スペシャル企画

【スペシャル企画】インバウンド特集 vol.2/圧倒的なブランド力が引き寄せるインバウンド需要

訪日外国人が2000万人を超えて、インバウンド需要が高まるとともに、少なくない飲食企業がその対策に頭を悩ます。ただ対策に手間取る企業がいる一方で、外国人旅行客の集客に成功している企業も多い。ハーバーハウス(福岡県福岡市、代表取締役 高橋和久氏)も、そうした企業の一つだ。特に同社が展開する「釣船茶屋ざうお 新宿店」は、圧倒的なブランド力と発信力で、連日、多くの外国人旅行客が集う。一体どのようなインバウンド対策をしているのだろうか。執行役員で飲食事業本部長の小野義和氏へのインタビューを通して、同社のインバウンドに対する考えに迫っていく。
【文中、小)=ハーバーハウス 小野氏、Q、大)=フードスタジアム 大山】


大)「釣船茶屋ざうお 新宿店」に行きましたが、すごい人気ですね。訪日外国人も多くて、インバウンドも盛り上がっていました。

 

小)ありがとうございます。ブランドの知名度が浸透したからでしょうか。お蔭さまで、海外の方も頻繁に利用していただけるようになりました。

 

大)現在、「釣船茶屋ざうお」は、13店舗の展開ですよね。

 

小)はい、その通りです。そのうち直営は7店舗で、関東だと新宿と渋谷、目黒、所沢の4店舗を展開しています。中でも新宿店は、インバウンド需要の盛り上がりが顕著ですね。時間帯によっては、店内が外国人観光客だけというケースもありますから。なんば店はtriplaさんからの集客も結構あるみたいで、ありがたいです。

 

大)それはすごいですね! 何か特別なインバウンド対策を行っているのですか?

 

小)いや、実を言うと、特に対策はしてはいません(笑)。当社から仕掛けたことと言えば、2,3年前、台湾と香港の旅行雑誌に掲載をしてもらったくらいです。来店のキッカケは、ほとんどが口コミだと思います。ご自身でインターネットを検索して来店される方が多くいる印象ですね。そうした流れの一環だと思いますが、最近、アジアだけでなくヨーロッパの国からの取材も増えてきました。

 

大)FACEBOOKやインスタグラムといったSNSが当たり前になったといはいえ、海外の方も口コミで来店するというのは、なかなかない状況です。やはり業態に力があるからこそ、実現できる状況なのではないでしょうか。全国探しても、店内に船と釣り堀がある酒場なんてありませんから(笑)。

 

小)確かに、あまりないかもしれませんね(笑)。そもそも「釣船茶屋ざうお」が誕生したのは、今から20年ほど前のことです。倉庫だった建物を店舗に改装することにしたのですが、その広々とした空間を見た社長の高橋が「フロアの中央に大きないけすと水車を作ろう」と言い出して。

 

大)斬新すぎるアイデアですね!(笑)

 

小)はい、私もそう思います(笑)。結局、水車を置くスペースはなかったのですが、その代わりに「マストに見立てて釣り船を作ろう」という話になります。そして、釣り船といけすができたら「魚が釣れるから、せっかくならお客さんに釣ってもらおう」となって「釣船茶屋ざうお」の業態が完成しました。当社なりに顧客視点を追及した結果、誕生したブランドとも言えるかもしれませんね。

 

大)徹底した顧客視点から誕生した業態だからこそ、訪日外国人客も呼び込めるのでしょうね。インバウンドだけに特化して店作りを行うケースもありますが、業態が深化されておらず、ただ和の要素を詰め込んだだけの店も少なくないです。私自身、海外に行った時、いかにも日本人向けに作られた店には入りたいと思いませんし。やっぱり、その国の人に支持されるから、海外の人も「その店に行ってみたい」という気持ちになるのではないでしょうか。

 

小)同感です。インバウンド需要が盛り上がっているからといって、それに合わせすぎると軸がぶれてしまします。そうなると、国内のお客様に支持されなくなって、その結果、海外からの方も少なくなるでしょう。まさに本末転倒です。

 

大)あくまでもお客様の満足が第一優先で、目的と手段を混同してはいけないということですね。そうした考えを落とし込めているからでしょう。「釣船茶屋ざうお」さんは、小さなお子さんも楽しんでいて、ここでしか味わえない体験にみんな夢中になっています。釣り上げたときに店内になり響く太鼓も印象的です。

 

小)ありがとうございます。「釣船茶屋ざうお」だからこそできる取り組みを実施しているので、そう言っていただけるとうれしいですね。例えば、店内では、自分で釣った魚を捌いて食べることができます。また、お子様がお父さんやお母さんにお寿司を握ってふるまえる「お寿司体験」も定期的に開催中です。そうした企画が日本独自の文化を反映している一面があるからでしょうか。家族連れのお客様だけでなく、外国人旅行客の方々が楽しむケースも珍しくありません。

 

大)日本文化に対する訪日外国人客の期待が大きいということでもあるんですね。ただインバウンドが増えれば増えるほど、店内のオペレーションは大変ではないですか? 外国語を話せるスタッフが多くいるなど、何か対策をしていますか。

 

小)中国人や韓国人のスタッフもいたりして、外国語を話せる人材はいます。しかし、力を入れて採用している訳ではありません。傾向的に、九州ならアジア圏のお客様が多くなり、都内ならヨーロッパの方が増えてくるので、それに合わせてスタッフを配置できたら理想的なのですが。その代りではありませんが、店内には、英語と中国語の外国語メニューを用意しています。写真を多く使用するなどして、訪日外国人客でも分かりやすい作りにしているのが特徴です。

 

大)なるほど、料理名の横に写真が貼ってあるので、海外の方でもどんなメニューかイメージしやすいですね。

 

小)はい、外国語のメニュー導入後、料理に関する質問は劇的に減りました。しかも効果は、それだけではありません。オーダーの時も指さしで注文をしてくれるため、外国語が堪能ではないスタッフでも安心して海外のお客様の対応ができるようになりましたね。

 

大)訪日外国人客だけでなくスタッフのストレスも減らせようですね。現在、海外の方の顧客満足度はどうなのでしょうか。わざわざ検索して来店される方もいるので、来店前の期待値も高いという印象があります。

 

小)今のところ、満足して帰っていただけています。ただ引き続き、かけがえのない思い出となるように取り組んでいく姿勢は欠かせません。私たちの店舗が、そのまま日本という国の印象になりますからね。「スマイルコンテスト」という社内行事を行ったりして、サービス力の向上に常に努めています。

誕生日のお祝いを盛り上げるスタッフ

 

大)そうした見えない努力もインバウンドの集客に繋がっているのですね。「釣船茶屋ざうお」というブランドの強さを改めて感じることができました。今後は、どのような展開をされていくのですか?

 

小)「釣船茶屋ざうお」は、まだまだ可能性のある業態です。今年の12月にはニューヨークへの出店も計画しています。それを皮切りにして、国内外で積極的に出店をしていくつもりです。それと同時に当社では「博多三昧 まるとく食堂」や「めしや多幸橋本店」、「かしわ屋源次郎」といったブランドも展開しています。ビルテナント用の業態として、そうした食事中心の店舗も深化させて、当社の新たな武器にしたいですね。

 

大)さらなる飛躍を楽しみにしています。今日は、インバウンドに対する貴重な意見をお伺いすることができました。お時間をいただきありがとうございました。

 

 

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