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【シリーズ・超繁盛店を支える店舗デザイナーの仕事】平面図に神が宿る! 坪月商40万超えを可能にする店作りの方程式とは?

全国各地の人気飲食店を率いる若手オーナーや、大御所経営者達から絶大な信頼を集めるデザイン会社が「スタジオムーン」だ。自然素材を用いたどこか懐かしさを感じさせる空間に、営業効率を周到に考え抜いた店舗レイアウト。現在の“酒場ブーム”牽引役とも称されるスタジオムーン的店作りの核心部分とは?
同社代表の金子誉樹氏と、気鋭デザイナー乙部隆行氏に迫った注目の師弟インタビュー!


―金子さんは1991年に独立してスタジオムーンを立ち上げられたのですね。

金子 そうです。独立する前は飲食店専門のデザイン会社にいて、楽コーポレーションの宇野隆史氏とはその頃、僕が20歳の時に担当デザイナーとして知り合いました。お父さん(宇野氏)にはそこから本当にお世話になって、もう30年以上のお付き合いになります。

―御社は「楽」グループや同グループ卒業生のお店を数多く手掛けていらっしゃいますね。

金子 はい、直系は全部ですね。あと卒業生のお店は半分くらい。うちから独立した人間が手がけたものを入れると、全体の7割くらいはやらせてもらっていると思います。

―その後も、イタリアンやバル、居酒屋など、業態を問わず数えきれないほどの繁盛店を手掛けてこられたと思いますが、創業からの25年間でどれくらい作られたのでしょうか?

金子 数えてないですけど、だいたい年間で4,50件くらいなので、25年間でトータルすると1000~1200件くらいだと思います。

―すごい数ですね…。4年前からは福岡・博多にも事務所を作られましたが、あちらにも常駐スタッフがいらっしゃるのですか?

乙部 基本は僕が常駐スタッフです(笑)。こちらの案件も複数抱えているので、どうしても週の半分をいったりきたりになっていますが。
2011年にオープンした中洲の「イル・キャンティ」から始まって、ケイキフードサービスさんが九州初進出した「やさい巻き串屋 ねじけもん」など、福岡エリアでの仕事がだんだん増えて事務所を作った感じですね。特に博多は個人店が多い街なので。

―なるほど。御社が手がけた福岡の「炉端 百式」も “酒場の本質を知るためには百式に行かねば!”と東京の経営者が続々と視察に行っているすごいお店ですよね。ファサードも惹き付けるし、炉端かつ大衆酒場のムードもあって…。
あそこまで完璧に作り込まれた店作りというのは、どうやって生まれるのですか?オーナーさんと一緒にアイデアを出し合っていくのでしょうか?

炉端 百式2乙部 「百式」のオーナーさん(上山 修氏)の場合は“百年続いていく店”がテーマだったので、その理由を探しに二人で京都や大阪、東京、仙台の老舗各店を巡ったりもしました。
うちのお客さんの場合、“長く続く”というコンセプトは「楽」さんも、他のオーナーさんもみんな同じなんですけどね。

―コンセプト決めやオーナーさんとの話し合いには、どのくらい時間をかけられるのですか?

金子 それが、あんまりかけられないんですよね…。飲食店の場合は特にですが。
平均でいえば、お話をいただいてから約2か月半で引き渡し、3ヵ月あればいい方です。まずはお客さんがどういうお店にしたいのかを一緒に話し合い、それを基にレイアウト(平面図)を作るまでに一か月、ほかの図面や見積もりを作成して、その後大体工事に一ヶ月かかるという感じです。

―最初の平面図を作るまでにかなりの時間を要するのですね。

乙部 そうですね。他の部分は後からどうとでも変えられますが、平面図だけは変えられないので。

金子 デザイン屋さんって、目に見えるものの方ばかり考えることが多くて、一般的には平面図をおろそかにしがちなことも多いんですけどね。

平面図にはすべてがある

―素人にはなかなかイメージしにくいのですが、平面図を描くというのは何をどう創り上げていく作業なんですか?

image金子 う~ん、大体平面図がピシッと決まったときには、自分の中で立ち上がりがほぼ完成しているんですよ。あとは、お客さんのイメージに一番合った表現ができる素材は何だろう?と具体的な材料を探していく作業になります。まあ、何はともあれ平面図なんですよね。

―平面図には“ここに厨房があって、ここがカウンターで、”というような情報が書き込まれているわけですよね?

