有名店「はしづめ」の業績を立て直し、ミシュランの星獲得に貢献
初見氏は調理専門学校卒業後、日本の四川料理の草分け的存在「赤坂四川飯店」を運営する民権企業(東京都千代田区)に入社。赤坂店をはじめとする複数店舗で勤務。店舗の立ち上げにも携わり、20年間勤め上げた。
その後、もつ焼き店で独立開業しようと考え、元々お客として通っていた「もつ焼き ひなた」に半年間勤務。その中で、老舗製麺会社の橋爪製麺(東京都品川区、代表:橋爪利幸氏)運営の中華料理店「広尾はしづめ」から、業績を立て直してほしいという依頼が初見氏に舞い込んだ。「それまで『赤坂四川飯店』、『もつ焼き ひなた』とすでに営業方針のしっかりとした土台がある店で働いていたため、独立して自分で方針を作っていくことに不安があったんです。お店の盛り立て方を学ぶチャンスだと考え、入社を決めました」と初見氏。同店が抱える課題を洗い出し、その解消に奔走。依頼通り売り上げアップに貢献した。青山店、原宿店と新店舗の立ち上げにも尽力し、各店で店長を務めた。同時に「はしづめ」のオーナーの夢である「ミシュランの星獲得」を叶えるべく、接客、料理など多方面で研究を重ね、2018年にミシュランで一つ星を獲得。満を辞して独立を決めた。
本格料理×居酒屋の新業態にチャレンジ
タイミングよく、元同僚が運営するもつ焼き店が撤退するのに伴い空き物件を紹介され、ここで開業しようと決めた。売り上げは好調だったと聞き、当初は同じくもつ焼き店の開業を検討していたという。しかし業態を構想する中で「せっかく独立するのだから、手堅く開業するより新たなことにチャレンジしてみたい」(初見氏)という思いが高まっていった。
「中華イコール大皿料理のイメージがあるので、もっとポーションを落として、ひとりでも3、4皿食べられる新しいかたちの中華料理店をやってみたいと考えました」と初見氏。得意分野の中華料理と初見氏自身が好きだという居酒屋を掛け合わせた業態を考案。一皿を1.5人前ほどのショートポーションをお酒とともに楽しめる、客単価2500円のリーズナブルな価格帯に設定。1人客でも気軽に利用できる店に仕上げた。
居抜きを活かして投資を節約。設備が揃わずとも「料理は工夫次第でどこでもできる」の精神で
店内は16坪で座りが24席。居酒屋らしく立ち飲み席も8席設けた。居抜きで引き渡された内装をほぼそのまま活かし、イスやテーブルは変更。厨房には中華レンジがなく、ガスコンロも3口のみだがあえて手を加えていないという。「中華をやるには少々頼りない設備ですが、長年勤めた『赤坂四川飯店』で私が師事した陳建一さんの”料理は工夫次第でどこでもできる”の教えが活きています。『はしづめ』時代、中華レンジなしの厨房でミシュランの星獲得に至った経験もありますし」と初見氏は自信をのぞかせる。
リピーターを意識し、品数は60種類以上で飽きさせないラインナップ
フードメニューは60種類以上揃え、ほとんどのメニューを300~400円に設定。「セロリの四川ピクルス」(100円)、「ナメコの発酵唐辛子漬け」(100円)など手軽につまめる料理から、「王道のエビチリ」(450円)、「トマトと卵のなめらか炒め」(300円)などの一品料理まで多彩なラインナップが並ぶ。イチオシメニューの「四川火鍋もつ煮」(380円)は、もつ焼き店で勤めた経験を活かして仕入れる新鮮なモツが自慢だ。「煮卵入り」はプラス100円、「煮豆腐入り」はプラス200円。両方が入った「全部入り」は破格の480円で提供する。「広尾はしづめ」で磨きをかけた麺料理「香港屋台風焼きそば」(420円)、「極細麺の鶏そば」(350円)、「四川政宗担々麺」(350円)の〆メニューにも注目だ。
初見氏は「地元の人に繰り返し来てもらえるような店が目標。毎日来ても飽きないよう品数を多く揃えています。今後はオペレーションを改善し、定番メニューを減らす代わりに日替わりメニューを充実させ、よりリピートしたくなるラインナップにしていきたい」と話す。
お酒は居酒屋ドリンクを中心に選ぶのに迷うほどの品数を揃える
ドリンクメニューは「アンズ」、「紹興酒(紹興大越貴酒5年)」(各480円)などの中国酒を揃え、「ホッピーセット(白・黒)」(400円)や「レモンサワー」(480円)、「バイスサワー」(380円)など、居酒屋の定番ドリンクも豊富に用意する。日本酒、焼酎、ワインも置き、ボトル以外のドリンクの多くが380円~630円の価格帯だ。店名にちなんで、ゆず酒とウイスキー、炭酸水で作る「ゆずハイボール」(500円)、ゆず酒とミント、炭酸水で作る「ゆずモヒート」(530円)も用意する。「中華料理となると紹興酒とビールがメインとなり、ドリンクの選択肢が少なくなりがちです。どれを飲むか迷えるくらいのラインナップを考えました」と初見氏。
開業1ヶ月ほどだが満席となることも多く、早くも地元住民の心をつかみ始めている。1ヶ月に4,5回来店するお客もいるという。同氏は「週に何度か立ち寄って、ほろ酔いで帰ってもらいたいです。独立以前は比較的高単価の店中心に働いてきましたが、この店は肩肘張らず、地域の人が楽しく賑わう場所にできれば」と語る。店名の由来でもある「桃栗三年柿八年ゆずの大馬鹿18年」と同じく、ゆっくりとこの地に根を張り、店を育てる考えだ。
店舗データ
店名 | チャイニーズバル ゆずのたね |
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住所 | 東京都中野区中央3-34-1 プラム鍋横 1F |
アクセス | 新中野駅から徒歩2分 |
電話 | 050-1142-5020 |
営業時間 | 17:00〜25:00 |
定休日 | 月曜日(祝祭日の場合は翌火曜日) |
坪数客数 | 16坪 24席、スタンディング8人 |
客単価 | 2500円 |
オープン日 | 2019年6月18日 |
関連リンク | チャイニーズバル ゆずのたね(HP) |