
【お話を伺った株式会社ジュネストリー 代表取締役の東明 遼さん】
大山:東明さんさんは、どんなところで飲食キャリアがスタートしているんですか?
東明さん:始まったのは高校生ぐらいからで、アルバイトから焼き鳥屋で働いていました。
大山:そうなんですね、地元はどこなんですか?
東明さん:品川区です。チェーンのお店なんですけど、ジェーシー・コムサ(現株式会社デルソーレ)って会社で、そこでアルバイトから社員になったのが一番最初ですね。母親がそこでランチのパートをやっていて、夜、人が足りないから『息子出れない?』みたいな感じから始まりましたね。
大山:それはご縁ですね。そこからどうなっていくのですか?
東明さん:それで高校生の時にアルバイトで入って、そのまま僕、社員になったんですよ。そんな流れでした。そこで4年間やりました。
大山:その後独立ですか?
東明さん:18歳から22歳まで働いて、その後独立ですね。
大山:早いですね!最初から「均タロー」ですか?
東明さん:いいえ、最初は鶴見で焼き鳥屋やりましたね。100円焼き鳥をやっていました。
大山:鶴見っぽいという感じはしますが、最初からそういう均一みたいなのがいいなっていうのはあったのですか?
東明さん:確かに発想として低単価でしたね。特段サービスとかに特化したお店とかいうわけではなかったですね。どちらかというと商売系から始めたので、想いというよりは「安価な方がいいんじゃないかな」という考えで。

大山:鶴見でお店出すわけですが、いきなりいい感じだったのですか?
東明さん:いやいや、全然です(苦笑)。徒歩10分ぐらいの所でかなり駅から離れていたんですよ。それしか出せる選択肢がなかったので。それで自己資金でやっていて、自分が食べていくにはギリギリみたいな感じだったんですけど、どうしてももっと駅から近いお店がやりたくなっちゃって。それで、すぐ1年後に今度は大田区の平和島に出しました。今度は逆に徒歩30秒で9坪30万円ぐらいのところを借りて、ちょっと割高ですけどそこにお店を増やしましたね。
大山:そちらは当たっていそうですね。土地柄的に。
東明さん:最初は良かったんですけど、オープンして3ヶ月後ぐらいに近くに「かぶら屋」さんができちゃって(汗)。平和島って焼き鳥屋さんは結構あったんですけど、焼とんがなかったので、僕焼とんでいったら、かぶら屋さんと焼とんで被っちゃって(汗)。で、あちらは80円じゃないですか。僕ちょっと値上げして150円とか強気でやっていたんですけど、それで一気に下がって。ダメまではいかなかったですけど。
大山:確かに「かぶら屋」さんは強い・・・。競合環境ということすね。その後どうなるんですか?
東明さん:それで、僕サラリーマンの時は売上800万円ぐらいのお店の店長やっていて、ある程度規模があるお店を任せてもらっていたのですが、自分でやった鶴見の時は120万円ぐらいしか売れないんですよ。平和島も行っても170万円〜180万円とかで。思ったより全然売れないなっていうのがあって「なんか良いFCないかな」みたいなのをネットで検索したら、「鶏ヤロー」の和田さんのブログが出てきたっていう感じですね。それでそこに問い合わせをして、当時和田さんの下に任せていた人がいたのでその方が『次の日来れる?』みたいな感じだったので「じゃあ明日行きます」みたいな感じで、お昼に上野のカフェで会いました。
大山:おーなるほど!それはいつごろのことですか?
東明さん:僕が25歳ぐらいの時ですね。だから7年前か8年前ぐらいですね。
大山:その時とかだったら「ガブリチキン」とか「串カツ田中」とかあったかもしれないけど、なぜ「鶏ヤロー」を選んだのですか?
東明さん:やっぱり加盟金がない(当時)ことですよね。加盟金が300万円とかってなると、もうその時点で無理だってなっちゃうので。
大山:なるほど、結構調べたのですね?
