中国で貿易会社を設立し、飲食事業にも展開を広げる
田中氏は大学卒業後、単身中国へ渡り、現地で貿易会社を起業した。そこから数年後、現地で仕入れた知識を活かし、独学で中華料理を習得。日本に帰国後、赤坂で中華料理店を開業した。以来20年ほど、中国との行き来を繰り返しながら貿易業と飲食業を営んでいた。
鳩肉との出会いも、中国だ。「食べてみると濃厚な味わいが衝撃的だったんです。ひと口で虜になりましたね」と、田中氏。さらに調べてみれば、豊富な栄養価を持つ食材で、健康志向が高まっている今の世の中にもマッチすると考えたという。自身が受けた感動を多くの人に広めるべく、日本で鳩肉専門店の構想を練り始める。「鳩肉は、生後30日以内の個体でないと肉が硬くなって食用に向かなくなります。さらに、屠殺後3日以上経過すると、臭みが強くなるんです」。新鮮な鳩肉を提供するため、自社農園で飼育した鳩肉を、注文が入ったタイミングで屠殺し、店舗に仕入れる形態を考案。ヨーロッパや中東をめぐって繁殖のノウハウを習得し、5年前に千葉県で自社農園pigeon farmを開いた。しかし、直後に鳥インフルエンザの流行により、繁殖の母体となる鳩の仕入れが困難になり断念。いったん農園の方を農作物の生産で稼働しつつも、自身で仕入れルートの確保に奔走。今年の6月1日に「鳩肉屋」の開業に至った。
2種類のコース料理を用意し、鳩肉好きと鳩肉初心者、両者をターゲットに据えたメニュー構成
店舗は完全予約制で、料理の品書きは「鶏肉(生後30日~40日)と古代オリエンタル料理コース」のフルコース(8000円)とショートコース(6000円)のみ。フルコースのメインは鳩をまるまる1羽使い、半分は田中氏が中国で口にして感激した素焼きを再現。もう半分は、フレンチのテイストも加えた別料理にしてメインに。そのほか、前菜とスープ、ごはんもの、デザートが付く。「鳩肉が好きというお客様もいらっしゃいますが、多くはフレンチで食べたことがあるという方。そういったお客様になじみやすいようフレンチテイストを主軸に、また鳩肉文化のある東洋や中東のオリエンタルなテイストを交えて、すでに鳩肉を知っている方にも満足してもらえる内容にしています」と田中氏。それに対してショートコースは前菜とスープ、鳩肉の素焼きで構成。鳩肉を初めて口にするお客をターゲットにして、メインの素焼きまで時間をかけずにたどり着けるよう考えられている。
また、ドリンクはフランスやギリシャ、トルコ、アルメニアなど、ヨーロッパから中東にかけてのワインを幅広く用意。赤と白(5000円~)、スパークリング(5000円~)やオレンジワイン(7000円)を取りそろえ。その他、ビール(700円)や山崎(ロック・ストレート・ハイボール各1000円)、グレンフィディック12年(ロック・ストレート・ハイボール800円)、焼酎(芋・麦600円)なども品書きに並ぶ。
循環農業で、鳩の飼育や野菜の生産を推進。さらに自社の貿易事業とも紐づけた展開を目論む
現在、自社農園pigeon farmは鳩の飼育のみならず、鳩の糞を肥料にし、野菜やキノコ類も生産する循環農園として機能している。「もともと、環境に配慮して長期的な農作物の生産や鳩の飼育をする農園というコンセプトで始めました」と、田中氏は語る。今後については、鳩肉の普及を進めていくとともに、自社農園の生産物を貿易とも紐づけ、ECサイトで商品を販売していく総合商社的な展開を考えていると言う。
店舗データ
店名 | 鳩肉屋 |
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住所 | 東京都港区赤坂4-3-11高嶋ビルB1F |
アクセス | 赤坂駅から徒歩5分、赤坂見附駅から徒歩5分 |
電話 | 03-5545-5118(来店日の3日前まで要予約) |
営業時間 | 18:00~23:00(完全予約制) |
定休日 | 日曜日、祝日、第1・3月曜日 |
坪数客数 | 15坪 16席 |
客単価 | 8000~9000円 |
運営会社 | 株式会社太郎 |
オープン日 | 2020年6月1日 |
関連リンク | 鳩肉屋(HP) |