆるりと楽しむ店は、これが酒場、これぞ酒場という小林氏の想いを形にしたもの。

神楽坂の中心地毘沙門天の向かい、気づかずに過ぎてしまうような大人ひとりがやっと通れるほどの細い路地に佇む。誰の目にも長い時間を経て来たとわかる2階建の木造古民家は築70年以上という。木枠の大きな4枚のガラリタイプの引き戸が目を引く同店は、すでに以前からそこにあったかのような熟練した酒場の空気を醸している。ガラリ戸を開けるとオープンキッチンを囲むように設えた清々しいヒノキのコの字カウンターが迎えてくれる。カウンターの上に設置された存在感ある酒燗器は、東京でも数少ないアンティークなもので、酒場の証でもある。正面玄関から靴を脱ぎ上がる2階は下宿屋の時代の名残を感じさせる和室の仕上げとなっている。時の経過を残す空間は、小林氏ならの独創的な世界感が息づいている。

酒場らしい空間にしっくりと馴染む日本酒と共に味わう料理のコンセプトはアミノ酸。昆布、カツオ節の種類、質を選び、さらには魚の新鮮なアラも使い、料理に合わせて使い分ける出汁。こだわりは出汁と向き合い丁寧にひくことだという。調味料には“いしる”に代表される魚醤や煎り酒など伝承される和の味や技も使いこなす。作家、池波正太郎の小説に出てくる江戸料理を現代へ繋げ、日本酒のアテとして仕上げるのは魚介料理のみ。奇をてらわず、素材、出汁の繊細な味を引き立てる料理は、淡々と味わえる料理なのである。

看板料理の一つ、2日間、煮詰めた凝縮した出汁で貝の奥深い旨味を引き立てる「貝盛り浜焼き」(980円)をはじめとして、優しく旨味を実感する「うお吸い」(580円)、「鯛の出汁巻」(650円)といったシンプルだが、手間を惜しまない料理がメニューにのる。毛蟹とキャベツの甘みが絶妙にマッチングする贅沢な「毛蟹のコールスロー」(880円)のような現代の味も。当然、鮮度の良さを知る「お造り」(時価)もあるが、やはり一手間をかけた「金目鯛の煮付」(1980円)、「煮穴子」(880円)、「クエ煮凝」(580円)、「炙り鯖寿司」(480円)などが、おすすめだ。

一律、半合480円、一合850円の日本酒は、同社の酒のプロ、山本氏が厳選したこだわりの純米酒を常時25種類以上揃える。冷酒も用意するが、おすすめは東京で数えるほどしかない独特の酒燗器で温める燗酒。お湯を張った筒型の酒燗器は、上から日本酒を入れ中の管を通り下の口から出るまでに適温に温めるという優れもので、まさに日本酒をゆるやかに味わうということを実感させてくれる。関西では一般的だが関東ではここだけの生ビール「マルエフ生」(450円)も置く。ほかには「チューハイレモン」(450円)、「ウーロンハイ」(400円)、「チューハイセット白」(480円)のみでワインは置かない王道。

お祝い時に使われる語“壽”には長命、いのちといった意味もある。いのちを頂く、料理を食べて幸せになるという想いが込められた「酒ト壽」。文字が持つ奥深い語意を大切にする小林氏の世界観が感じとれる店である。神保町には古民家をリノベーションした新業態、さらにはライセンスビジネスのジビエ業態「罠」を川崎にと、今年も出店を進める同氏に期待である。

店舗データ

店名 酒ト壽
住所 東京都新宿区神楽坂4-2

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アクセス JR飯田橋駅より徒歩5分
電話 03-3267-3355
営業時間 月〜金 17:00〜23:30
土   16:00〜23:00
定休日 日・祝
坪数客数 22坪・40席(1,2階合わせ)
客単価 4000円
運営会社 株式会社夢屋
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※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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