スペシャル企画

スペシャル企画 第2回  外食産業を揺るがす神奈川の「受動喫煙防止条例」を見据え、未来社会に向けた“喫煙者と禁煙者の共環境づくり”はいかに!? 新たな試みを探る!!

“第二弾/共存空間作りに挑む飲食経営者篇” 全国の外食産業関係者に向け、タバコ規制条例に関する問題意識を高めるべく始まった本連載。第一回は、今春、神奈川で制定された「受動喫煙防止条例」によってリアルに起こり始めた問題を広く伝えるべく地元飲食店経営者の生の声を掲載した。相次ぐように、株式会社ゼットン(名古屋市中区、代表取締役・稲本健一氏)ほか3社によって復活を果たした横浜マリンタワー内でも、同条例を見越した100平米以下のシガーバー「mizumachi bar」が誕生し話題を集めている。大物経営者が徐々に同条例対策に乗り出し始めるなか、第二弾特集では、都内でいち早く同問題の対策に取り組んでいる経営者を取材した。 株式会社アクアプランネット 代表取締役 福政 惠子氏 教育、ビューティー&ヘルス、フラワーにフードサービスと、多角的な事業を取りまとめる経営力と広い視野を活かし、今話題の「東京もっと元気に」プロジェクトの発起人になるなど、現代社会を多面的に捉え“成熟した社会”作りへの取り組みを続ける株式会社アクアプランネット代表取締役の福政惠子氏。今春、池袋エチカにオープンさせた新業態「エピスカフェ」では、“喫煙者と禁煙者の共存”をテーマにした新たな試みを始めた。その具体策も踏まえ、タバコ問題に関する見解を語ってもらった。


 

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 −−分煙に関する画期的なシステムを導入されたという3月オープンの池袋エチカ内「エピスカフェ」について、どういうコンセプトのお店なのか伺えますか?

5業態7店舗を運営していた我が社にとって8店舗目となる新業態です。コンセプトは、今の時代、食べることに関してどちらかというと、これは食べてはいけないとか、これは安心できないとか、マイナスの気分ですよね。でも食べることを引き算ではなく生きることへの足し算として前向きに考えていきたいっていうところでスパイスやハーブをテーマにしています。

−−健康ブームをプラス思考で捉えた店作りと?

例えば、スパイスって摂取することで、血管を強くしたり、いろいろな働きがある。ヘルスっていうとすぐカロリー数とか取りあげられがちですが、取るものによっては代謝を促してエネルギー消費量も高めてくれる食材もありますし、使うことで味や香りに彩りがでて減塩効果が得られるものも。さらにいえば、おいしいことはもちろん、女性にはきれいになれる要素も重要ですよね。そういうのも大切にしていきたい。これは社風と関係が深いのですが。もともと我が社のコンセプトが「for Living Well」。ゆりかごから墓場までじゃないですが、どう幸せに輝いて生きるかっていうのをサポートするのがテーマなのです。よりよく生きるっていうことを考えた場合に、自分の体って食べ物でできているので、なにを取っていくかがすごく大切。脂肪分もある程度付いてないとダメだし、植物性だけだと実はお肌のツヤが失われたり。要は、バランスですよね。体を目覚めさせていくためには、感動を目から入れたり、耳から入れたりと、五感で感じるってすごく大事で食べる事も同じ。そこを改めて見つめ直そうという業態です。

−−そこで本題ですが、この「エピスカフェ」で分煙に関する新たな試みを導入されたということで、まずそこに敢えて取り組んだ見解を教えていただけますか?

今、神奈川の「受動喫煙防止条例」が世間を騒がしていますが、そもそも私個人のタバコに対する考え方も分煙派なのです。今、8店舗ありますが、私どもではどこの店でも吸える。まったく吸えない店っていうのはないのですよ。それがこだわりでもあって。

−−時代の流れとして“禁煙”の風潮も強いですが、そこにこだわる理由とは?

純粋なカフェだったら全面禁煙でもいいと思うのです。でも例えば「エピスカフェ」についていえば、夜はビストロになるのでワインとかお酒が入る。で、タバコは法律で禁止されているわけではなくて。アルコールも飲み過ぎたらダメなわけじゃないですか。あれもダメ、これもダメじゃなく、やっぱり自分で選択していく自由というのがいると思うのです。タバコも一緒。嗜好品なので。私自身吸わないですけど、酔った時に吸いたくなる時もありますし、なんとなく喫煙者の気持ちも分かるのです。あれは本当に嗜好品でスタイル的なもの。嫌な人は吸う必要はないし、でも吸いたい人が自分で決める権利はあってもいい。それは行政が決めることではないと思うのです。もちろん、駅中とか公共施設とか、ここはダメっていうのは当然あっていいと思うんですよ。でも、きちんと分煙して、吸いたくない人に迷惑がかからないのであればいいんじゃないかと。今後も、アルコールが飲めるところは分煙にしていきたいと思っています。神奈川の条例が施行されるにあたって“喫煙者と禁煙者の共存”をテーマに新しい試みに取り組むことにしましたが、それは“選択の自由”を守りたい気持ちも大きかったから。

−−ある意味、それが成熟した大人の社会の姿と?