東明さん:結構調べましたね。そこら辺のリテラシーというか情報収集は結構好きで、オタクみたいな感じで外食についてはすごく相場観とかはありましたね。
大山:それで「鶏ヤロー」をやるのですか?
東明さん:はい、そこからはもう早かったですね。蒲田のお店で。漠然と家から近い方がいいなっていうのがあって、それで蒲田で「鶏ヤロー」をできる物件探したんですよ。結構すぐ見つかって、クラブか何かの居抜きで始めました。
大山:それで、実際加盟してみてどうだったんですか?
東明さん:それがまた売れなくて(苦笑)。当時まだ鶏ヤローって全然なかったので、10軒あったかどうかぐらいだったので、キャバクラとか入っている雑居ビルの2階でやってたので『ハイボール50円って他で何でぼったくられるの?』みたいな(笑)。結構上がってくる人、上がってくる人がそう言って、それだけ確認して帰る。みたいなのがありましたね(苦笑)。
大山:キャッチとかそんなのも多かったからですからね、昔は(汗)。それでその後、復活するんですか?
東明さん:そこから『移転したほうがいい』とか、結構和田さんにアドバイス貰ったりして。そのタイミングでコロナが来て。それで本部が提供していたメニューから、ちょっとコロナ中に時間があるから、自分たちで、僕らも調理の専門学校出てる子とかもいるし、僕元々料理やっていたので、ちょっと料理内容を勝手にじゃないですけど、ブラッシュアップしようっていうので、ブラッシュアップしたらちょっと売れるようになりましたね。
大山:そういう自由度は「鶏ヤロー」さんはあるんですね?
東明さん:「鶏ヤロー」さんはもうずっとそうでしたね。今はちょっと厳しくなりましたけど、昔は『何やってもいいよ』みたいな感じで。
大山:コロナになる前に、何店舗だったんですか?
東明さん:コロナになる前は、3店舗ですね。薄利で10万円とか20万円利益でみたいな感じでやっていましたね。
大山:ということは「均タロー」の業態はコロナ後に生まれているのですね。
東明さん:そうです。
大山:すごいですね。コロナが来た時どんな感じでしたか?
東明さん:いや、とにかくやばいと思ったので、僕がバイトしていましたね。他社で。今思えば何の足しにもならないですけど。動いてないと不安っていう感じでしたね。
大山さん:わかります。。お店は営業していましたか?
東明さん:最初閉めていたんですけど、途中からは営業して、そこから復活した感じですね。
大山:それで「均タロー」が生まれていくわけですが、どういうタイミングでいつ頃出来たのですか?
東明さん2022年の7月に1店舗目をオープンしたんですけど、それまでに鶏ヤローも下北沢と横浜に出したり、着実に増えていたんですね。コロナ中に借りたお金で、鶏ヤローにフルBETして、練馬も出したし5軒ぐらいは出してやっていたんですけど、やっぱり直営も増えてFCさんも増えて、どうしても出店できるエリアがどんどん少なくなってきたのは、僕の中で結構懸念していて。それで和田さんと飲んでいる時に「新しい業態を今やりたいんです」っていう話して。元々自社から始まっているので社内でも『社長、また自分たちで業態やりましょうよ』みたいなのはあったんですよね。でもやっぱり資金を稼ぐっていう目的で言ったらFCは手段としてはめちゃくちゃ良かったので、そこでしっかり貯めて、それで「俺、(和田)社長に言ってくるから」って言って、それで「均タロー」が誕生したっていう感じですね。
大山:和田さんそうに言った時、どんな感じだったのですか?
東明さん:最初はいいよみたいな感じでした。多分そんなに当たると思っていなかったんじゃないですかね、当時(笑)。『まあ、やってみればいいじゃん』って感じでしたね。
大山:均一の価格帯なんですけど、それは構想にあったのですか?
東明さん:あまり考えてはいなかったのですが、鳥貴族さんの同プライスものを一段階下げたら面白いんじゃないかなと思っていて。それで、ドリンク199円均一で最初始めたっていう感じですね。どうしても大手さんは本部経費やらで、そこらへんで食うじゃないですか。僕らはそれがないので、そのままプライスに当ててもいいなっていうのはあったんですね。
大山:なるほど。オープンした1号店はどこなんですか?