金子 そうです。結局、店が長く続くということは、お客さんが入らないといけないし、売り上げも作っていかないといけない。そうなると、平面図上で一席多く作るか作らないかによって、またそれをどこに作るかによって、一年間の売り上げが一体いくら変わるのよっていう話なんです。そこを突き詰めるのがやっぱり非常に大事な所なんですよね。

―なるほど。「俺のやりたいデザインはこうだ!」という独りよがりな作り方ではないんですね。お店が繁盛するように店舗の在り方を考え抜いてくれるから、飲食店オーナーさんはこぞって御社に依頼するわけなんですね。

金子 大体皆さんそうですね。僕は店を自分の作品だと思ったことは一回もないので。

乙部 うちは営業活動もほとんどしてないですからね。デザインで関わらせてもらったお店に「このお店 気になる方!!」というスタジオムーンのカードを置かせて頂くだけで、あとは全部口コミなので…。

―そうなんですね。デザインのコアな部分やお客さんのニーズなどは、この25年間で変わっているんでしょうか?

金子 例えば一時期個室の多い居酒屋が流行ったりはしましたけど、でも芯に走るものはずっと変わってない気がするんですけどねぇ。
「今これが流行ってるからこれをやりたい!」みたいなお客さんはうちにはあんまりいないですね。「なんでもいいからやってくれ」っていう方はまず最初に断っちゃいますし、一回一緒に仕事をすれば、本当にうちを必要としてくれてるのかどうか、相性が合うか合わないかも大体はわかるので。

繁盛店作りの秘訣

―なるほど。そうすると、「繁盛店作りの方程式」とは何なのでしょうか?

乙部 例えばオーナーさんが独立して最初の一号店は絶対に失敗できないですし、特にうちはしっかりした素材を使うので(値段が)安くもないかもしれないので、必ず一緒に繁盛店を作ろう!という強い想いはお互い絶対に必要ですね。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA金子 方程式があれば楽なんですけどねぇ…。
まずは乙部の言うようにオーナーさんの熱意。あとは、よっぽどの好条件で「先に取っちゃった!」というのでない限りは、候補物件を一緒に見に行く所から関わっていますね。

乙部 そうですね。うちでは、本当に繁盛店を一緒に作りたかったら物件探しからやらないと、いずれムリがくると思っているんです。

―物件の下見から関わるとはすごいですね!現場を見てどんなアドバイスをなさるのですか?

乙部 やろうとしている業態を聞いたうえで、物件のダメ出しもしますし、逆にちょっと曇った立地でもイケるよ、ということもあります。

金子 うちの場合、あんまりメインの通りだとちょっと…となることも多いかもしれないですね。お店のイメージによって、やや路地裏の方がよかったりします。

―確かに、御社は大通りの派手派手しいお店をデザインされてるイメージはあまりないですね。

金子 あんまりガワが強すぎちゃうとお客さんが飽きるし、疲れちゃいますからね。うちらが全面的に表に出るようではダメなんです。

―「さりげなく」が御社のデザインのキーワードだと。

金子 そうですね。
あとは、引き渡しが終了した後も、お店に行った際にどこかよくない部分があったら直接オーナーさんに言っちゃいますね。お客さんて、ちゃんと(悪いところを)言ってくれないので。

乙部 お客さんはもう来なくなるだけですよね。ただよかったか、悪かったかなので。
最初のコンセプトと営業スタイルがずれてくると、店全体がちぐはぐになってしまうので、もしオープンした後にお客さんが入っていなかったら、その理由は僕達にはわかる気がします。だから料理やスタッフ、全部含めて良くないところは結構ずばずば言いますね。

―まるでコンサルのようなお仕事内容ですね。

乙部 その言い方はあんまり好きじゃないんです…(笑)。デザインはあくまで店における一つの要素であって、料理やオーナーさんの人柄も含めて一つのお店だと思うので。

―なるほど。ではチェーン店はあまりやられないんですか?

