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米ポートランドのスタイルを踏襲し、オーガニックの精神を余すところなく発信する、持続可能型レストラン「サスティナブルキッチンROSY」が神田に開業

築60年の古民家をリノベーションした店舗
階段下を活用してワインセラーが造られている
生、焼き、蒸すなど、それぞれの野菜の特長を生かした「サスティナブル野菜のディップサラダ」
潮風と大地で育った五つ星ビーフの「九十九里オーシャンスタービーフ タリアータ」
「ROSY」を運営するオーガニッククルー代表の森 敏氏

(取材=別役 ちひろ)


日本橋や大手町にも近く、ビジネスパーソンが行き交う神田。中央通りから裏へ入り込んだ場所に9月27日、レストラン「サスティナブルキッチンROSY」がオープンした。運営はオーガニッククルー(東京都品川区、代表取締役:森敏氏)。オーガニック先進都市・米ポートランドに倣い、持続可能(=サスティナブル)な世の中を目指して、オーガニックを“楽しく・おいしく・興味が持てる”形で体感できる。

「実践できるオーガニック」を発信

幼少期から食や食材に興味があり、「5歳の頃からレストランを開くことが夢だった」と話す森氏。調理人となった後、フランスやオーストラリアなどオーガニック先進国を旅する中で、日本にも自然栽培や有機栽培にこだわって、素晴らしい野菜を生産する農家があるにも関わらず、オーガニック普及率が驚くほど低いことを目の当たりにしたという。「2000年に日本でも『有機JAS法』というオーガニックに関する法律ができましたが、その後の農水省の調べでもあまり普及していない現実を見て、自分なりの方法で発信しようと考えました」(森氏)。2008年に、それまで勤めていたオーガニック食材のレストランなどを展開する薬糧開発を退職し、オーガニッククルーを起業した。オーガニックをブランド化するのではなく、それぞれが取り入れやすく、実践できる形にハードルを下げて啓蒙し、無理なく普段の生活に取り入れる人=(仲間、クルー)を増やすこと。そして需要と供給のバランスを取り、良いものを作る人とそれを欲っする人を繋げる役目となることを目標にしている。「日本のビジネス環境は、多くの人がストレスを感じながらも我慢し、効率だけを重視した工業的にすぐに食べられるものをかき込むように食べている。それは自ら命を縮める生き方を選択していること。そうではなく、自分にも、地球環境にも配慮した自然と共生する食を無理なく、ごく当たり前に生活に取り入れられるように、世の中の循環を整えたい」(森氏)。

ポートランドの人々の生き方・考え方を反映

森氏が一番影響を受けたと話すのが、アメリカ・オレゴン州にあるポートランド。環境保全や地産地消など、地域社会へ考慮した生産・購入・消費が自然と存在する「エシカルシティ」であり、また「ガストロポリス」とも呼ばれる食の都だ。「この街のシェフや生産者の多くの人の考え方にインスパイヤされた」と森氏は話す。そして、このポートランドの考え方、社会の在り方、人の考え方を反映する形で、「未来を、ともに育てる」というキーワードを掲げ「ROSY」が誕生した。農薬・化学肥料不使用にこだわった契約農家の有機食材を使用したオーガニック料理を筆頭に、グルテンフリー、ベジタリアン、ビーガンにも対応するメニュー構成。「レストランとは一つのコミュニティ」との考えから、どんな立場、考え方、食の指向の人でもテーブルを共に囲み、楽しい時間が過ごせるように配慮されている。おすすめは、皿の上に乗るものがすべて契約農家の野菜でできた「サスティナブル野菜のディップサラダ」(1,200円)をはじめ、「北海道産大豆とビーツのフムス」(480円)、「九十九里オーシャンスタービーフ タリアータ」(2800円)、「関塚農場 平飼い卵のプリン」(480円)など。ドリンクは、自社輸入しているオレゴン産のピノノワールワイン「ROADS END」(ボトル9000円)や「SEVEN DEVILS」(ボトル7000円、グラス1000円)を筆頭に、オレゴンやイタリア、フランスのワインで、栽培・生産・流通の過程で環境に配慮したものが並ぶ。

空間や提供方法にもエシカルな要素を

店は神田駅のほど近く。どちらかといえば、仕事帰りに安く簡単に飲める居酒屋の需要がありそうなロケーションだ。そんな場所でなぜ出店したのか。「目指す世界観からすれば、広尾などグローバル感のあるエリアが適していると思うが、賃料も高く、すでにナチュラル系料理を出す店も多い。そのため、あえてビジネスマンの往来が多い神田を選んだ。また世界感をきちんと作りたかったので、1階で間口が広い物件を探した結果、昭和20年代に布団屋だったというここが見つかった。築60年の建物をポートランドのDIY精神に則り、私たちも参加して壁の漆喰塗りなどを行った」(森氏)。道路に面する開口部はアコーディオン型のガラス扉になっていて、気候の良い季節には扉を開き、さらに開放感を演出するという。また、スタッフが着用するエプロンは「フードテキスタイル」を採用。食品メーカー各社が製造過程で排出する食材残渣を染料として再活用し、染めた生地で作られている。調理器具には、有害物質を出さないフライパン「グリーンパン」を使用し、子供用の食器やカトラリーは、アメリカでオーガニック認証を受けたバンブー製だ。当然のことながらプラスチック容器やストローはない。

10%でも生活にオーガニックを取り入れられる仕組みづくり

頭では理解しているものの、今の生活スタイルや金銭面からなかなか習慣化することにハードルを感じるオーガニック。森氏は「まずは少しでも、オーガニックを取り入れた生活を送って欲しい」と話す。「自分以外にしっかりと配慮できるか、ということがオーガニックの考え方。お客様の中で、ここでステンレスのストローを使われて初めてサスティナブルに気づかれた方もいらっしゃいました。こういった話題がお客様と交わせることに意味があると思います」とも。“未来を、ともに育てる”というキーワードを自ら実践し、オーガニックを広めることで、気づきを得た人それぞれが自分の生き方を省みる。そして、サスティナブルな生活を少しでも実践することで、地球や生き物、ひいては未来への負担が軽減されることは明らかだ。このような強いメッセージ、店を多角化し、どんどん発信していくのか、と思えば、そこにもしっかりと「未来」を見据えた回答が。「一緒に同じオーガニックの方向に進んでくれるお客様、スタッフ、生産者を育てていくことがまず第一。店としては、オーガニックをきちんと理解し、実践できるスタッフがいて、いつも守られたクオリティを提供できるサイクルができたら次の店舗を考えます。だから今はまだ種まき。種を蒔かないと花は咲きませんからね」(森氏)。単にこの店で美味しい料理を食べる、それだけでも構わない。ただ、この空間と料理のどこかに「気づき」がある。その気づきをさらに意識できるようになれば、もう少し世界は住みよいものになるかもしれない。まさにそれが「ROSY」のメッセージだ。

店舗データ

店名 Sustainable Kitchen ROSY(サスティナブルキッチン ロージー)
住所 東京都千代田区神田北乗物町11

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アクセス JR神田駅 徒歩3分
電話 03-6262-9038
営業時間 ランチ11:30〜15:00、ディナー17:00〜23:00
定休日 日曜・祝日
坪数客数 20坪 28席
客単価 ランチ1200円、ディナー4000〜4500円
運営会社 株式会社オーガニッククルー
オープン日 2018年9月27日
関連リンク Sustainable Kitchen Rosy
関連リンク オーガニッククルー
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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