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神保町に「あつ盛」がオープン。コミュニケーションが生まれる工夫が満載、店主の人間力が際立つ、デイリー使いの最強立ち飲みに注目!

6月22日、神保町に「あつ盛」がオープンした。「毎日でも立ち寄れる店」を目指し、つまみ・ドリンクのほとんどが400円以下、単価1800円のリーズナブルな立ち飲みだ。原価率150%の刺盛をはじめとした安価ながら魅力的なメニューに、お客自身が管理する大胆な会計システムなど、たくさんの工夫が6.5坪の空間に詰め込まれている。店主の中村篤典氏は美容師から飲食に転身し、「心」「馬場六区」など居酒屋を展開するRHグループで経験を積んだ後、コロナを機に独立。何より中村氏の人間力が際立つ同店は、早くも地域の人気店として定着しつつある。

大通りが交差する専大交差点の角地の視認性抜群の立地
元タピオカドリンク店の店内を自ら改装し、低投資で作り上げた空間。コロナ対策でカウンターに提げたビニルシートには、お客が油性マジックで書き込んだメッセージがぎっしり
10ほどのネタを贅沢に盛り付けた「あつ盛」。大根のツマでかさ上げをする代わりに、大葉の後ろになめろうを盛って立体感を出している。写真は2人前500円で原価率150%、採算度外視の集客メニューだ。「同じく高原価の日本酒と一緒に注文されると店がつぶれてしまいます(笑)」と中村氏
東京スカイツリーをイメージし、コンビーフやゆで卵、ビスケットを盛り付けた「ポテトSALAD」は、東京スカイツリーの模型も一緒に提供する芸の細かさで笑いを誘う
骨付き鶏もも肉を春巻きの皮に包んで二度揚げする「鶏の唐揚げ」(400円)。春巻きの皮で旨みを閉じ込め、冷めてもパリパリの食感が生きるという。この品にも、お客を楽しませる工夫が隠れており、写真の「はたらかざるもの喰うべからず」のまな板の意味は、ぜひ店で確かめてほしい
「あっちゃん」の愛称で親しまれる、店主の中村篤典氏。店名の「あつ盛」は、中村氏の下の名前「篤典(あつのり)」と、自粛期間中に流行したゲームの名前を掛けた

美容師から飲食へ。「心」「馬場六区」など居酒屋を展開するRHグループで8年半

神保町駅から徒歩2分ほど、専大交差点の角地で営業する「あつ盛」。都会の止まり木的存在として夜な夜な多くの人が集まる立ち飲みだ。平日はもとより、人通りが減って静かな土日でも外のテラス席まで賑わいがあふれていることも少なくない。同店をひとりで切り盛りするのが、「あっちゃん」ことオーナーの中村篤典氏だ。

中村氏は地元・長野県の高校を卒業後に上京し、美容師専門学校を卒業。都内の美容室で2年ほど勤めたが退職。「美容師は給料が低く、かつ洋服代などお金がかかる。しばらくフリーターとしてお金を貯め、いずれまた美容師に戻ろうと思っていました」と中村氏は話す。さまざまな仕事を経て、中村氏が門戸を叩いたのが、楽コーポレーションの系譜を引くRHグループが運営する三鷹の居酒屋「心」だ。そこで飲食の楽しさに目覚めたという。「昔から人を喜ばせることが好きで美容師になったんです。飲食は、お客様のリアクションがすぐに返ってきたりと、美容師とは違った楽しさがありました」。

飲食の仕事にやりがいを見出しながらも、アルバイトとして勤務し2年が経った頃、そろそろ美容師に戻ろうと勤務先に退職を申し出た。そこで「これから新店舗を出すので残ってほしい」と言われ、悩んだ末に飲食を選びRHグループの社員に。神保町の「どまん中」、高田馬場の「馬場六区」や「めっけもん」など、同社で様々な店舗に携わり、合計で8年半ほど経験を積んだ。

コロナの影響で会社を退職。義理両親の物件で開業を決める

その間、中村氏は結婚して子供も生まれた。家族との時間を作るため、勤務時間が昼間中心のイベントでキッチンカーのレンタル事業を展開する企業に転職。そこで3年が過ぎた今年の春、新型コロナの影響が世間に表れ始め、その会社の仕事はほとんどなくなってしまったという。「もともと会社勤めは向いていないと思っていて、飲食に戻ろうと思っていました。家族に相談し、これを機に退職。でも、次に何をするかは決まっていませんでした」。

次をどうしようか悩む中、ひょんなことから舞い込んできたのがこの物件だ。同物件は中村氏の義理両親の所有ビルで、前テナントのタピオカドリンク店が撤退することになったが、コロナ禍で次がなかなか決まらず困っていたという。そこで中村氏に白羽の矢が立った。以前から独立志望はあったが、資金面などで二の足を踏んでいた中村氏。しかし、これを好機と捉え、コロナ禍ではあるが背水の陣で開業を決意した。

