誰も知らない街に、自分らしい風を吹かせたい
「モリモリ商店」での経験を重ね、40歳を手前にした頃、齊藤氏は独立に向けて動き出した。物件探しで譲れなかった条件は、路面店であること。地元の町田や、これまで働いてきた街で探す選択肢もあったが、あえて“縁もゆかりもない土地”を選んだ。「僕のことを誰も知らない街で出店して、新しい出会いも大切にしながら勝負したいなって。そっちのほうがワクワクすると思ったんですよ」。
そうして目をつけたのが、田園都市線沿線。渋谷や二子玉川などのターミナル駅を除けば、楽コーポレーション出身者の出店が少ないエリアだった。しかし、思い描くような物件にはなかなか出会えず、探し続ける日々が続いた。そんな矢先に、コロナ禍が直撃。物件探しは一時中断を余儀なくされた。「40歳までに独立すると決めていたんですが、それを断念せざるを得なくなって。コロナ禍が明けるまでの5年は、正直、憂鬱な時間でしたね」。
コロナが落ち着き、物件探しを再開。ようやく出会えたのが、たまプラーザ駅から徒歩3分、12.6坪の路面店だった。もともとコンビニだった物件を分割して生まれたスケルトンの飲食区画で、きれいな長方形の間取りに惹かれた。前職の2店舗目、淵野辺の「きやり屋」と広さは同じながら、家賃は倍。躊躇する気持ちはあったが、ちょうどその頃「きやり屋」は物件都合で移転が決まり、職場の体制も大きく変更。退職するならキリのいいタイミングだった。齊藤氏は「神様が“今ここで決めろ”って言っている」と、決意を固めたという。
駅前のメイン商店街から少し外れた場所で、人通りが多いわけではないが、口コミでじわじわと広がっていく余白がある立地。「お洒落で洗練された雰囲気のある街に、大人がふらっと立ち寄れる粋な居酒屋があったら面白いと思ったんです。この街に少し違う風を吹き込めたらと、ここに決めました」。

12.6坪30席。オープンカウンターを中心に、奥には収納スペースを確保するために作り出した小上がりのテーブル席も。和柄の椅子や木を基調とした内装で、落ち着きのある和モダンな大人の空間。カウンター前には煮込み鍋や火鉢がおかれ、目の前で調理が進むライブ感も魅力のひとつ。店名「笑“竹”杯」にちなみ、メニュー立てや網代、席の仕切りなど、随所に“竹”の意匠があしらわれている
店舗データ
| 店名 | 酒肴日和 笑竹杯(しょうちくばい) |
|---|---|
| 住所 | 神奈川県横浜市青葉区美しが丘2-14-7 たまプラーザT&Tビル |
| アクセス | 東急田園都市線たまプラーザ駅から徒歩3分 |
| 電話 | 045-905-3469 |
| 営業時間 | 月~金:17:00~24:00、土日祝:16:00~24:00 |
| 定休日 | 無休 |
| 坪数客数 | 12.6坪30席 |
| 客単価 | 6000円 |
| オープン日 | 2024年8月8日 |
| 関連リンク | 酒肴日和 笑竹杯(Instagram) |

















