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厚労省が「喫煙率削減数値目標」設定


「2022年までに喫煙率を12.2%以下にする」「飲食店で月1回以上受動喫煙の機会を有する非喫煙者の割合を50.1%から15%へ下げる」–そんな、飲食店関係者には寝耳に水のショッキングな喫煙率削減目標が盛り込まれた「がん対策推進基本計画(変更案)」素案が2012年2月、計画案が3月に厚生労働省のがん対策推進協議会にて諮問答申された。

喫茶店や居酒屋で、愛煙家たちがたばこの煙をくゆらし、談笑しながらコーヒーを上手そうにすすったり、酒を楽しく飲み交わしたり・・・そんな光景がひとつの文化として尊重されてきたのはいつまでだったのだろうか。昨今、飲食店を始めとする受動喫煙に関する御上からの締め付けは厳しくなる一方で、つい先日までも、厚生労働省健康局長の「受動喫煙防止対策」に関する各自治体への通知から始まり、労基局からは職場における受動喫煙防止対策の強化が盛り込まれた「労働安全衛生法」の改正案が国会に提出されるなど、たばこは多方面から一斉に規制の対象として槍玉に挙げられている。

そこへ追い打ちをかけるように、今度は厚生労働省健康局により、次期「国民健康づくり運動プラン」(以下健康日本21)に関する動きが推し進められている。「健康日本21」とは生活習慣等の改善を通じて国民の健康増進を図ることを目的とし、栄養・食生活や、身体活動・運動、休養・心の健康、たばこ、アルコールといった国民の健康に関わるさまざまな分野において数値目標等を掲げ、それに基づき啓発活動等を推進するといった国レベルの対策である。2000~2010年の第1期を経て、次期プランのスタートとなる2013年に向け、さらなる改善を図っていくべく主要ターゲットとして挙げられたのが、「成人の肥満者」や「多量飲酒」など改善が進んでいない項目がほかに多々あるにも関わらず、またしても”目標値に達していないが改善傾向にある”と評価を受けていた「タバコ対策」だった。そして、第2期(2013~2022)の10年間でタバコを狙いうちしていく」、そんな国の強い意志とともに打ち立てられたのが、健康局や労基局など各局を横断して厚生労働省全体として取り組む姿勢を示唆する、「2022年までに喫煙率を12.2%以下にする」という数値目標だった。因みに冒頭の「がん対策推進基本計画(変更案)」もその数値を明確に盛り込んだものである。

ここで何より業界にとって見逃してはならないのは、この数値目標は、現在の日本における成人喫煙率19.5%を2022年までに12.2%に削減するという内容のものだが、そのプランの中に、なんと「飲食店で月1回以上受動喫煙の機会を有する非喫煙者の割合を50.1%から15%へ下げる」といった受動喫煙に関する目標までも含まれているのだ。しかもこちら、国会での審議を要しない”厚労大臣告示”という厚労省のみで一方的に決定する方法で発表されるというのだから憤りを覚える。

というのも、実際、数値が達成されるか否かは別として、考えられるのは、この目標値を目安に受動喫煙防止条例など規制を強化、あるいは新規に検討する自治体が急増することだ。これまで、先行して受動喫煙防止条例を施行した神奈川県では、実際、飲食店におけるかなりの疲弊や反対の声が上がっている。にも関わらず、そうした現状への理解はまったく示さず、”国民の健康づくり”という観点のみから、さらなる規制強化の方向へと歩を進めるとはいかがなものか。

今のところターゲットとなっているのはタバコであるが、今後、飲酒や高カロリー摂取など様々な面において”国民の健康”という主張のもと厚労省の規制が及ぶ可能性もある。果たして、そこに実情はどれだけ加味されるのだろうか。実際、この10年間で国内たばこ総需要は約35%減と減少しているにも関わらず、日本人の平均寿命は増加の一路を辿り、一方で、肺がんにおける死亡率は一環して増加傾向なのである。

つまるところ、日本とは、御上がやろうと決めたら実情がどうあっても実行できてしまう現状なのだ。特に、”健康”を理屈固めでカサに取られたら飲食店は厳しい。食を楽しんだり、人々のコミュニケーションの場として生活に欠かせない一方で、見方によっては不健康の坩堝。喫煙にはじまり、酒、料理、はたまた深夜まで続く営業と、まさにどこまででも規制できてしまう対象である。

“国民を健康にしていこう”という志は大いに結構。しかし大事なのは”心身の健康”、つまり”働く自由”や”憩う自由”、ときには”羽目を外して楽しむ自由”だ。クリーンな世の中を追求していった先に、そんな国民の自由、引いては成熟した国家があり得るのか・・・。本当に国民のことを考えているのか、はたまた一部の者の主義主張の実現の場だけで終わっていないか。今後の国の在り方を左右する大きな問題として、現場で実際にがんばっている人々の実情も理解して審議を薦めてもらいたいものである。また、飲食店関係者はこういった流れをしっかりウォッチし、常に機会を捉えて、おかしいと思ったことには異論を唱えていく。それが、活気ある自由な経済活動にとって必要なことなのではないだろうか。

※現在、「がん対策推進基本計画(変更案)」に対するパブリックコメントの募集が行なわれている。(2012年3月2日~4月1日) 以下のURLより応募が可能である。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495110426&Mode=0

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