そう、子供じゃないので。いいか悪いかっていうのを選択する自由は残しておかなければ。法律で禁止されていないものを行政が規制するのは全くのナンセンスだというのが私のマインドにはあります。もちろん、他人を嫌な気持ちにさせないというのは大前提。カフェで女の人がすごく多くてタバコの煙を嫌がるっていうのだったら禁煙にすることもあるかもしれないけど、基本的に私たちのお店は夜はアルコールがでる。で、ちょっと色気のあるお店作りをこれから先もしていきたいので。そういう意味でもタバコは嗜好品というひとつのアイテムとしてありだと考えています。昨今、タバコの規制が始まった先進国では、カフェ文化がダメになってきましたよね。それは、そういったある種の色気がなくなったのも原因のひとつという気がします。

−−なるほど。そこで、「エピスカフェ」に分煙を導入したのはどういう経緯で?

私のタバコに対する考え方がこれまでお話したような見解だったのと、ちょうど神奈川の条例が施行されるタイミングもあり、この際、すぐに東京にも波及するであろう将来を見据えて“喫煙者と禁煙者の共存”が可能となるMAX の仕組みを取り入れた空間作りを試してみようかと。多くの人が集う駅という立地も反響が最も見えやすい場所だったので。もちろん、ここもやってみてもしダメだったら喫煙スペースに囲いのようなふたをしなきゃいけない可能性もでてくるのですが。でもふたをすると色気がなくなる。入った瞬間に興ざめしますよね。だから出来ればそれはやりたくない。

−−具体的にはどのような仕掛けなのでしょうか?

強力な空気の流れを作るエアカーテンと特殊フィルターをかませた天井埋め込み型の空気清浄機、たばこの匂いや色素の付着を妨げる特殊塗料を組み合わせたものです。最初の段階では、電球も特殊なものを使おうとか品目が7 種くらいあったのですが、調整しながら足し算引き算をして収まった結果、この3種になりました。順を追って説明しますと、まず、エアカーテンを風が下から上へ吹き出すように分煙の境目に取り入れることで、分煙の店に多い仕切りによる閉塞感を打開しつつ喫煙した時の煙や匂いを外へ逃さないことに加え強力な上昇気流を作る仕組みができる。そして、吐き出した煙をすぐに吸い上げられるような強力な空気清浄機を天井に取り付けています。そうすることで、匂いや煙が店内にこもらなくなり、タバコを吸う人にも快適な環境を提供できる。さらに、タバコの匂いや色素を分解す特殊な光触媒塗料を店内の壁や天井など全面に塗っているので、入った瞬間、お店がなんとなくタバコ臭いということも避けられます。すべてオリジナルじゃなくもともとあったものなのですが、組み合わせてこういう形でやればという発想は全国でも初ですね。

−−かなりの検証が必要だったのでは?

専門家と相当話し合いましたね。一番の課題は、煙がどうというよりタバコの匂いでした。どこまで漏れないか、そしてこもらないか。吸気と排気のバランスを調整することが重要なんですけど、実際、シャッターが開いた時の気圧や一時間に何本くらい吸うかというのによってかなり変わりますし。稼動音が気になるとか、エアカーテンも、どれくらいの人が出入りするかによって風量を変えなければならない可能性もある。横がキッチンなので吸排気の問題もでてきました。そういう諸々の可能性を考慮し、装置は調節機能が付いたものを導入しています。綿密な計算はしたものの、オープンしてしばらく様子を見ないことには判断尽きかねるという状況でしたね。

−−ちなみに、喫煙スペースの面積はどの程度でしょうか?

店舗全体が100平米弱ありますが、そのうち約20平米くらいですね。

−−そこに掛けた設備投資費用は?

だいたい、総工費600万弱くらい。オープンしてみないことには掴めない部分があったので、実際使わないけれどなにかあった時のためにと取り付けた予備装置の費用を差し引いたとしても、400万円程度は掛かっていますね。

−−オープンして約2ヶ月となりましたが、お客様の反応も含め、現段階で見えた成果と問題点を教えてください。

実は駅中での数少ない喫煙場所ということで喫煙のお客様であふれると検証ができないのではと、口頭以外の告知をしていませんでした。そのせいか、分煙していることをお客様がご存じなく(駅中だから当然禁煙だろうと思ってらっしゃる方がほとんどです)。今後は近隣にお勤めの方から徐々に告知をしていこうと思っています。分煙の検証ですが、今のところは何の問題もなく組み合わせたパーツが機能しています。調節機能のおかげか、心配していたニオイが禁煙スペースに漏れることもありません。日々の営業の中で驚いたのは、喫煙席は男性のお客様が多いだろうと思っていたのですが、喫煙スペースはいつも女性のお客様が占領されていることです。喫煙できるスペースがあると知ってほっとされる女性のお客様も多いです。そんなお客様の都会の癒しの場になればと思います。

【企業データ】
会社名;株式会社アクアプランネット
本社所在地;三重県松阪市駅部田町1192-5
設立年月日;平成6年6月
資本金;3000万円
従業員数;300名(パート含む)
飲食事業店舗数; 8店舗

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