立地は大通りの交差点の角地で視認性は抜群。ただし広さはわずか6.5坪。「この狭さなら立ち飲みしかない」と、立ち飲みに。資金が潤沢ではなかったので、可能な限りDIYで改装。手作業でタイルを貼り、黒板やカウンターを自作した。目指したのは「毎日でも来られる気軽な酒場」。単価は1800円、店主とお客、そしてお客同士のコミュニケーションが生まれる場を思い描いた。

「会話が生まれる」「笑顔になれる」工夫を忍ばせる品を多数用意

フードは100円から400円の100円刻みの価格設定で、レギュラーメニューが30品に、日替わり黒板メニューが20品程度。一人で立ち寄っても色々な品が楽しめるようにと、すべて1人前ポーションにしている。

目玉は、刺身の盛り合わせ「あつ盛」で、1人前300円、2人前500円(税込、以下同)だが、贅沢に8~10のネタを盛り付けて原価率はなんと150%。提供時には「これで300円なのでお腹壊しても文句ナシね!」と冗談を言いながら差し出す。同店ではこれ以外にも、「お客を笑顔にする」「会話の糸口になる」工夫を忍ばせた品を多数用意している。刺盛に次ぐ名物の「ポテトSALAD」(400円)は、東京スカイツリーをイメージした盛り付け。商品と一緒に東京スカイツリーの模型も添えて提供し、笑いを誘う。「悪魔のニラ」(200円)、「パリピ味噌」(300円)といった興味を引く商品のネーミングも「これは何?」という会話を引き出す工夫だ。「忙しいとどうしてもピリピリしがち。それでも、注文を聞くときや商品を出すときはお客様に笑顔になってもらえる工夫を入れたかったんです」と中村氏。

ドリンクもフード同様にリーズナブルな価格設定を意識しているが、「安いものを安く」ではなく「それなりのものを安く」がモットーだ。瓶ビールは「アサヒ」と「コロナ」、焼酎や日本酒、ハイボール、サワー各種、お茶割各種、ホッピー(白・黒)など400円均一。「自家製レモンサワー」はレモンを丸ごと使った自家製の漬け込み酒を使用し、これも400円。常時1銘柄で入れ替える日本酒も160㏄で400円と破格だ。ホッピー外や、ウイスキー・焼酎の中は250円、レモン、梅干しなどのトッピングは200円で提供する。

料理や接客に集中するため、会計はお客の管理に任せる大胆なシステム

同店で驚くのは独自の会計システムだ。各テーブルに置かれたかごにお客が代金を入れ、自身で計算しておつりを取る。店側は完全にお客に管理を任せており、ややもすれば正確に料金を徴収できていない場合もある。「一人で切り盛りするので、とにかく、お酒や料理を出すこととお客様と会話することに集中したい。それ以外の作業を減らしたいと考えた結果です。飲食の先輩からは『やめた方がいい』とアドバイスをもらったこともありました。実際に運用してみると、このシステムを面白がってくれるお客様も多く、僕が料理で手を離せないときに常連さんが新規の方にシステムを説明してくれてコミュニケーションが生まれるなど、よい結果も生まれています」と中村氏。「僕とお客様のコミュニケーションも大切にしていますが、お客様同士のコミュニケーションも広がってほしい。お客様同士で盛り上がって、自分はオマケ。それがラクだし、お客様も楽しいと思う。僕一人ではいつか飽きられてしまいますから」と笑う。

コロナ禍でも集客は順調。常連も数多く獲得し、坪月商30万円で推移

コロナ禍でのオープンにもかかわらず中村氏の想像以上の来店があり、現在の月商は180万~210万円。多数の常連にも恵まれ、売上はじわじわと増加中。坪月商にして30万円ほどだが、今後は坪月商40万円までに伸ばしていきたい考えだ。「義父さん、義母さんの物件を守るという意味でも、ここをずっと一人で切り盛りしていきたい。その一方で、将来は自分のようなお金がなくて独立できない人の支援もできたら。当店の規模では人を雇うのは難しいですが、『あつ盛』で培ったノウハウで店を作って店主に運営を任せ、苦しまない程度のロイヤリティをもらうような仕組みを作れれば、と考えています」と中村氏は話す。

(取材=大関 まなみ)

店舗データ

店名 あつ盛(あつもり)
住所 東京都千代田区神田神保町3-2-1 サンライトビル 1F
アクセス 神保町駅から徒歩2~4分(出口により)
電話 070-3111-1128
営業時間 【月~土】16:00~26:00頃【日】16:00~22:00
定休日 不定休
坪数客数 6.5坪18人程度
客単価 1800円
オープン日 2020年6月22日
関連リンク あつ盛(Instagram)
関連リンク あつ盛(FB)
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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