金子 いや、そんなこともないですよ。「牛角」と塚田農場のデザインスタイルを考えたのもうちですし。…意外とやってるんですよ!(笑)。
今は、一家ダイニングプロジェクトさんや内山君(㈱MUGEN内山 正宏氏)の所なんかもやらせていただいてますよ。

いま、なぜ酒場なのか?

―どこかで、今のお客さんは大手チェーン的なもの、効率追求型な飲食店に疲れてきているのかもしれないと感じます。その辺りをお二人にお聞きしたいのですが、“今、なぜ酒場なのか”、どうお考えでしょうか。

大衆酒場 酒呑気まるこ2乙部 そうですね、「サードプレイス」じゃないですけど、自分にとっての居心地のいい空間っていうのは、みんなそう幾つもあるわけじゃないのかなとは思いますね。

金子 お金の心配をしないで気軽に入れるチェーン店と、ホッと落ち着ける個店と、両方あっていいと思うんですよ。ただ確かに“酒場”、いま流行ってますね。
これは昔からだと思うんだけど、呑みに行ったらやっぱり喋りたかったりするじゃないですか。隣のお客さんと仲良くなったり、店員さんと語り合ったり。そういう空間を作りたいっていうのはずーっとあります。だからやっぱりオープンキッチンで、お客さんに「カウンターに座りたい」って言ってもらえるお店じゃないとダメだよっていうのはずっと社員に伝えてますね。

―なるほど。まずカウンターから埋まっていくようなお店ということですね。

金子 そうです。例え一人で来ても、店員さんとか、隣のお客さんと仲良くなれるかどうか。そこがやっぱり家呑みとも違うし、チェーン店とも違うところなので、そこは常に求めていきたいなと思ってます。これまでうちがやった居酒屋さんはほぼ全てオープンキッチンですね。

―そうですね、やっぱり喋りたいですよね。それが居酒屋、酒場の原点かもしれませんね。では、御社がデザインするお店では、カウンターはすごく計算して作り込まれているんですね。

金子 そこはこう見えても意外と計算してますね(笑)。あんまり近すぎてもっていうのもあるし、話しやすい距離感っていうのが実はあるんですよ。

―ここ(恵比寿「おじんじょ」)も、7.4坪で一体何席あるんですか?限定された空間にカウンターがあり、テーブル席があり、2階部分があり…。すごい席効率で、いろいろなシーンが作り込まれていますね。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA金子 これもやっぱり彼(「おじんじょ」の高丸聖次氏)がやるって言ったからこそ実現できるんですよね。どうやったらお客さん一人一人にサービスして楽しんでもらえるか、その景色をオーナーさんが見えてないとダメで。彼はすごい気が回るので、2階ありの27席で作っても大丈夫なんです。

―じゃあ、もし気の回らないオーナーさんだったとしたら、席効率は強化できないということですか?

金子 まず最初に「できる?」って聞きますね。

乙部 一回平面図を作って、席数などの打ち合わせをして、要望によってまた一から作り変えることもあります。

―それが“一席もおろそかにしない”ということなんですね。

金子 おろそかにしないのか、逆にそこをおろそかにしてキッチンの通路を大きくすることによってスタッフの数を一人減らして経費を削減するのか、店作りにおいてどっちを取るかはすごいせめぎ合いなんですよね。

―なるほど。そういえば渋谷の「酒呑気 まるこ」さんも極限な店作りですよね。

乙部 あそこは13坪で、立ちを入れて44席想定です。あれも楽出身の小嶋さん(コジマ笑店 小嶋崇嗣氏)だからできるんです。立地的に家賃も高いので、ギリギリの何ミリっていう世界で居心地感を作ってますね。

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