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神楽坂で「縁楽」がオープン。「Viande」「cerisier」など人気ワインバルをドミナント展開する気鋭のオーナーが、初の和食業態に挑む

12月13日、神楽坂で「縁楽」がオープンした。瞬間燻製の「八寸」と、美桜鶏の水炊きが看板の崩し割烹だ。オーナーは、神楽坂ですでに「縁楽」以外にも4店舗を経営しているひゃくはち(東京都新宿区)の代表・吉田正也氏。これまで「Viande(ヴィアンド)」や「cerisier(スリジエ)」など、ワインを主力商品として店舗展開をしてきた吉田氏だが、同店を切り盛りする料理人、高橋護氏を主役に和食業態に初挑戦した。

飲食店が集積する新築ビル最上階まで階段で昇る。シンプルな木造りのドアが目印だ
料理人が直接料理を提供することのバリューと、省オペレーションが実現できるという理由から、同社は必ずどの店舗もカウンターを設置している。また、店内階段を昇れば吹き抜けの2階席もあり
「本日の八寸」は、木箱に詰めて提供。ふたを開けた瞬間、スモークが広がる演出がお客の心を掴む
水炊き専門店での勤務が長かった高橋氏は、得意料理の「美桜鶏の水炊き」を看板にしようと考えた。締めには雑炊もついている
写真右から吉田氏、高橋氏。基本的に吉田氏は店舗を任せつつも、これまでの店舗運営で培ったノウハウを提案する

(取材=高橋 健太)


神楽坂の人気スペインバルや渡仏を経て、独立を視野にアイディーに入社

吉田氏は、調理師学校を卒業後、フレンチレストランを経て、銀座「エルセルド」や神楽坂「エルプルポ」などの人気スペインバルを展開する阿部光峰氏のもとで4年半、料理の腕を磨き、店舗の立ち上げなどにも関わった。さらにその後はフランスへ渡り、「Itinéraires(イティネレール)」で修業を積む。「その店のシェフは当時30歳過ぎで若かったのですが、日本で見てきたどのシェフとも違うスタイルを持っていました」。店はしっかり繁盛させるが、週休2日で、夏はバカンスに行って家族との時間をしっかりととる。独立して店を持つまでがゴールではなく、その先の展開こそ重要なのだと吉田氏は感じた。

「帰ってきて、独立するにはどうすればいいか考えたのですが、現場ばかりだったので経営のやり方がわからなかったんですよ」と、吉田氏。そこで、都内を中心に立ち飲み「ギョバー」を展開し、独立支援を経営理念にも掲げているアイディー(東京都中央区、代表取締役:梅田恭敬氏)に入社する。「売り上げや損益分岐の計算、そこに潜む数字の意味など、経営に関することを数多く学ぶことができました。今の私の経営スタイルに大きく影響を与えてくれた会社です」。2年間勤務したのち退社。吉田氏はいよいよ独立に向けて準備を進めていくことになる。

2012年に神楽坂で独立し、業績は順調に推移。スタッフの成長に合わせて店舗展開

吉田氏は、2012年に「Viande」をオープンした。神楽坂という立地を選んだのは、平日・土日問わず人通りが多いことが理由だ。「オフィス街のど真ん中よりも、オフィスと住宅が混在している街の方が、集客が安定しリスクは少ないと思いました。もちろん、街自体を好きだったというのもあるんですけどね」と、語る。店はオープン直後から行き詰まることなく順調に繁盛していった。その要因について吉田氏は、「とにかく事前準備を大切にしました。オープンしてから調整するのではなく、オープン時から100%の状態でお客様を迎えることが大事。開店準備中は、平面図を見て、幾度もオペレーションの動きをシミュレーションしました」と振り返る。

その後、2015年に「cerisier」、2017年には「Les Picolos」、2018年に「Createur」と、着実に、早いペースで店舗展開を広げている吉田氏だが、意外にも店舗を増やすことには興味がなかったという。「僕の場合は、自店舗のスタッフが店長を任せるほど育ってきたとき、その人の役職が必要になるから、その都度店舗を作るようにしていました」と、吉田氏。自身もアイディーに勤めていた頃は、店を任され、成功体験も失敗も、自分の糧にすることができていた。その頃の経験が、現在の経営スタイルを作っているという。

信頼できる飲食仲間を支援するために作った、社内初の和食業態

今回オープンした「縁楽」は、今までとは少し開店の経緯が違う。店主の高橋護氏は、和食の修行を積み、神楽坂のワインバルでシェフをしていた時、吉田氏と出会う。高橋氏の誠実な人柄と料理の確かな腕惚れ込んだ吉田氏は、自店舗を持ちたいが経営のノウハウがないという高橋氏の姿を以前の自分に重ね、ゆくゆく独立することを約束に、開業を決意した。吉田氏は、「今回、弊社でも初の試みで、自社スタッフではない人のために店を作りましたが、それはあくまで彼が人間として信頼できる人だったからです。誰でも同じことをするわけではありません」と、語る。

食事は、和食の定番料理である八寸を木箱に詰めた「本日の八寸」(800円)から始まる。木箱にはスモークを仕込んで、ふたを開けた際に煙とともに料理がお目見えする演出付きだ。内容は「漬け鮪あん肝風味」や「フグ皮ポン酢」など、季節の食材に高橋氏のアイディアが詰めこまれた渾身の皿が所狭しと並ぶ。看板料理の「美桜鶏の水炊き」(1人前1980円、2人前~)は、ノンストレスで育てられた美桜鶏を、新鮮な野菜とともに7時間煮込んでとった出汁で作る水炊きだ。さらに、冬場にはあんこう鍋(1人前2800円、2人前~)など、季節の鍋物も登場する。そのほか、「金目鯛の煮付け」(1400円)や、「平井商店さんの新鮮なお野菜をサラダで」(980円)、「米沢豚ロースを厳選したお塩でシンプルに」(1900円)など、肉や魚、野菜の一品も揃えている。

ドリンクは、「サントリー角」(550円)や「白州」(800円)といったウイスキー。ビールは「アサヒスーパードライ中瓶」(700円)と「キリンクラシックラガー中瓶」(700円)の2種類を用意。焼酎は「伊佐美(芋)」(750円)をはじめ、米と麦を揃えている。また、ワインはその日の仕入れによって変え、グラス800円~、日本酒も季節ものでグラス480円~。ときには「射美~吟撰 槽場無濾過生原酒~」(グラス850円)のような、珍しい酒が出ることも。幅広いお客の酒の好みに応えている。

スタッフありきの店舗展開。そのための環境整備に尽力

今後も、吉田氏は店舗展開については今まで通り、既存スタッフが店を任せられるようになったら作るというスタイルを考えている。「自分の開いたお店はもちろん大事ではあるのですが、あまり店自体には執着していないんですよ。店を作るのはあくまでスタッフなので、彼らが幸せに仕事を続けていけるような環境を整えていくことに、力を注ぎたいですね」と、語る。

店舗データ

店名 縁楽(えんらく)
住所 東京都新宿区神楽坂2-21-5 小栗横丁ビル 3F

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アクセス JR総武線飯田橋駅から徒歩6分、都営地下鉄大江戸線飯田橋駅から徒歩3分 、東京メトロ有楽町線・南北線・東西線飯田橋駅から徒歩3分
電話 03-6280-7131
営業時間 17:30~翌2:00
定休日 火曜日
坪数客数 10坪 26席
客単価 6000円
運営会社 ひゃくはち株式会社
オープン日 2019年12月13日
関連リンク 縁楽(Instagram)
関連リンク ひゃくはち株式会社(HP)
関連ページ Viande(記事)
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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