東明さん:下北沢です。鶏ヤローと業態が似るので、いろんなところに行ったんですけど、たまたま後付けですけど、僕の下北沢の「鶏ヤロー」と下北沢の「均タロー」がカニバらなければ、業態として成立するじゃないですか。「鶏ヤロー」の近くで「均タロー」やって『売り上げ下がったんだけど』みたいになっちゃうと困るなって思って。たまたま下北沢でやって、どっちも売り上げ変わらなかったので、じゃあこれなら同じ駅に出しても大丈夫ですよねっていうのも、一つありましたね。
大山:仁義は通したわけですね!それとマーケットにはまったわけですよね。下北沢店はうまくいくわけですよね?
東明さん:そうですね。ぼちぼちいいなってなっていて、そこは27坪で60席のお店だったので「席数がちょっと足りないな」っていうのが分かって、それで2023年の3月に大宮に出店するんですよ。それが70~ 80席近くのお店で、そこも最初は売上、低空飛行から始まったんですけど、結局1000万円ぐらい売るようになりました。
大山:何階のお店ですか?
東明さん:2階です。そうすると席数が重要なんだなってことが分かって、手探りで。
大山:「均タロー」のポイント、何がウケてるって思いますか?
東明さん:いろんな企業さんを参考にしたので、フリーと予約のバランスですかね。「鶏ヤロー」をやってて、フランチャイジーながらに工夫できる部分や感じたところをブラッシュアップしたので。例えば「鶏ヤロー」って、ほぼほぼ予約は入らないんですよ。コースが出ないんですよね。だからそこをコースで埋められたらいいなとか、料理ももうちょっと幅広く提案できたら上の年代の人でも来てもらえるのでは?とかっていうのはずっと考えていました。あとは結果的にはまったかわからないんですけど、「鶏ヤロー」さんとちょっと違いを出さないと『全く一緒じゃないか』って言われちゃうので、お通しをゼロにしてみたりとか、そういったところが結果的に上手くいったように感じています。
大山:2023~2024年に入ったらコロナが明けるんですけど、コロナ中に何店舗出したのですか?
東明さん:コロナ中は多分5~6店舗ぐらいですね。練馬、下北沢、横浜、とあと2店舗ですね。
大山:出店するエリアは、どう決めているんですか?「均タロー」さんの出したいエリアや物件とか、どういう感じなんですか?
東明さん:今はターミナル・準ターミナルみたいなところで出店していて、僕あんまりそういうデータとかないので、基本的にフィーリングなんですけど、お店の顔がいいとか、入り口の導入がしっかりしているとか、そういったところが多いですね。
大山:だいたい路面の近くですか?
東明さん:はい、出来れば2階までですね。空中階はやらないです。空中は渋谷だけがちっこい顔でやってます。基本的には「鶏ヤロー」さんで培ったものを、そのまま応用しているような感じですね。
大山:どんなメニューを、やっているんですか。
東明さん:「均タロー」は唐揚げ串っていう、唐揚げが棒に刺さったものを99円で出していて、あとは焼き餃子299円と、チャーシューエッグこの3つが一応名物になっていて、一般的には総合居酒屋に近い感じですかね。
大山:それで今回、新しく「魚えもん」という魚の業態をオープンさせたわけですが、これはどういう着想で開発したのですか?
東明さん:これは本当にこの物件が決まってから考え始めたんですけど。やっぱどうしても『パクリじゃん』みたいなのは、どうしてもあるので(汗)。自分の中では「全然違うものをやりたいな」っていうのはあったんですね。

【新業態の「魚えもん 柏店」。同じ通り、100mほど先に「鶏ヤロー」の直営店がお店を構える】
それで、この物件取った時もやっぱり「鶏ヤロー」さんが近いので、またここで「均タロー」出してってやってもしょうがないなっていうのはあって。特別なのを探していった時に、ふとこれもまた「鳥貴族」さんなんですが、「鳥貴族」さんの価格帯の魚の業態があっても、僕はいいんじゃないかなと思って。昔の280円の時はやっぱりできないですけど、今上がっていったので、390円とか399円ぐらいだったらいいんじゃないかなって。あの焼き鳥のももとか砂肝の部分を、タコとかマグロとかにしてって。

【安い!という印象より「頼みやすい」というプライス設定が巧い】

【一人前780円(税別)の「魚えもん刺し盛り(写真は3人盛り)」】

【卓上で炊き上げる「とり釜飯」は、なんと399円(税別)】
大山;おもしろいですね。あとは「均タロー」がある街とか駅でも出せますよね。
東明さん:そうですね。僕の先輩がいろいろな業態持っているので、同じ街で物件が出た時に出店に困らないっていうのはずっと聞いていたので、それはやっぱりやりたいなと思います。
大山:ただ東明さん実際で言ったら、本当は業態作るのが好きですよね(笑)?
東明さん:好きですけど、やっぱり労力がどうしてもかかるのと、ほぼほぼ僕一人と、あとマネージャーさんとやっているので、右腕みたいな方がいれば一番いいんですけど、まだ教育段階なので、どうしてもちょっと労力がかかるっていうのはすごい今回でもまた実感しました。
大山:会社が急成長するから、儲けるスピードと、ものづくりするスピードが合わないっていう感じですかね。魚えもんさんは初動はどんな感じですか?
東明さん:めちゃくちゃいいですね。今までで感じたことないぐらいの初動の感じです。4月ぐらいからこの構想をやっていたので、相当準備はしてきたし、できる策は全部出してきたんですよ。SNSだったり、ポスティングだったりとか、全部やったので、その結果が出たなとは思っていますけど。
大山:「均タロー」の客単価はどのくらいですか?魚えもんは?
東明さん:均タローが2300円とか2400円ぐらいですね。ここは3300円ぐらいですね。
大山:ということは、完全にペルソナ設定が変わるわけですね。
東明さん:客層も全然違います。やっぱりターゲットが広いですね。16時とかからご年配の方たちがカウンターから始まるっていうのは、全然均タローの業態と違うので。日曜日とかは子供連れがお座敷でとかってなってくるので。あとはちょっと原価のところだけは心配で、どのぐらいで着地するかなっていうのは心配ですけど、走ってみないとわからないですね。
大山:会社としてなんですけど、数値的に定めている目標みたいな短期、中長期であったりするんですか?
東明さん:あんまりないんですけど、こういう取材の時は50店舗やりたいとは言っているんですけど(笑)、合わせて直営で50店舗やりたいな。40歳ぐらいまでにできたらいいのかな。この「魚えもん」の業態は1月に新橋でオープンが決まっています。頑張ります。
大山:今で、何店舗ですか?
東明さん:今31歳で直営が17店舗です。均タローやってもらっているFCが4店舗ぐらいあります。それも和田さんの全部繋がりで『鶏ヤローやってて、ちょっと均タローやりたいんだけど』みたいなケースです。それで「またいいですか」みたいに言ったら『また俺の顧客取りやがって』って言われながら「すみません」って言って(笑)。
大山:数値的な意味じゃなくて、飲食業界で自分たちの会社はどうしていきたいみたいなのはあったりしますか?
東明さん:目の前のことをコツコツと、ですね。外食産業が好きで、人が好きな仲間を沢山集めて出店していきたいと思っています。
大山:本当に飲食から生まれた人という感じがしますね。真面目で素晴らしいです。ありがとうございました!
編集後記
東明さんを一言で表すとまさに「愚直」。その言葉がぴったりな飲食が大好きな31歳の好青年でした。20代前半で独立をして毎日現場に立ち、今も現場第一主義で店舗展開は二の次、街のお客さんに喜んでもらうことを第一に店づくりをしている愚直な姿がインタビューを通じて伝わってきました。ニュータイプの若手飲食店経営者としてこれからも応援していきたいと思います。(聞き手:大山 正)


















